増価競売

 増価競売とは、抵当権者が、第三収得者等から滌除の通知を受けたときに、これを拒絶して行なう競売手続をいう。抵当権者が抵当権の目的不動産につき競売を申し立てるには、不動産の第三収得者に対し、あらかじめ抵当権実行をする旨を通知することを要する。
 第三収得者は、この通知を受けるまではいつでも、この通知を受けたときは1ヵ月以内に、抵当権者に対し、抵当権の価額を適宜評価し、その評価額相当の金員を弁済して抵当権を消滅させる旨の申出をなすことができ、これを滌除という。
 第三収得者から滌除の申出があると、抵当権者は、滌除の申出を承諾するか、またはこれを拒絶するかを選択しなければならない。
 滌除の申出を承諾すれば、第三収得者からその提供する金員の弁済を受け、抵当権は消滅する。その申出を拒絶すれば、抵当権者は、滌除の申出を受けた時から1ヵ月内に、第三収得者に対し増価競売の請求をし、かつ、その請求を発した目から1週間以内に、執行裁判所に対し増価競売の申立てをしなければならない。
 増価競売の請求にあたっては、もし競売の結果第三収得者が提供した金額より10分の1以上(1割増)高価に抵当不動産を売却できなかったときは、抵当権者は10分の1の増価で、自らその不動産を買い受けるべき旨を付言してこれをなし、かつ、債務者および抵当不動産の譲渡人に対しても増価競売の請求をした旨を通知することを要する。

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 滌除をすることができる者は、抵当不動産について、所有権、地上権、永小作権を取得した者で、かつ、その本登記を経た者でなければならない、これら第三収得者で現に仮登記を有する者は、抵当権者より抵当権実行の通知を受けるべき者であるが、滌除の申出をするためには、本登記を経なければならないと考えるのが一般です。抵当権実行の通知を要するかどうかは、滌除の機会を与えるかどうかの問題であり、滌除の申出をなしうるかどうかは、第三取得者としてその取得した権利をもって抵当権者に対抗しうるかどうかの問題に帰着するからです。
 抵当不動産の第三取得者であっても、主たる債務者、保証人およびこれらの承継人は、滌除の申出をなしえない。これらの者は、債務の全額を弁済すべき義務を負うのだから、これに満たない金額をもって抵当権を滌除させるべきではないとしたのです。承絶人とは、相続人その他の包括承継人のみではなく、債務引受人その他の債務の特定承絶入をも含む。
 第三取得者は、抵当権者からの抵当権実行の通知を受けるまではいつでも滌除権を行使できるが、通知を受けたときは1ヵ月内に滌除権を行使することを要する。抵当権実行通知が第三収得者にされた後において抵当不動産の第三収得者となった者は、すでに通知を受けた第三収得者の滌除期間内に限り、滌除権を行使できる。すでに通知を受けた第三取得者が数人いるときは、通知を受けた者の滌除期間内に行使すればよい。
 第三収得者が清節権を行使するときは、登記をした各債権者に、次の書面を送達しなければならない。
 抵当不動産取得の原因、年月日、譲渡人および収得者の氏名・住所、抵当不動産の性質(地目、建物の種類等)、代価その他収得者の負担(賃料、第三取得者の引受債務額等)を記載した書面。抵当不動産の登記簿謄本。債権者が1ヵ月内に増価競売を請求しないときは、代価または特に指定した金額を債権の順位にしたがって弁済または供託する旨を記載した書面。
 数個の不動産について滌除の申出をするときは、各不動産ごとに滌除金額を記載することを要する。
 登記した各債権者が、第三収得者よりの滌除の申出を承諾し、また滌除の申出を受けた後1ヵ月内に増価競売、第三取得者は、遅滞なくその不動産の代価または指定した金額を弁済または供託しなければならない。この弁済または供託の手続を怠ったときは、滌除の通知はその効力を失い、その後において供託をしても無効です。この場合において、抵当権者があらためて抵当権実行の通知をすることなく、競売申立てをなしうることはいうまでもない。
 滌除の申出を受けた各債権者は、滌除の申出を承諾しないときは、滌除の申出を受けた後1ヵ月内に、第三収得者に対し増価競売の請求をするとともに、その請求を発した日から1週間以内に増価競売の請求に基づく競売の申立てをしなければならない。
 増価競売の請求は書面によることを要する。増価競売の請求に基づく競売の申立ては、請求を発した日から1週間以内になすべき旨を定められ、競売の申立てをした日から2週間以内に、この増価競売の請求をしたことを証明すべきことを要求されていることからしても、書面による趣旨と解される。
 増価競売の請求書には、必ず「もし競売において、第三取得者が提供した金額より10分の1以上高価に抵当不動産を売却することができなかったときは、抵当権者自ら10分の1の増価をもって買い受ける」旨を付言しなければならず、この記載を欠いた増価競売の請求は効力を有しない。通常は配達証明付内容証明郵便によってなされている。
 増価競売の請求書は、滌除の申出を受けた後1ヵ月内に、滌除の申出をした第三収得者に到達することを要し、かつ、増価競売の申立てをしたときから2週間以内にこれを証明することを要する。
 増価競売の申立書には、次の事項を記載することを要する。
 債権者、債務者、譲渡人および第三収得者、代理人の表示。抵当権および被担保債権の表示。目的不動産の表示。被担保債権の一部について抵当権の実行または行使をするときはその旨、およびその範囲。第三収得者が提供した金額、債権者が定めた増価金額。第三収得者に増価競売の請求を発した年月日。
 申立てにあたっては、増価競売の請求書が法定期間内に到達したことの証明を要せず、申立て後2週間以内に証明すれば足りる。
 増価競売の申立てがあったときは、執行裁判所は、申立人に対し、期間を定めて、第三取得者が提供した金額にその10分の1の額を加えた額に相当する保証の提供を命ずる。ただし、申立人が不動産を取得する資格を有しないときは、第三取得者の提供した金額の10分の1の額に相当する保証の提供を命ずる。この保証の提供がないときは、競売申立ては却下される。
 この競売申立ての却下決定が確定し、または取り下げられたときは、すでになされた増価競売の請求はその効力を失い、この場合において、他に増価競売の申立てがあるときは、執行裁判所は、申立ての順序にしたがい、期間を定めて前同様に保証の提供を命ずる。
 増価競売は、抵当権者に対し、競売申立てにあたり、滌除権者に対する関係での特別の負担が諜せられていることが通常の抵当権実行としての競売と異なるだけで、その本質には変わりない。
 増価競売の申立てをするには、滌除権者から滌除の申出があった後1ヵ月内に増価競売の請求をして、その請求後1週間以内に増価競売の申立てをし、かつ、保証を提供することを要する。
 滌除権者は、いつでも滌除の申出ができるから、抵当権の被担保債権の弁済期到来前に濡除の申出がなされることがあるし、この場合も抵当権者に増価競売を認めるべきものであるから、増価競売にあっては通常の競売手続におけると異なり、弁済期到来前の競売申立てを認めざるをえない。
 増価競売の場合も通常の競売手続におけると同様の手続がとられるが、競売申立人は、申立の日から2週間内に、法定期間内に増価競売の請求をしたことを証明し、かつ、執行裁判所の決定により、一定期間内に増価金額に相当する保証の提供をなすことを要し、この証明または保証の提供のないときは、競売申立ては却下される。
 また、通常の競売手続におけると同様最低売却価額を定めることを要するが、増価競売にあっては、競売において増価金額より高価で売却されないときは、申立抵当権者自ら増価金額で買い受けなければならないので、最低売却価額は増価金額を下ることを許されない。さらに、増価競売を認めた趣旨からしても、無剰余取消しの規定の準用はない。
 増価金額を最低売却価額と定められた場合において、売却期日に、増価金額に達する買受申出のないときは、当然に申立抵当権者が最高価買受申出人となり、売却決定期日において売却許可決定がなされる。
 増価競売の申立ては、増価競売の請求をした債権者は、登記した他の債権者の承諾を得なければ増価競売の請求を取り消すことができないとする規定にかかわらず、他の債権者の承諾を要しないで、取下げができると解すべきものであろう。

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