競売での売却後の手続き

 競売での売却許可決定が確定すると、買受人は、執行裁判所の定める期限までに代金を執行裁判所に納付することを要する。この場合、買受人がすでに買受けの申出の保証として提供した金銭または法77条による保全命令のために提供した金銭があるときは、代金に充当される。また、買受けの申出の保証を金銭の納付以外の方法でしているときは、有価証券については執行官によって換価し、銀行等の支払保証委託による場合にあっては、執行裁判所の催告により、所定の額の金銭を銀行等に納付させて代金に充当する。この場合の換価に要した費用は買受人の負担とされる。
 買受人が売却代金から配当または弁済を受けるべき債権者であるときは、買受人は、売却決定期日の終了までに、執行裁判所に申し出て、配当または弁済を受けるべき額を差し引いて、代金を配当期日または弁済金の交付の日に納付することができる。この場合において、買受人の受けるべき配当の額について異議の陳述または申出があったときは、買受人は、ただちに異議にかかる部分に相当する金銭を納付しなければならない。

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 買受人は、代金を納付したときに不動産の所有権を取得し、不動産についての危険を負担する。
 買受人が所定の時期までに代金を納付しないときは、当然に売却許可決定は効力を失い、買受人は、買受けの申出にあたり提供した保証の返還を請求できなくなる。この失った保証は、売却代金の一部を組成し配当にあてられる。
 この場合、次順位買受けの申出人があるときは、その申出について売却の許可または不許可の決定がなされる。
 旧法時代には、買受人は、代金不納付によっては当然には買受けの権利を失わず、代金不納付によって開始される再競売期日の3日前までに、代金、利息、手続費用等を支払うことにより、なお目的不動産を取得することができたが、このことが代金納付の引延しに利用され、手続遅延の理由ともなっていたので、これを廃止し、代金不納付によって、買受人は確定的に買受けの権利を失うこととされた。
 なお、旧法時代には、再競売の場合において、後の買受価額が先の買受価額より低いときは、先の買受人はその差額を負担すべきものとされていたが、売却価額を適正にし、買受申出の保証の額を引き上げることによって補填すれば足りるとして廃止された。
 代金納付によって、買受人は売却不動産の所有権または権利を取得し、売却に伴って、不動産の上に存する先取特権、使用収益をしない旨の定めのある質権、抵当権、仮登記担保権は消滅し、これらの消滅する権利に対抗できない権利および仮処分の執行も、留置権を除いて消滅する。また仮差押・差押の執行も常に消滅し、これに対抗できない権利および仮処分の執行も消滅する。
 もっとも全利害関係人の間で、最低売却価額が定められる時までに、これらと異なる合意をしてその旨の届出をしたときは、これら不動産の上の権利の変動は、その合意に従うことになる。
 買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、ただちに次の登記を嘱託する。
 買受人の取得した所有権または権利の移転の登記、売却により消滅し効力を失った権利の取得または仮処分にかかる登記の抹消、差押えまたは仮差押えの登記の抹消。
 これらの登記の嘱託をするには、登記嘱託書に売却許可決定の正本を添付することを要し、これらの登記の嘱託に要する登録免許税その他の経費はすべて買受人の負担とされる。
 買受人は、買受代金を納付したときは、買受不動産を占有している所有者または事件の記録上差押えの効力発生前から権原により占有している者でないと認められる者に対し、自己に不動産を引き渡すよう、執行裁判所に求めることができる。ただし、不動産の占有者が、事件の記録上差押えの効力発生後に占有した場合でも、買受人に対抗できる権原により占有していると認められるときは、引渡命令を求めることはできない。
 従来も、この引渡命令が認められていたが、この引渡命令の性質を独立の借務名義とみるか、または執行手続に付随する職務命令とみるかについて争いがあり、むしろ職務命令説が有力であった。職務命令説によると、引渡命令を執行裁判所の執行官に対する職務命令と考えるから、引渡命令の相手方となるのは執行手続の関係者に限定される。そこで、その相手方は、所有者およびその一般承継人ならびに差押え後にこれらの者から占有の承継を受けた考に限られるとされていた。
 新法では、現況調査等により、売却不動産の現況を把握し、不動産の占有関係も占有権原も売却の段階で明らかになっていることを建前とし、売却手続を適正化し強化し、その一環として、買受人保護のために仏売却のための保全処分または買受人等のための保全処分の制度を設けたことの延長として引渡命令を強化し、引渡命令を債務名義として構成し、執行の相手方も拡張するに至った。すなわち、所有者および事件の記録上差押えの効力発生前から権原によって占有している者でないと認められる考に対する引渡命令を認めることとしたのです。もっとも、差押えの効力発生後に占有した者でも、留置権者のように、買受人に対抗できる権原により占有している考に対しては、引渡命令を認めないこととしている。したがって、旧法下においては認められていなかった差押え前からの不法占有考や消滅する抵当権に対抗できない賃借権者に対しても引渡命令が発せられることになった。
 買受人は、代金を納付した時から引渡命令の申立てをすることができるが、その時から6ヵ月を経過したときは、その申立てをすることができない。買受人は引渡命令を申し立てるにつき、代金を納付すれば足り、所有権移転登記を経ることを要しない。
 執行裁判所は、買受人の申立てにより、引渡命令を発するにあたっては、所有者に対してはその審与を要しないが、所有者以外の考に対する引渡命令にあっては、その考を寄与することを要する。もっとも、すでに、不動産の現況調査等にあたり不動産の占有関係、占有権原を明らかにするためにその者を審与しているときは、重ねて審与することを要しない。
 この引渡命令の裁判については、それが債務名義である以上、執行抗告できることはいうまでもないし、また引渡命令は確定しなければその効力を生じない。
 引渡命令は確定しなければ執行力を有しないから、買受人は、その確定後において、これに執行文を受け執行する。
 引渡命令には既判力が認められないから、引渡命令を受けた相手方は、請求異議の訴えによって占有権原の存否を争うことができる。
 このように、引渡命令発布後においても、その執行までには相当の期間を要するから、買受人等のためにする保全命令を得て保全しておく必要は十分にある。
 買受人から代金の納付がなされると、納付された代金等について、債権者のための分配手続が行なわれる。
 この配当の対象となるものは、買受人から納付された売却代金が主体となるが、ほかに、無剰余換価を免れるために申立抵当権者が法63条2項2号の規定により提供した保証のうち、申出額と代金額との差額、先の買受人が代金を納付しなかった場合において、返還を請求することができなくなった保証の額も配当の対象となる売却代金を構成する。
 一括売却の場合において、各不動産ごとの売却代金の額は、売却代金の総額を各不動産の最低売却価額に応じて按分して得た額とされる。各不動産ごとの執行費用の負担も同様にして算出される。
 これらの提供された保証のうち、換価を要する場合には、執行裁判所は、執行官に対してその換価を命じ、または自ら銀行等に催告してこれをなす。
 売却代金の配当を受ける債権者は、次のとおりです。
 配当要求の終期までに、強制競売または一般先取特権の実行として競売申立てをした差押債権者、配当要求の終期までに配当要求をした債権者、最初に効力を生じた差押登記前に登記された仮差押債権者、最初に効力を生じた差押登記前に登記された先取特権、質権、抵当権、仮登記担保権で売却により消滅するものを有する債権者、仮差押債権者が本案訴訟で敗訴しまたは効力を失ったときは、仮差押えの登記後に登記された先取特権、質権、抵当権、仮登記担保権で売却により消滅するものを有する債権者、最初に効力を生じた差押登記にかかる競売手続が停止され、後になされた差押債権者のために競売手続が続行されている場合において、先行する差押債権者がその停止にかかる訴訟等において敗訴したときは、最初に効力を生じた差押登記後で後行する差押債権者のための差押登記前に登記された先取特権、質権、抵当権、仮登記担保権で売却により消滅するものを有する債権者。
 確定期限の到来していない債権は、配当等については弁済期が到来したものとみなされ、配当または弁済金の交付の日に配当等を受けられる。
 この債権が無利息であるときは、配当等の日から期限までの法定利率による利息相当額(中間利息)を控除する。
 次の各債権については、配当等をすることなく、配当等の額に相当する金銭を供託する。
 停止条件付または不確定期限付債権、仮差押債権、法39条1項7号の文書が提出されているときの債権、その債権についての先取特権、質権、抵当権の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき、その債権についての先取特権等が仮登記されたものであるとき、仮差押え、執行停止にかかる差押登記後に登記された先取特権等があるため配当額が定まらないときの債権、配当異議の訴えが提起されたときの債権、なお、配当等の受領のために出頭しなかった債権者に対しても、これに対する配当等の額に相当する金銭を供託するを要する。
 執行裁判所は、不動産の代金が納付されたときは、弁済金交付の日を定め、または代金納付の日から1ヵ月以内の日を配当期日とする日を定め、裁判所書記官は、各債権者、債務者、所有者に対し、配当期日等の日時・場所を通知し、かつ、各債権者に対し、債権の元本、配当期日等までの利息その他の付帯の債権および執行費用の額を記載した計算書を1週間以内に執行裁判所に提出するよう催告する。執行裁判所は、これらの計算書に基づきまたは記録に基づいて、弁済金の交付計算書または配当期日において配当表を作成し、これらに基づいて配当を実施する。
 債権者が1人である場合または債権者が2人以上であっても、売却代金で各債権者の債権および執行費用の全部を弁済することができる場合には、売却代金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金を所有者に交付する。
 代金納付後に法183条1号ないし4号の文書が提出された場合においては、申立抵当権者に対する弁済は禁止されるが、競売手続を取り消す余地はなく、他の債権者のためのに弁済金の交付または配当がなされ、申立抵当権者に対する弁済金は所有者に交付される。また法183条5号の文書が提出されているときは、申立抵当権者に対する弁済金は供託され、供託の事由が消滅したときに権利者に交付される。
 配当を受けるべき債権者が数人いて、かつ、売却代金をもって各債権者の債権額および執行費用の全部を弁済することができない場合には、常に配当表の作成を要する。法183条文書が提出されても配当手続を停止することを要しない。執行裁判所は、配当期日において、配当表の作成に関し、出頭した債権者、債務者、所有者を審尋し、即時に取り調べることができる書証の取調べをすることができる。
 配当表には、売却代金の額のほか、各債権者について、債権の元本・利息その他の付帯の債権、執行費用の額ならびに配当の順位および額を記載しなければならない。これらの配当の順位および額は、配当期日においてすべての債権者間に合意が成立した場合にはその合意により、その他の場合には民法、商法その他の法律の定めるところにしたがって記載される。
 配当表に記載された各債権者の債権または配当の額について不服のある債権者、債務者、所有者は、配当期日において異議の申出をすることができる。この異議の申出は口頭でできるし、理由を付することを要しない。
 この異議の申出がなされると、異議のない部分に限り配当を実施する。この異議の申出については、その後はすべて訴えで処理される。
 配当異議の申出をした債権者は、配当異議の訴えを、また配当異議の申出をした債務者および所有者は、執行力のある債務名義の正本を有しない債権者に対する異議については配当異議の訴えを、また執行力のある債務名義の正本を有する債権者に対する異議については請求異議の訴えを各提起し、かつ、配当期日から1週間以内に、執行裁判所に対し、その提起したことを証明し、特に請求異議の訴えの提起を要する場合にあっては執行停止の正本を提出することを要し、これらの証明または提出のないときは、配当異議の申出は、取り下げたものとみなされる。
 配当期日において配当異議の申出をした債権者および執行力のある債務名義を有しない債権者に対し配当異議の申出をした債務者、所有者は、配当異議の訴えを提起することを要し、配当異議の訴えについての判決においては、その請求を認容する場合には、配当表を変更し、または新たな配当表の作成のために配当表を取り消すことを要する。
 この配当異議の訴えの性質・効力については争いがあるが、新法が、その訴訟にあっては、配当表の変更のみならず、新たな配当表作成のために配当表を取り消すことを予定していることからすると、旧法下におけると同様、通説的見解と日される配当表変更請求権ともいうべき訴訟法上の形威権を訴訟物とする訴訟手続上の形成の訴えと解するのが妥当のようです。
 したがってまた、債権者の提起する配当異議訴訟と債務者の提起するそれとでは、その効力に差異があると思われる。すなわち、債権者の提起する配当異議訴訟にあっては、債権者問の配当額の争いであるので、その判決の効力を他の債権者、債務者、所有者に及ぼすべきものではなく、原告の債権につき弁済の認められる限度で配当表を変更すれば足り、配当異議の申出のない他の債権者ないしは所有者に交付するまでの配当表の変更をすべきものとは思われない。しかし、債務者、所有者の提起する配当異議の訴えにあっては、実質的には抵当権不存在確認訴訟や債務不存在確認訴訟と同質のものであって、単に原被告間で相対的に解決すれば足りるものでなく、必然的に他の債権者に対する関係での配当手続をなすべきものと思われる。この意味で、債権者の提起する配当異議訴訟にあってはその効力は原被告間で相対的に、債務者・所有者の提起する配当異議訴訟にあっては絶対的に効力が及ぶものと解される。
 配当異議訴訟において、原告が最初の口頭弁論期日に出頭しない場合には、原告の責めに帰することができない事由によるときのほかは、配当異議の訴えを却下することを要する。出頭しないことについて正当な理由のあるときは、原告は控訴して争うべきであるし、原告、被告とも出頭しない場合でも、民事訴訟法238条により訴訟の休止の手続によるべきではなく訴え却下の判決をすることとなる。
 配当表に不服のある債権者が配当異議の訴えによらず、または配当異議訴訟で敗訴した後において、不当利得による返還請求ができるかについては争いがあるが、もともと実体上の請求権があっても、配当表につき配当異議の申出もせず、また配当異議の訴えによらない場合には配当手続上の請求権を有しないのであるから、配当表に基づく配当金の受領は法律上の原因なくして利得したものではなく、不当利得返還請求ができるものとは思われない。旧法下にあっては、優先権を有する債権者の配当表に基づいて配当を受けた債権者に対する返還請求を認めていたが、民事執行法においては同旨の規定を設けていない。このことは、このような返還請求権を認めない趣旨と解される。もっとも、配当手続に関与することができなかった債権者については、権利主張の機会がなかったのであるから、不当利得返還請求権を認めるべきものであろうか。
 配当を受けるべき債権について法91条1項の事由があるときは、配当等の額に相当する金銭は供託されるが、その供託の事由が消滅したときは、供託金についての配当等が行なわれる。
 この場合において、法91条1項1号から5号までの供託にかかる債権者、同項6号による供託にかかる仮差押債権者もしくは執行を停止された差押債権者に対して配当を実施することができなくなったとき、または同項7号による供託にかかる債権者が債務者の提起した配当異議訴訟において敗訴したときは、執行裁判所は、配当異議の申立てをしなかった債権者のためにも配当表を変更しなければならない。

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