国税と留置権の被担保債権

 留置権は、質権や抵当権のように、目的物を強制的に換価して、その換価代金から優先的に弁済を受けるという意味での法律的な優先弁済権はないが、その留置的効力に基づいて強い担保力を有しているし、また、留置権の成立は、一般的に物の価値の保存ないし増加に要した費用について認められている場合が多いこと、国税が留置権の披担保債権に劣後するとしてもその確保上大きな障害とはならないことに基づくものである。
 留置権が納税者の産財上にある場合において、その財産を滞納処分により換価したときは、その留置権の被担保債権は、国税に優先する。
 なお、この留置権の被担保債権は、その成立の時期が国税の法定納期限等以前であるかどうかを問わないし、また、差押え後に成立したものであっても原則として優先する。
 ここで注意すべきことは、留置権の被担保債権は、質権、抵当権、先取特権の場合と異なり、滞納処分によって換価したときに限って国税に優先するものであって、他の強制換価手続の場合においては、この規定が適用されないということである。
 滞納処分により換価した財産上に、留置権のほか、質権、抵当権、先取特権または担保のための仮登記があるときは、留置権の披担保債権は、その質権、抵当権、先取特権または担保のための仮登記の被担保債権に先立って配当される。
 留置権の被担保債権が国税に優先するためには、留置権のある事実を証する書面またはその事実を証するに足りる事項を記載した書面を提出してしなければならない。
 この場合の証明の時期は、国税の法定納期限等以前に設定された質権の優先の場合の証明の時期と同様である。

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 納税者の財産上に、国税の法定納期限等以前に設定された担保のための仮登記があるときは、国税は、その財産の換価代金について、担保のための仮登記により担保される債権に次いで徴収される。
 国税の法定納期限等後に設定された担保のための仮登記は、徴収法第8条の規定により、当然に国税に劣後することになる。
 担保のための仮登記は、必ず登記(または登録)によって公示されているので、優先劣後の基準となるその設定の日等の証明は要求されない。
 担保のための仮登記がされた納税者の財産上に、その仮登記に劣後するが国税に優先する先取特権、質権、抵当権または担保の与めの仮登記がある場合において、その先取特権等の権利者がその財産に係る清算金に対し物上代位権の行使をしたときは、その先取特権等の被担保債権は、その清算金につき納税者の国税に優先する。この場合の国税と物上代位権の行使との競合は、清算金債権について国税の滞納処分による差押えと後順位担保権者の物上代位権の行使による差押えという形で生ずることになる。
 なお、上記の先取特権等が設定された日等については、その証明は要しない。
 納税者が担保のための仮登記の設定されている財産を譲り受けたときは、その担保のための仮登記は、譲受人である納税者の国税に優先する。
 納税者が他に国税にあてるべき十分な財産がない場合において、その者が国税に劣後する担保のための仮登記がある財産を譲渡したときは、納税者の財産につき滞納処分を執行してもなおその国税に不足すると認められるときに限り、その担保のための仮登記権判者がその財産の強制換価手続において配当を受けるべき金額のうちから、その国税を徴収することができる。
 この場合において、担保のための仮登記権利者から徴収することができる国税の額は、その財産の換価代金からその被担保債権が配当を受けるべき金額から、その譲渡がなく、かつ、その優先する国税の交付要求があったと仮定した場合に、その被担保債権が配当を受けるべき金額を控除した金額を限度とする。
 なお、上記の徴収手続については、徴収法第22条の場合と同様である。ただし、担保のための仮登記権判者は競売申立権を有しないので、税務署長が代位実行をする制度はない。

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