担保権付財産が譲渡された場合の国税の徴収

 質権または抵当権の設定の登記、または登録がある財産が譲渡された場合において、一定の要件に該当するときは、その担保権につき配当される金額のうちから、譲渡人懲ある納税者の国税を徴収することができる。この担保権付財産が譲渡された場合の国税の徴収は、納税者の財産でないもの、つまり、担保権者に帰属する強制換価手続の配当金から納税者の国税を徴収できるという形になる。その意味で、一種の納税義務者が拡張した場合であるといえる。

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 次に掲げるすべての要件に該当するときは、譲渡された財産の強制換価手続において、その質権または抵当権の被担保債権につき配当を受けるべき金額のなかから譲渡人である納税者の国税を徴収することができる。
 納税者が他に国税にあてるべき十分な財産がない場合において、その者がその国税の法定納期限等後に登記した質権または抵当権を設定した財産を譲渡したこと。
 納税者の財産につき滞納処分を執行してもなおその国税に不足すると認められること。
 譲渡された財産の強制換価手続において、その被担保債権につき配当を受けるべき金額のうちから徴収することができる納税者の国税の範囲は、次の(1)金額から(2)の金額を控除した額を超えることができない。
 (1) 譲渡された財産の換価代金から質権者または抵当権者がその披担保債権について配当を受けるべき金額。
 (2) 譲渡された財産を納税者の財産とみなし、その財産の換価代金について譲渡人である納税者の国税の交付要求があったものとした場合に、質権者または抵当権者が被担保債権について配当を受けるべき金額。
 税務署長は、質権者または抵当権者が配当を受けるべき金額のうちから譲渡人の国税を徴収しようとするときは、質権者または抵当権者に対して、所定の事項を記載した書面により通知しなければならない。
 税務署長は、譲渡された担保権付財産につき強制換価手続が行われた場合には、交付要求書に質権者または抵当権者の氏名および住所ならびに徴収法第22条第5項の規定により交付要求をする旨を記載して、執行機関に交付要求をする。
 なお、この交付要求は、担保権者に対する配当金額のうちから交付を求めるものであるところから、現実の配当が終了するまですることができると解される。
 担保権付財産が譲渡された場合の担保権からの徴収にあたって、担保権者がその担保権を実行できる場合であるのにその実行をしないときは、税務署長は、民事執行法その他質権または抵当権の実行に関する法令の規定により、担保権者に代位してその質権または抵当権を実行することができる。この場合における代位実行の手続は、担保権者が自ら実行する場合と同様である。
 仮登記、または仮登録のある財産を滞納処分により差し押えた場合において、その後に仮登記に基づく本登記がされたときは、その本登記の順位は仮登記の順位によるから、差押え前にその本登記がされたと同様の結果になるのが原則である。
 すなわち、たとえば、その本登記が所有権移転の登記であれば、差押えは、滞納者でない者の財産についてされたと同様の結果になるから、その差押えは解除しなければならなくなる。
 ところが、担保的機能を営んでいる仮登記については、質権、抵当権等の担保制度と同様の取扱いを受けることが望ましいとの観点から、仮登記担保契約に関する法律が制定され、昭和54年4月1日から施行されている。この制定に伴い徴収法第23条をはじめとする徴収法の改正が行われ、滞納処分手続においては、抵当権に準じた取扱いがされることになったほか、担保のための仮登記がある財産に対する差押えの効力について手当てがされている。
 担保のための仮登記がされた財産を差し押えた場合において、その差押えが仮登記の権利者から納税者に清算金を支払う前にされたものであるときは、その仮登記の権判者は当該仮登記に基づいて本登記をすることはできない。遂に、その差押えが清算金の支払がされた後にされたものであるときは、その差押えをもって仮登記の権利者に対抗することができない。
 これは、いわゆる法定換価手続優先主義を採用し、滞納処分による差押えと担保のための仮登記の実行との先着手の判定基準を、強制執行と担保のための仮登記の実行との先着手の判定基準と同様に律しようとするものである。
 税務署長は、担保のための仮登記がされた財産を差し押えたときは、その旨を仮登記の権利者に通知しなければならない。
 なお、この通知に係る差押えについて、不服申立または訴えの提起があったときは、その不服申立または訴訟の係属する間は、その財産の換価をすることができない。

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