交付要求

 交付要求は、滞納者の財産について強制換価手続が開始されている場合に、その手続に参加して配当を受け、それにより国税を徴収する制度である。
 一般には、交付要求と参加差押えとをあわせて広義の交付要求といわれており、広義の滞納処分の一種である。しかし、それ自身強制的に租税債権を実現させるものではなく、他の強制換価手続に参加する手続にすぎない点で、狭義の滞納処分(差押え、換価および配当)と区別される。
 なお、特殊な場合の交付要求として、担保権付財産が譲渡された場合の国税を徴収するためにする交付要求、保全差押え(または繰上げ保全差押え)の場合にする交付要求、譲渡担保財産から国税を徴収する場合のみなし交付要求、強制換価の場合の消費税を徴収するためのみなし交付要求、金銭債権につき二重差押えがされた場合のみなし交付要求がある。

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 次の要件に該当するときは、交付要求をすることができる。
 滞納者の財産につき強制換価手続が行われた場合であること。強制換価手続とは、滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続および破産手続をいい、民事執行法第195条の規定による競売は含まれない。
 滞納となっている国税があること。
 交付要求は、強制換価手続の執行機関比対して、交付要求書を交付するごとによって行う。
 交付要求をした場合には、滞納者に対し、その旨を書面で通知しなければならない。また、交付要求に係る財産上の知れている質権者等に対して、その旨、その他必要な事項を書面で通知しなければならないが、その強制換価手続が企業担保権の実行手続または破産手続であるときは、この通知を要しない。
 滞納処分の場合、その換価の方法に応じて、財産の売却の方法による換価のときは売却決定の日の前日まで、金銭の取立ての方法による換価のときは、その取立の時までにしなければならない。
 強制執行の場合、財産の種類等に応じて、次のとおり分かれる。
 動産は次に掲げる区分に応じ、それぞれに掲げる時まで
 差押物の売却による売得金は執行官がその売得金の交付を受ける特。
 執行停止中の売却により供託された売得金はその執行停止に係る動産執行が続行されることとなる時。
 手形等の支払金は執行官がその支払を受ける時。
 不動産は強制競売の場合には、執行裁判所が定めた配当要求の終期まで、強制管理の場合には、執行裁判所が定める期間ごとに配当等が実施されるので、当該期間の満了まで。
 船舶、航空機、自動車または建設機械は不動産と同様。
 債権は次に掲げる時まで。
 第三債務者が民事執行法第156条第1項または第2項の規定による供託をした時。
 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時。
 民事執行法第161条に規定する売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時。
 動産引渡請求権の差押えの場合にあっては、執行官がその動産の引渡しを受けた時。
 その他の財産権はその他の財産権の権利の種類、内容および換価方法の別に応じ、債権の場合に準ずる。
 担保権の実行としての競売の場合は上記の強制執行の場合に準ずる。
 企業担保権の実行手続の場合、その換価の方法に応じて、一括競売のときは競売期日の終了時まで、任意売却による換価のときは裁判所が定めて公告した日まで。
 破産宣告があった場合、破産手続について終了の決定がある時まで。
 交付要求の本来の効力としては、他の強制換価手続から配当を受けうることである。
 派生的な効果として、交付要求には、国税の消滅時効中断の効力があるほか、交付要求先着手による優先権がある。
 税務署長は、滞納者が、他に換価が容易で、他の第三者の権利の目的となっていない財産を有しており、その財産により滞納国税の全額が徴収できる場合には、交付要求をしないものとされている。
 交付要求の制限に対応する措置として、次の要件に該当するときは、債権者は税務署長に対し、交付要求の解除を請求することができる。
 請求人が強制換価手続により配当を受けることができる債権者であること。
 その請求人が、国税の交付要求があったため、自己の債権の全部または一部の弁済を受けることができないこと。
 滞納者が、他に換価が容易で、他の第三者の権利の目的となっていない財産を有していること。
 その財産により滞納者の国税の全額を徴収できること。
 交付要求の解除の請求は、所定の事項を記載した書面でしなければならない。この請求ができる期限は、交付要求ができる終期までと解されている。
 交付要求の解除の請求があった場合には、税務署長は、その請求を相当と認めるときは、その交付要求を解除しなければならず、反対に、その請求を相当と認めないときは、その旨を請求人に通知しなければならない。
 交付要求は、納付、充当、更正の取消しその他の理由により交付要求に係る国税が消滅したときは、解除しなければならない。
 交付要求の解除は、その旨を相手方執行機関に通知することにより行う。
 また、交付要求の解除をした場合には、滞納者および質権者等に対しても通知する。
 動産の差押えを受けた債務者に対しその差押えの場所についてさらに動産執行の申立てがあった場合には、執行官は、追加差押えをし、先行事件と後行事件を併合することとしている。この動産執行事件が併合された後、先行の差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、またはその申立てに係る手続が停止され、もしくは取り消されたときにおいても、その申立ての取下げ等に係る先の動産執行事件に対して既にされている交付要求については、その効力に影響はなく、あらためて径行の動産執行事件に対して交付要求をする必要はない。
 なお、担保権の実行としての競売の場合も上記と同様である。
 民事執行法は、強制競売の開始決定がされた不動産(船舶、航空機、自動車または建設機械についても同様)について、さらに強制競売の申立てがあったときは、後行の申立てについて重ねて開始決定をし、先行の事件が取り下げられたとき、または取り消されたときは、後行の強制競売の開始決定に基づいて手続を続行することとされている。この場合において、先行の強制競売手続に対して既にされている交付要求については、その効力に影響がなく、あらためて後行の強制競売手続に対して交付要求をする必要はない。
 なお、担保権の実行としての競売の場合も上記と同様である。
 配当期日が定められたときは、裁判所書記官は、各債権者に対し、債権の元本、配当期日までの利息等を記載した計算書を1週間以内に執行裁判所に提出するよう催告することになっている。この計算書については、仮にその提出をしなくて仏執行裁判所は、執行記録等により、職権で各債権者の配当額を計算すべきであると解されている。
 民事執行法にあっては、「先取特権又は質権を有する者は、その権利を証する文書を提出して、(強制執行手続に対して)配当要求をすることができる」と規定している。そして、この文書は、形式的にその権利を証する文書であることが認められる文書でよいと解されている。
 これに対し、徴収法にあっては、質権者は、公正証書等の厳格な書面により、その設定の事実を証明しなければならない。
 そこで、設定の事実の証明に関する要件が異なる質権について、国税の交付要求と質権者の配当要求とが競合した場合には、国税との関係においては徴収法が質権の設定事実の証明に関する特別規定であるところから、質権者は、徴収法第15条第2項各号に掲げる書類によって、その設定の事実を証明しなければならない。
 不動産に対する強制競売(担保権の実行としての競売を含む)の開始決定がされ、配当要求の終期が定められたときは、裁判所書記官は、開始決定がされた旨および配当要求の終期を公告するとともに、税務署に対し、滞納国税の存否および類を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告することになっている。税務署長としては、この配当要求の終期までに交付要求をすることになる。
 執行裁判所は、特に必要があると認めるときは、配当要求の終期を延期することができ、また、配当要求の終期から3か月以内に売却許可決定がされないときは、原則として、配当要求の終期は、その終期から3か月を経過した目に変更されたものとみなされる。しかし、この場合には、税務署に対する催告はされないので、当初の配当要求の終期後に発生した国税については、裁判所書記官に強制競売事件の進行状況等を問い合わせたうえ、執行裁判所に交付要求をする必要がある。
 不動産について強制管理の開始決定がされた場合には、裁判所書記官は、税務署に対しその旨の通知をすることになっている。この通知を受けた場合における交付要求に関しては、次の事項に留意する。
 強制管理に対する交付要求は、強制管理人ではなく執行裁判所に対して行う。
 強制管理については、強制競売と異なり配当要求の終期はないから、強制管理手続が継続している限り、交付要求をすることができる。ただし、執行裁判所が定める期間ごとに配当等が実施されるから、当該期間の満了までに交付要求をしていなければ、既に収取されている収益の配当を受けることはできない。
 同一不動産に対し強制競売手続と強制管理手続の双方が行われている場合には、この双方の手続に対して交付要求をすることができる。
 強制管理手続が開始されている場合において、その手続に交付要求をするか、賃料債権の差押えをするかにの差押えは、強制管理手続に優先する。不動産自体を差し押えるかは、滞納国税の額や利害関係人の状況等諸般の事情を考慮して決めることになろう。

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