国税優先の原則

 国税は、納税者の総財産について、原則として、すべての公課その他の債権に優先して徴収することができる。これが国税優先の原則といわれているものである。国税にこのような優先権が承認されるのは、国税徴収の確保の必要性におることはもちろん、私債権に対する国税の特殊性、すなわち国税の共益費用性、無選択性、無対恰度等を考慮した結果に基づくものである。
 この国税優先の原則の例外として、強制換価手続の費用の優先、担保権付債権等の優先の規定が徴収法、地方税法にあるほか、特別法による国税優先の例外がある。
 なお、この国税優先の原則は、納税者の財産が強制換価手続により換価された場合で、その換価した代金を配当するにあたって国税と他の債権とが競合したときにはじめて問題となるものである。

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 納税者の財産について強制換価手続が行われた場合において、国税の交付要求をしたときは、その強制換価手続に係る費用は、その交付要求をした国税に優先する。
  民事執行法においては、強制執行の費用で必要なもの(執行費用)は、当初は民事執行の申立人が執行裁判所に予納しなければならないが、最終的には債務者の負担となり、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行にあっては、執行費用は、強制執行の目的財産の換価代金のなかから、予納をした者に償還されることとされている。
 納税者の財産を国税の滞納処分により換価したときは、その滞納処分に係る滞納処分費、滞納処分による財産の差押え、交付要求、差押財産の保管、運搬、換価および修理、差し押えた有価証券、債権および無体財産権等の取立てならびに配当に関する費用は、他の国税、地方税その他の債権に優先して徴収する。
 強制換価手続により消費税の課される物品が換価された場合において、その換価代金から消費税を徴収するときは、上記の費用を除く他の国税、地方税その他の債権に優先して徴収する。
 これは、消費税の課される物品が強制換価された場合には、新たな課税原因が発生し、このことに伴って生ずる消費税は、換価代金のなかに含まれていると考えられるところから、その換価代金からその消費税を優先して徴収しようとする趣旨のものである。
 なお、消費税のうち、この優先徴収の規定が適用されるものは、酒税、砂糖消費税、揮発油税、地方道路税、石油ガス税、石油税、物品税およびトランプ類税である。地方税法における木材引取税または軽油引取税の課税対象物件を換価した場合においても、同様の定めがある。
 国税相互間、国税と地方税および地方税相互間では、その優先権に優劣がなく同順位による徴収を建前としているが、次のような調整が図られている。
 納税者の財産について国税の滞納処分による差押えをした場合において、他の国税または地方税の交付要求があったときは、その差押えに係る国税は、その換価代金につき、その交付要求に係る他の国税または地方税に優先して徴収する。
 また、納税者の財産について国税または地方税の滞納処分による差押えがあった場合において、国税の交付要求をしたときは、その交付要求に係る国税は、その換価代金につき、その差押えに係る国税または地方税に劣後して徴収する。
 なお、この差押先着手による国税の優先については、次のような特例がある。
 すなわち、譲渡担保権者に対する物的納税責任の追及により譲渡担保財産から徴収する譲渡担保権設定者の国税または地方税については、差押先着手による国税の優先の規定にかかわらず、譲渡担保権者の国税または地方税に常に優先する規定が設けられており、また、滞納処分による差押え後に、滞調法の規定による強制執行等の続行決定があった場合には、その差押えをしていた国税は、交付要求をすることになるが、差押売着手による優先徴収の規定が適用される。
 納税者の財産について強制換価手続が行われた場合において、国税および地方税の交付要求があったときは、その換価代金につき、先にされた交付要求に係る国税は、後にされた交付要求に係る国税に優先して徴収する。また、後にされた交付要求に係る国税は、その換価代金につき、先にされた交付要求に係る国税または地方税に劣後して徴収する。
 なお、この交付要求先着手による国税の優先については、次のような特例がある。
 すなわち、譲渡担保権者に対する物的納税責任の追及により譲渡担保財産から徴収する譲渡担保権設定者の国税または地方税についての交付要求は、交付要求先着手による国税の優先の規定にかかわらず、譲渡担保権者の国税または地方税による交付要求よりも優先する規定が設けられている。この場合において、譲渡担保権設定者の国税または地方税について2以上の交付要求があったときは、その交付要求の先後により優先順位が定まることになる。
 国税について徴した担保財産があるときは、差押先着手または交付要求先着手による国税の優先の規定にかかわらず、その国税は、換価代金につき他の国税および地方税に優先して徴収する。

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