強制執行による二重差押え

 債権について、滞納処分と強制執行とは二重に、すなわち競合して差し押えることができる。ところで、債権は、通常、可分であり、一つの債権の一部を差し押えることも可能であるため、どのようなときに滞調法の適用を受ける二重差押えになるのか、という問題がある。端的にいえば、滞納処分による差押金額と強制執行による差押金額の合計額が、当該差押えの対象となった債権額を超える場合であるといえよう。

スポンサーリンク

 具体的には、次のとおりである。
 1.債権(10万円)の一部(4万円)について滞納処分による差押えをした後に、その残余の部分(10万円−4万円=6万円)を超えて強制執行による差押命令(たとえば7万円)が見せられた債権、2.債権(10万円)の全部について滞納処分による差押えがされた後に、その一部(たとえば6万円)または全部(10万円)について強制執行による差押命令が見せられた債権、である。
 上記1.および2.の「差押え」または「差押命令」には、単一の差押えまたは差押命令だけではなく、複数にわたる場合も合まれる。差押えの競合は、三つ目以降の差押えで生ずる場合もある。
 強制執行による差押えをした場合において、執行裁判所が先行する滞納処分を知ったときは、徴収職員が事情届があった旨の通知を執行裁判所にしているときを除き、裁判所書記官は、差押命令が見せられた旨を徴収職員に通知しなければならない。
 差押競合債権については、その一部についてのみ強制執行による差押命令が発せられているときでも、その差押えの効力は、差押債権の全額に及ぶ。
 したがって、滞納処分による差押えに基づいて取立てをし、国税等に配当した後の残余金は、それが強制執行による差押金額を超えているかどうかを問わず、その全額を執行裁判所に交付することになる。
 滞納処分による差押え後に強制執行による二重差押えをした債権者は、滞納処分により差し押えられている部分については、その取立てをすることができない。もっと払滞納処分による差押えが一部であるときは、その差押えに係る部分以外の部分に係る債権については、このような制限はない。
 なお、上記の取立てが制限されている部分について、第三債務者が差押債権者に履行しても、第三債務者はその履行をもって国に対抗することはできず、徴収職員による二重の取立てに応じなければならない。
 滞納処分により差し押えられた金銭債権について、強制執行により二重差押えがされたときは、第三債務者は、滞納処分により差し押えられた部分について徴収職員に弁済し、その残余の部分について差押債権者に弁済してもよいし、差し押えられた債権の全額について供託することもできる。すなわち、供託するかどうかは、第三債務者の権利であり、徴収職員および差押債権者への弁済との選択ができる。
 なお、上記の供託については、次の点に留意する。
 第三債務者が供託することができるのは、差押競合の金銭債権に限られる。滞納処分による差押えをした後に強制執行による差押えがされた場合において、強制執行続行の決定があったときは、第三債務者は、差押えに係る金銭債権の全額について供託しなければならない。このため、強制執行続行の決定があった場合には、裁判所書記官は、その旨を第三債務者に通知することになっている。
 第三債務者が供託する場合には、差押えに係る金銭債権の全額を供託しなければならない。ただし、滞納処分により差し押えられた債権の一部が相殺等により消滅しているときは、その消滅した部分の金額を控除した金額を供託すればよい。
 第三債務者が供託した場合には、供託をするための旅費・日当および宿泊料その他の供託のために要した費用ならびに事情届のために要した費用を請求することはできない。
 第三債務者は、供託をしたときは、その事情を先行の滞納処分をした徴収職員に届け出なければならない。この事情届の便宜に費するため、第三債務者に債権差押通知書を送付するときは、第三債務者は差押えに係る金銭債権につき供託ができる旨を記載した「お知らせ」と「事情届」の用紙を同封する実務取扱いがされている。
 なお、事情届には、供託書正本を添付しなければならないこと、強制執行による差押え前に滞納処分による差押えが2以上されているときは、事情届は、先に送達された債権差押通知書を発した徴収職員に対してしなければならないことに留意する。

お金を借りる!

督促の意義/ 滞納者の財産の調査/ 差押えの意義/ 差押禁止財産/ 差押財産の選択/ 徴収法の財産の区分/ 差押え手続き/ 滞納処分による差押えがされている動産に対する強制執行/ 強制執行続行の決定/ 滞納処分による差押えがされている動産に対する仮差押え/ 滞納処分続行承認の決定/ 債権の差押え/ 各種の債権の差押え/ 強制執行による二重差押え/ 徴収職員の地位/ 滞納処分による差押えがされている債権に対する仮差押/ 強制執行による差押えがされている債権に対する滞納処分/ 第三債務者の地位/ 滞納処分による差押えがされている不動産に対する強制執行/ 強制執行による差押えされている不動産に対する滞納処分/ 船舶と航空機の差押え/ 強制執行による差押えがされている船舶と航空機に対する滞納処分/ 自動車・建設機械の差押え/ 強制執行による差押えがされている自動車と建設機械に対する滞納処分/ 財産の差押えの効力の発生時期/ 各種の財産に特有な差押えの効力ないし効果/ 差押えの解除/ 交付要求/ 参加差押え/ 差押え財産の換価/ 公売の手続き/ 売却決定と買受代金の納付/ 財産の権利移転手続き/ 売却決定の取消し/ 配当手続き/ 国税優先の原則/ 国税と質権の被担保債権/ 国税と抵当権の被担保債権/ 国税と留置権の被担保債権/ 差押の配当/ 第二次納税義務/ 納付義務の承継/ 譲渡担保財産からの徴収/ 担保権付財産が譲渡された場合の国税の徴収/ 繰上げ請求/ 保全担保/ 納税の猶予/ 課税が遅延した場合の納税の猶予/ 換価の猶予/ 滞納処分の停止/