換価の猶予

 差押えに係る国税が納付されない場合には、差押財産を換価して、その換価代金を充当するのが原則である。しかし、滞納者に一定の事由がある場合には、滞納者の財産の換価を猶予する場合がある。
 納税の猶予が国税の履行の猶予であるのに対して、換価の猶予は財産の換価処分の猶予である点に、その特色がある。
 換価の猶予は、納税者の申請を要件とする納税の猶予とは異なり、税務署長の職権により行われる。ただし、実務上は、税務署長の職権の発動を促す意味での猶予の申立てを認める取扱いがされている。
 税務署長は、換価の猶予をし、またはその猶予期間を延長したときは、その旨を滞納者に通知しなければならない。
 会社更生法に基づく更生計画において、換価の猶予に関する定めをすることができる。

スポンサーリンク

 滞納者が、次に掲げるすべての事由に該当するときは、その納付すべき国税について換価の猶予をすることができる。
 滞納者が、その財産を直ちに換価することにより、その事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあるときか、またはその財産の換価を猶予することが、直ちに換価をすることに比して、滞納国税および近い将来において納付すべき国税の徴収に有利であるときかのいずれかに該当すると認められること。
 滞納者が納税につき誠実な意思を有すると認められること。
 納税の猶予を受けている場合でないこと。
 担保の徴取は納税の猶予の場合と同様である。
 換価の猶予の期間は、原則的には1年以内であるが、その猶予期間内に猶予金額を納付できないやむをえない理由があると認めるときは、猶予期間を延長でき、また、この延長の最長期間は、当初の猶予期間とあわせて2年を超えることができない。なお、猶予に係る金額を適宜分割し、その分割した金額ごとに猶予期間を定めることができる。
 換価の猶予をした場合には、その猶予期間内であっても、その猶予をした国税について交付要求、参加差押えができるほか、新たな差押えもできるが、差押財産の換価処分をすることはできない。また、換価の猶予をする場合において、必要があると認めるときは、税務署長は、差押えにより滞納者の事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがある財産について、その差押えを猶予し、または既にされている差押えを解除することができる。
 このほかの猶予の効果は、納税の猶予の場合と同様である。
 換価の猶予の取消し(または猶予期間の短縮)については、納税の猶予の場合と同様である。ただし、納税の猶予の場合とは異なり、滞納者の弁明は聞く必要がない。
 民事執行法にあっては、差押えは強制換価のための前段階的な役割のみを有していることから、徴収法に規定するような換価の猶予制度にはなじみにくい。しかし、債権者が弁済の猶予をした場合にまで換価をする必要はない。そこで、債権者が弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書を提出したときは、強制執行を停止することにしている。

お金を借りる!

督促の意義/ 滞納者の財産の調査/ 差押えの意義/ 差押禁止財産/ 差押財産の選択/ 徴収法の財産の区分/ 差押え手続き/ 滞納処分による差押えがされている動産に対する強制執行/ 強制執行続行の決定/ 滞納処分による差押えがされている動産に対する仮差押え/ 滞納処分続行承認の決定/ 債権の差押え/ 各種の債権の差押え/ 強制執行による二重差押え/ 徴収職員の地位/ 滞納処分による差押えがされている債権に対する仮差押/ 強制執行による差押えがされている債権に対する滞納処分/ 第三債務者の地位/ 滞納処分による差押えがされている不動産に対する強制執行/ 強制執行による差押えされている不動産に対する滞納処分/ 船舶と航空機の差押え/ 強制執行による差押えがされている船舶と航空機に対する滞納処分/ 自動車・建設機械の差押え/ 強制執行による差押えがされている自動車と建設機械に対する滞納処分/ 財産の差押えの効力の発生時期/ 各種の財産に特有な差押えの効力ないし効果/ 差押えの解除/ 交付要求/ 参加差押え/ 差押え財産の換価/ 公売の手続き/ 売却決定と買受代金の納付/ 財産の権利移転手続き/ 売却決定の取消し/ 配当手続き/ 国税優先の原則/ 国税と質権の被担保債権/ 国税と抵当権の被担保債権/ 国税と留置権の被担保債権/ 差押の配当/ 第二次納税義務/ 納付義務の承継/ 譲渡担保財産からの徴収/ 担保権付財産が譲渡された場合の国税の徴収/ 繰上げ請求/ 保全担保/ 納税の猶予/ 課税が遅延した場合の納税の猶予/ 換価の猶予/ 滞納処分の停止/