指名債権に対する担保権

 指名債権を担保の目的とすることは、自行預金担保のほか、売掛金債権、工事請負代金債権、火災保険金請求権、敷金・保証金等の返還請求権あるいは他行預金債権、医師の医療報酬債権など、銀行実務でも相当広く利用されている。
 この担保の取得方法としては、一般に次の三つの方法のいずれかによっている。
 質権、この場合は原則として第三債務者(担保の目的となる債権の債務者)からの承諾書に確定日付をとることにより対抗要件を備えており、内容証明郵便による通知などによる例は少ない。
 譲渡担保、質権はその目的物が「債権証書ある債権」である場合は、証書の交付が成立要件となっているため、証書の交付が受けられないようなときに主に利用されており、そのような特殊の場合以外は効力も質権とほとんど同じであるため、一般には、むしろ質権が利用されている。対抗要件も質権と同じです。
 代理受領、正式の担保物権ではないが、債権者が債務者から第三債務者に対する債権の取立委任を受け、債権者と債務者の連名でこの委任契約の承認を第三債務者に求めるという方法による担保制度です。この担保的効果は、委任を受けた債権者以外には支払がなされない約定になっているため、債権者はそれを第三債務者から弁済を受け、債務者に対する債権と相殺することにより回収できるということにより生ずる。ただ、この代理権は、第三債務者から支払われる弁済金を債務者に代わって受領するだけの代理権しか認められないので、第三債務者が債務の履行をしないからといって、債務者に代わって強制執行など法的手続によりその取立てをする権限まではない。そのため、この担保は、特に譲渡・質入の禁止されている債権を担保とするときとか、担保の目的とする債権が不特定の債権であるため質権・譲渡担保の目的とすることが法的に不可能なときなど、特別の場合だけに利用されている。
 そこで、指名債権を目的とする担保権の実行手続としては、質権の場合は、自己取立ての方法によるか、強制執行の方法により、また譲渡担保の場合は、自ら債権者として第三債務者に強制執行の方法により請求することになる。なお、代理受領の場合は、単なる取立委任であるから、担保権実行手続はない。ただ、第三債務者が代理受領の特約に反して、債権者に無断で目的債権を債務者に弁済したため、債権者が債権の回収ができず損害が生じたときの損害賠償請求権の行使は、民事執行法によることになろうが、これ自体は担保権の実行ではない。

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 金銭債権に対する質権実行の方法として、法は質権者がその債権を第三債務者に直接請求して、その支払を求める権利を認めている。これを質権者の自己取立てまたは直接取立てという。
 この方法は、質権者が質権設定者の代理人として、その債権の取立てをする権限が認められたというのでなく、質権者が自己の名において、自己の権利として第三債務者に支払を請求する権利が認められているのであるから、この請求に対して第三債務者が履行をしなければ、質権者は直接本訴により支払を請求することもできる。なお、民事執行法では、債権に対する質権実行手続として、目的債権の差押え、陳述の催告、取立て、転付命令、譲渡命令、売却命令、管理命令などの手続をとることを認めているが、それらの命令にかかわらず第三債務者が債務の履行をしない場合は、質権者としては、それらの権利により第三債務者の財産を差し押え、強制執行の方法により取立てをすることとなる。ただし、そのためには、たとえ質権者であっても、その権利について取立訴訟などにより別途債務名義をとらなければ差押えはできない。
 また、この自己取立ての方法により第三債務者に支払請求のできるのは、質権者の被担保債権が弁済期にあるとともに、目的債権も弁済期にある必要があるのは当然です。
 質権者の被担保債権は弁済期にあるが、目的債権の弁済期未到来の場合は、その弁済期の到来するのを特って請求するか、強制執行の方法により転付命令をとり、その弁済期の到来を特って請求する以外にない。
 債権者の被担保債権の弁済期到来前に、その目的債権の弁済期が到来した場合は、その取立てはできないが、法は特に目的債権の供託請求権を認めている。
 これは、質権の被担保債権の弁済期を待って目的債権の弁済を請求したのでは、その間に第三債務者の資力に不安が生ずることもあるので、特にその権利を認めたものです。この場合には、第三債務者は供託義務を負うとともに、質権の効力はその供託金に及ぶことになるので、その被担保債権の到来を待って、その元利金債権につき、供託金の支払請求をすればよい。
 質権の自己取立ては、当然その披担保債権の元利金の範囲内に限られるが、第三債務者としてはその元利金の合計額を把捉する方法がないため、一般に第三債務者は、自己取立てについて債務者の同意書の提出を求めることが行なわれている。
 この同意書の提出ができないため、第三債務者からの支払が受けられない場合は、本訴により債務名義をとって請求するか、次の民事執行法の手続によって請求する以外にない。
 指名債権に対する質権も、民事執行法に定める手続により担保権を実行することができる。
 この民事執行法による手続とは、債権者が債務者の管轄裁判所に差押えの申請を行ない、その差押命令または差押・転付命令により第三債務者に請求するという手続のことです。ただ、質権実行の場合には、一般の差押えのように債務者に対する債務名義を要せず、質権の成立を証する文書を添付すれば差押えが可能になる点だけ相違する。
 なお、この場合も、差押命令や転付命令にかかわらず、第三債務者がその支払に応じないときは、差押債権者として第三債務者を相手に給付を求める取立訴訟を提起し、その確定判決を得てから、第三債務者の財産に強制執行する以外にないことは前述のとおりです。
 譲渡担保権に基づき、担保権者が譲り受けた債権により第三債務者に支払請求をしても、その支払をしない場合は、担保権者は強制執行の方法により、債権の実現を求める以外にない。
 その場合、第三債務者に対する債務名義が必要となるから、公正証書などによる債権でないかぎり、担保権者は第三債務者を相手に本訴の提起をし、その判決を得て、目的物件による強制執行手続をとることになる。この債務名義をとるための訴訟は、一般の訴訟手続によって第三債務者に対する請求権について行われる。

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