差押禁止財産

 次に掲げる財産は、差し押えることができない。
 滞納者およびその者と生計を一にする親族(配偶者その他の親族)の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳および建具。 ただし、畳および建具については、その建物とともに差し押えることは差し支えない。
 滞納者およびその者と生計を一にする親族の生活に必要な3か月間の食料及び燃料。
 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜およびその飼料ならびに次の収穫まで農業を続行するために欠くことのできない種子その他これに類する農作物。
 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕または養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさおよび椎魚その他これに類する水産物。
 技術者、職人、労務者その他主として自己の知的または肉体的な労働により職業または営業に従事する者のその業務に欠くことのできない商品以外の器具その他の物。
 実印その他の印で職業または生活に欠くことができないもの。
 仏像、位牌その他礼拝または祭祀に直接供するため欠くことができない物。
 滞納者に必要な系譜、日記およびこれに類する書類。
 滞納者またはその親族が受けた勲章その他名誉の章票。
 滞納者またはその者と生計を一にする親族の学習に必要な書籍および器具。
 発明または著作に係るもので、まだ公表していないもの。
 滞納者またはその者と生計を一にする親族に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物。
 建物その他の工作物について、災害の防止または保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械または器具、避難具その他の備品。ただし、その建物その他の工作物とともに差し押えることは差し支えない。

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 次に掲げる財産については、滞納者がその国税の全額を徴収できる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、滞納者の選択により差押えをしないものとされている。
 農業に必要な機械、器具、家畜類、飼料、種子その他の農産物、肥料、農地および採草放牧地。
 漁業に必要な漁網その他の漁具、えさ、稚魚その他の水産物および漁船。
 職業または事業の継続に必要な機械、器具その他の備品および原材料その他たな卸をすべき資産。
 給与については、その性質に応じて、給料等、賞与、退職手当に区分して差押えの禁止を定めているが、これらの規定は、差押えにつき滞納者の承諾があるときは適用されない。
 給料等(給料、賃金、俸給、歳費、退職年金およびこれらの性質を有するもの)については、次の金額の合計額の部分の金額の差押えができない。なお、滞納者が給料等の支給を受けた金銭を所持している場合は、次の金額を差し押えた日から次の給料日までの日数に応じて日割計算を行い、差押禁止額を計算する。
 給料等から差し引かれる所得税、道府県民税、市町村民税、社会保険料に相当する金額。
 滞納者については1か月につき6万5000円、生計を一にする配偶者その他の親族については1人につき1か月3万5000円として計算した金額の合計額。
 給料等から上述の金額を控除した残額の100分の20に相当する金額。これは、いわば収入に相応する地位、体面に応じて差押えの禁止を認めようとするものである。
 賞与およびその性質を有する給与に係る債権については、その支給期間が1か月であるものとみなして給料等の場合と同じ方法で差押禁止額を計算する。
 退職手当およびその性質を有する給与に係る債権については、次の金額の合計額の部分の金額の差押えができない。
 退職手当等から差し引かれる所得税、道府県民税、市町村民税、社会保険料に相当する金額。
 滞納者については19万5000円、生計を一にする配偶者その他の親族については1人につき10万5000円として計算した金額の合計額。
 退職手当等の支給の基礎となった期間が5年を超える場合は、その超える年数1年につき金額の100分の20に相当する金額。
 社会保険制度に基づいて支給されるもののうち、退職年金、老齢年金、普通恩給のようにその性質が給料等に似ているものは、給料等の場合と同様に、また退職一時金、一時恩給等のようにその性質が退職手当等に似ているものは、退職手当等の場合と同様に、それぞれ差し押えることができない金額を計算する。
 差押えの禁止については、徴収法に規定されているもののほか、特別法によって差押えが禁止されているものがある。たとえば、公的な保護、援護等として支給される金品を受ける権利、職務上の災害補償等を受ける権利等がある。
 民事執行法において払徴収法と同様に差押禁止財産の規定をおいているが、その特徴的な事項は、次のとおりである。
 民事執行法は、徴収法第75条(一般の差押禁止財産)を参考にしながら、差押禁止動産を規定している。
 徴収法との主要な相違点は、食料および燃料の差押禁止の範囲は2か月(徴収法は3か月)であること、標準的な世帯の1か月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭の差押えを禁止したことである。
 徴収法は、差押禁止財産の範囲を規定するに際し、滞納者とその者と生計を一にする親族が使用する物も対象にしている。そして、この親族には、「届出をしていないが、事実上婚姻関係にある者」も含むとされている。これに対し、民事執行法にあっては、「同居」の親族という限定が付されているが「縁組の届出をしていないが債務者と事実上養親子と同様の関係にある者」も親族に含めることとしている。
 民事執行法にあっては、債務者および債権者の「生活の状況その他の事情」を考慮して、差押禁止動産の拡張または滅縮を認めている。
 徴収法の場合には、条件付差押禁止財産の制度が、実質的な差押禁止動産の拡張の役割を果たしているとみることもできよう。
 民事執行法にあって払徴収法と同様に、給料等に対する差押禁止の規定をおいているが、差押禁止の範囲が、各支払期ごとに受けるべき給付の、原則的には4分の3の部分であること、債務者および債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの範囲の拡張、差押命令の取消しができること、に特色がみられる。
 なお、民事執行法第152条の規定により計算した差押禁止額が、徴収法の規定により計算した差押禁止額を超えるときは、給料等の差押えが滞納者およびその者と生計を一にする親族の最低生活に支障を及ぼすと認められる場合に限り、民事執行法に規定する差押禁止額の限度において、その差押えを行わない実務取扱いがされている。

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