徴収法の財産の区分

 徴収法では、財産を区分して、動産または有価証券、債権、不動産、船舶または航空機、自動車または建設機械、無体財産権等のうち第三債務者等がないもの、無体財産権等のうち第三債務者等があるもの、の七つとし、それぞれの差押手続が定められている。
 なお、この財産区分については、民事執行法上の区分と異なる面があるが、それについては、それぞれの箇所で明らかにすることとする。

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 徴収法上の動産は、土地および定着物以外の物のうち、徴収法上の船舶、航空機、自動車および建設機械を除いた有体物である。
 なお、無記名債権は、民法上は動産とみなされるが、徴収法上は有価証券とされている。
 有価証券とは、財産権を表彰する証券であって、その権利の行使または移転が証券をもってされるものをいい、これには、手形、小切手、国債証券、地方債証券、社債券、株券、出資証券、信託の無記名受益証券、抵当証券、倉庫証券、貨物引換証、船荷証券、商品券等がある。
 なお、借用証書または受取証券のような証拠証券にの場合には、その証拠証券の基因となっている債権の差押えを行い、その証拠証券自体は取り上げることができる、郵便切手または収入印紙のように証券自体が特定の金銭的価値を有し金銭の代用となる金券にの金券は、有価証券ではない。
 民事執行法における動産執行の対象となるものは、次のとおりである。
 民法上の動産、および無記名債権。
 登記することができない土地の定着物、たとえば、大規模な基礎工事によっ て土地に固着させられた機械、ガソリンスタンドの給油設備等。
 土地から分離する前の天然果実で1か月以内に収穫することが確実であるもの。
 裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券。
 徴収法上と民事執行法上の財産の範囲を理解しておくことの必要性は、民事執行法上の財産区分に応じて交付要求の終期が異なること、および、滞調法における調整対象になるかどうかは、民事執行法上の財産区分によることとされていること、であることによる。
 徴収法上の債権は、金銭または換価に適する財産の給付を目的とする債権である。その性質が債権であっても、賃借権その他取り立てることができないものは、この債権には該当しない。
 なお、将来生ずべき債権であっても、差押え時においてその原因が確立しており、かつ、その発生が確実であると認められるもの、たとえば、株主の有する決議前の利益配当請求権は、債権として差し押えることができる。
 民事執行法において債権執行の対象となる債権は、金銭の支払を目的とする債権、動産の引渡しを目的とする債権、船舶の引渡しを目的とする債権、裏書が禁止されている有価証券に化体されている債権である。
 これらについて、徴収法にいう債権との関係で留意すべき事項は、次のとおりである。
 滞納処分にあっては、第三者が占有する動産についても引渡命令を発したうえ、直接にこれを差し押えることができる。したがって、滞納処分で動産の引渡請求権として差し押えるのは、原則として、それが不特定物の場合に限られることになろう。
 船舶の引渡請求権に対する強制執行は、船舶執行の前駆的手続にすぎず換価手続は予定されていないことに留意を要する。滞納処分にあっては、これは債権としてではなく船舶として差し押えることになる。
 裏書の禁止されている有価証券は、民事執行法上は債権執行となるが、徴収法上は有価証券として動産の差押手続により差し押えることとしている。これに対し、滞納処分上も、民事執行法と同様に解すべきである、との意見もある。
 徴収法上の不動産は、次のものである。
 不動産・・・土地および建物その他の土地の定着物。
 不動産を目的とする物権(所有権を除く)・・・地上権および永小作権。
 不動産とみなされる財産・・・立木法による立木、工場財団、鉱業財団、漁業財団、道路交通事業財団、港湾運送事業財団および観光施設事業財団。
 不動産に関する規定の準用がある財産・・・鉱業権、漁業権、入漁権、採石権およびダム使用権。
 その他の財団・・・鉄道財団、軌道財団および運河財団。
 民事執行法における不動産執行の対象となるものは、次のとおりである。
 不動産・・・土地および建物その他の土地の定着物。
 不動産の共有持分、登記された地上権および永小作権ならびにこれらの権利の共有持分
 不動産とみなされる財産。
 不動産に関する規定の準用がある財産。
 鉄道財団、鉄道財団および運河財団に対する執行は、民事執行渋によらず鉄道抵当法の規定またはその準用規定によって行われるので、不動産執行の対象とはならない。
 徴収法上の船舶は、船舶登記簿に登記することができる船舶をいう。船舶のうち、次に掲げるものは動産にあたる。
 端舟その他ろもしくはかいだけで運転し、または主としてろもしくはかいだけで運転する舟、総トン数20トン未満の船舶、推進器を有しないしゅんせつ船、外国船舶、製造中の船舶。
 民事執行法における船舶執行の対象となるものは、総トン数20トン以上の船舶である。したがって、総トン数20トン以上の船舶であれば、外国船舶であっても船舶執行の対象となる。なお、製造中の船舶は、徴収法上の取扱いと同様であり、動産執行の方式によることとなる。
 徴収法上の航空機は、航空機登録原簿に登録を受けた飛行機または回転翼航空機をいう。民事執行法における航空機は徴収法上の航空機の範囲と同様である。
 徴収法上の自動車は、自動車のうち、軽自動車、小型特殊自動車、二輪の小型自動車および建設機械となりうる大型特殊自動車以外の自動車で、自動車登録ファイルに登録されているものをいう。
 民事執行法における自動車は徴収法上の自動車の範囲と同様である。
 徴収法上の建設機械は、建設機械登記簿に登記されているものをいう。
 民事執行法における建設機械は徴収法の建設機械の範囲と同様である。
 徴収法では、動産・有価証券、債権、不動産および船舶・航空機、自動車・建設機械以外の財産を総称して「無体財産権等」とし、それを「第三債務者等」(第三債務者またはこれに準ずる者)がないものとあるものとに区分して、それぞれの差押手続を規定している。
 無体財産権等のうち第三債務者等がないものとしては、特許権、実用新案権、意匠権、商標権及び著作権がある。
 民事執行法は、動産、不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械および債権以外の財産権を「その他の財産権」と呼称している。
 その他の財産権は、基本的には徴収法にいう無体財産権等に相当するものである。

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