差押え財産の換価

 差押財産は、それが金銭であるときを除き、換価して、その代金をもって国税にあてる。この差押財産を強制的に金銭に換える手続を総称して「換価」という。この広義の換価は、差し押えた債権の取立てと、差押財産の売却とに大別でき、後者を狭義での「換価」という。
 徴収関係法令において「換価」と規定している場合に、それが広狭のいずれを指しているかは、それぞれの規定の趣旨から判断することになるが、ここにおいては、狭義の換価を対象にする。

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 売却の方法による換価には、広く不特定多数の買受希望者を募り、買受価額の自由競争により売却する方法である公売(入札の方法による公売と競り売りの方法による公売とがある)、任意に定めた売却条件で特定の者に売去する随意契約による売却、国による買入れとがある。
 そして、入札の方法による公売は、一般の入札の方法と複数落札入札制の方法とに分類される。
 差押財産は、原則として、公売に付さなければならないが、次に掲げるいずれかの事由に該当するときは、公売に代えて随意契約により売却することができる。
 法律上買受人となりうる者が1人である場合、財産の最高価額が定められている場合、公売に付することが公益上適当でないと認められる場合、取引所の相場のある財産を、その日の相場で売却する場合、買受価額の競争をさせようとしてもそれを望む者がいない場合。
 随意契約による売却の手続としては、原則として随意契約による売却をする旨の通知をし、見積価額の公告を必要とするときは、その公告をし、売却をする日において、買受人となるべき者を決定し、一定の財産について、その決定等の通知・公告をする。その後、売却決定、代金納付、権利移転手続が行われることは、公売の場合と同様である。
 差押財産(第三債務者から取り立てた金銭以外の財産で差し押えたものを含む)は、次に掲げるものを除いて、これを売却し金銭に換えなければならない。
 金銭、債権、有価証券のうち、その証券に係る金銭債権の取立てをするもの、無体財産権等のうち取立てをするもの。
 差押財産については、財産の性質により一定の期間換価が制限される場合、納税の猶予制度、第三者の権利の尊重等の趣旨に照らし一定の期間換価が制限される場合、国税の補充性により換価の順序が制限される場合がある。
 果実(植物の果実、野菜類等)は成熟した後、蚕は繭となった後でなければ換価することができない。また、生産工程中における仕掛品、栽培品その他これらに類するもので、完成品になり、または一定の生産過程に達するのでなければ、その価額が著しく低くて通常の取引に適しないものは、通常の取引に適する状態になった後でなければ換価することができない。
 納税の猶予その他の制度の趣旨から定められている換価制限の主要なものとしては、納税の猶予の場合、換価の猶予の場合、滞納処分の停止の場合、保全差押えの場合、不服申立てがされている場合、がある。
 換価の順序についての制限としては、第二次納税義務者の財産を換価する場合、保証人の財産を換価する場合、譲渡担保権者の物的納税責任により譲渡担保財産を換価する場合、差押換えの請求に伴う換価の申立てがあった場合がある。
 滞納者は、換価の目的となった自己の財産を、直接であると間接であるとを問わず買い受けることができない。ただし、譲渡担保権者の物的納税責任により譲渡担保財産を換価する場合、その滞納処分手続上の滞納者である譲渡担保権者は、その譲渡担保財産の買受人となることができる。
 また、税務に関する事務に従事する職員払直接・間接を問わず買受人となることができない。
 次に掲げる換価処分の執行の妨害等をした者については、その事実があった後2年間は公売への参加を制限することができる。そして、公売への参加制限をするために必要があると認めるときは、入礼者等の身分に関する証明を求めることができる、公売への参加制限の対象となる事実のあった者については、その者のした入札等がなかったものとする、またその者に対する最高値申込者の決定を取り消すことができることとされている。この場合において、これらの者の納付した公売保証金があるときは、その公売保証金は国庫に帰属させることとなる。
 公売への参加を妨害した者、不正に連合した者、偽りの名義で買受申込みをした者、買受代金を故意に納付しなかった者、故意に公売財産を損傷した者、公売の実施を妨害した者、公売への参加制限の対象となる事実のあった後2年を経過しない者、公売への参加制限の対象となる行為者の使用者、公売への参加制限の対象となる行為者を代理人とする者。
 差押財産の換価に際して、税務署長が必要と認めるときは、滞納者の同意を得てその財産が高価に売却できるよう修理その他その財産の価額を増加させる処分をすることができる。この修理等の処分の費用は、滞納処分費として滞納者から徴収する。
 民事執行法における換価も徴収法における換価も差押財産を強制的に金銭に換える措置であるところから、その手続は類似性を有している。しかし、民事執行法にあっては、差押財産の修理等に開する規定がないほか、換価が制限される場合も租税と私債権の性格から独自の規定も設けられている。
 民事執行法では、不動産等の売却の方法について、入札、競り売りおよびその他の方法の3種類が認められ、入札には、さらに期日入札と期間入札とがある。民事執行法は、いわゆる競売ブローカーを排除し、一般市民が近づきやすいものとして適正な換価を実現しようとの観点から期間入札の制度を新たに採用した。
 期間入札は、一定期間を設け、その期間内はいつでも郵便等によっても入札ができ、期間満了後1週間以内に開札期日を設けて開札を行う方法である。この制度は、公売制度の近代化の観点からは、実施状況が注目される。
 民事執行法は、動産の売却について、入札、競り売りおよび適宜の方法による売却を規定している。そして、適宜の方法による売却は、いわゆる随意(任意)売却で、執行官が実施する場合と執行官以外の者に売却を実施させる場合とがある。
 後者は、家畜や生鮮食品等をその専門の業者に委託販売する場合であり、徴収法にはない制度である。
 民事執行法にもっても徴収法の場合と同様に、未分離果実の売却制限、債務者による買受けの申出の禁止、公売参加者の制限に関する規定が設けられている。

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