競売の申立て

 競売申立てにあたっては、執行裁判所に対し競売申立書を提出することを要する。競売申立書には次の事項を記載する。
 債権者、債務者、所有者または権利者、代理人の住所・氏名、抵当権および被担保債権の表示ならびに被担保債権の一部について抵当権の実行をするときは、その旨および範囲、目的不動産の表示、第三収得者に対して抵当権実行の通知を要するときは、その通知をした旨、増価競売の申立てにあたっては、所有者の表示に代えて、譲渡人および第三取得者の表示を記載し、第三収得者が提供した金額、債権者が定めた増価金額および第三収得者に増価競売の請求を発した年月日。
 申立書には、申立書記載の事実を証する書面およびその他の書面の添付が要求されている。
 当事者(債権者、債務者、所有者または権利者)を特定し資格を証する書面、銀行など法人にあっては、登記簿抄本(商号、本店所在地、代表者の住所・氏名を記載したもの)。個人にあっては、別段書面を要しない、代理人による場合は委任状その他代理権の存在を証する書面弁護士以外の者が代理人となる場合は、執行裁判所の代理を許可する書面を要する。
 抵当権の存在を証する書面は次のように法定されており、他の書面による証明を許さない。
 抵当権の存在を証する確定判決、家事審判法15条の審判またはこれらと同一の効力を有するもの(和解・調停・請求の認諾調書)の謄本、抵当権の存在を証する公正証書、抵当権の登記のされている登記簿謄本、抵当証券の所持人が競売申立をするときは、抵当証券の提出を要する、抵当権について承継があったときは、相続・合併等の一般承継を証する書面、特定承継にあってはその承継を証する裁判の謄本その他の公文書の提出を要する。
 申立不動産の登記簿謄本、登記用紙の表題部に所有者として記載されている者以外の者を物件所有者として競売申立てをする場合にあっては、その者の所有に属することを証する書面、登記がない場合には、その者の所有に属することを証する文書および不動産登記法101条2項に規定する書面を必要とする。
 そのほかに、申立不動産が土地の場合には、その土地に存する建物および立木法に規定する立木の登記簿謄本があればその添付を要し、また申立不動産が建物または立木の場合には、その存する土地の登記簿謄本の添付が必要です。
 申立不動産に対して課される公租・公課の額を証する文書。
 第三収得者に対してした抵当権実行通知書。
 増価競売申立書には、第三収得者の滌除申出書、債権者のした増価競売請求書の添付を要する。

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 抵当権実行のため競売を求める者を債権者という。債権者は当事者能力、訴訟能力を有することが必要です。銀行や会社等の支店は、一般に独立の人格を有しないので、支店の取引に関するものでも、その本店を表示しなければならない。ただし、銀行の取引に関しては、取扱支店名が登記簿に記載されているときは、執行裁判所は、競売手続に関するいっさいの通知書に取扱支店を付記する取扱いになっているので、債権者として、銀行の本店名を記載するほか、取扱支店名をも表示するのが便宜です。
 債権者は、抵当権者または抵当権を行使しうる権限を有する者です。抵当権は未登記であって払その存在を法定文書で証明できれば競売申立てはできる。登記は対抗要件であって、当事者間では対抗の問題を生じないからです。
 もとより、後順位抵当権者であっても競売申立てはできるが、自己に対する配当がなければ、その競売申立ては却下される。
 抵当権を行使できる権限を有する者は、抵当権者のほか転抵当権者または代位債権者である。代位弁済者または抵当権の譲受人、抵当債権に対する転付債権者は、それぞれ抵当権を取得するものであって、単に抵当権を行使できる権限を有するにとどまるものではない。これらの者は、抵当権を承継するものとして競売を申し立てることになる。
 転抵当にあっては、原抵当権者は、転抵当権の被担保債権と同額の範囲内において、その抵当権を実行する権能を転抵当権者に与えたものであるから、転抵当権者が当該抵当権を実行できることはいうまでもないが、原抵当権の債権額が転抵当権の債権額を超過するときは、その超過分につき、原抵当権者も当該抵当権に基づき競売申立てをなしうることを判例は認めている。しかし、担保物権の不可分性からすると、むしろ原抵当権者は競売の申立てができないと解すべきではないかといわれている。
 抵当権者の債権者も、代位の要件を満たした場合には、抵当権者に代位して当該抵当権を行使し競売申立てをすることができる。
 従来、抵当権実行としての競売手続は、抵当権の目的物件に対する換価権の実行方法にすぎないから、強制競売手続におけるような申立人に対する相手方を必要としていないし、債務者、所有者も当該競売手続における他の利害関係人と同様に、単なる利害関係人として競売手続に関与するにすぎないと考えられていた。したがって、競売申立書に債務者、所有者を表示するのも、どういう債権につき、どのような物件に対して競売手続を進めるかという、抵当権の同一性を示すために必要な限度で記載されればよいとされていた。
 しかし、民事執行法は、抵当権実行による競売手続においても強制競売の規定を準用するものとし、申立人に対する相手方の概念を認めるに至っている。債務者または所有者、特に所有者は、抵当権実行による競売手続上、相手方の地位を取得したものとみるべきであろうか。
 競売申立書には、すでに説明したように、債権者と並んで、債務者および所有者の表示を要する。
 競売開始決定は債務者および所有者に送達され、かつ、抵当権の存在を証する文書の目録の送達も必要とされる。また、真実の所有者は、競売手続において相手方とされないかぎり、たとえ売却許可決定に基づく買受人の代金納付があっても、その所有権を失うことはないと解さざるをえない。その意味において、債務者および所有者の表示は重要な意義を有し、これを特定するに足りるだけの記載を要するといえる。
 債務者とは被担保債権の債務者であり、所有者とは抵当物件の所有者である。両者が同一人の場合は債務者兼所有者と表示している。競売申立てのときに抵当物件を取得した第三収得者があれば、この者を所有者と表示する。抵当権設定時の所有者を表示することを要しない。
 債務者、所有者を表示するのは、競売の当事者を特定するためのものであるが、一方において競売開始決定にかかる差押えの登記をし、競売開始決定その他の文書を送達し、通知をなすためのものであるから、不動産登記簿上の住所のみならず、現住所をも併記すべきです。
 債務者、所有者が死亡したときは、これらの者の相続人を債務者または所有者として表示することを要する。
 所有者死亡の場合で、相続登記が未了のときは、債権者は、競売申立て前、相続人に代位して相続登記をし、そのうえで相続人を所有者と表示して競売申立てをすることを要する。
 そうでないと、登記未済の相続人を所有者として競売開始決定を得ても、登記嘱託した場合に、不動産登記簿上の所有者は依然として被相続人名義であるから、登記嘱託を却下されることとなるし、登記嘱託は開始決定と同時に職権でなすべきものであるので、競売開始決定後、登記嘱託をするまでの間に、代位による相続登記をすることも許されないからです。
 相続人不明の場合には、相続財産は当然に法人となり、競売申立てをするには、相続財産管理人の選任を求め、債務者または所有者欄を「何某相続財産」と表示し、その法定代理人として、相続財産管理人の氏名、住所を表示することになる。
 相続財産管理人を選任するには日時を要するので、遅滞のため損害を受けるおそれがあるときは、特別代理人の選任を求めることができる。相続財産管理人の選任は、相続開始地の家庭裁判所にこれを求め、特別代理人の選任は、執行裁判所にこれを求めることとなる。
 債務者、所有者が破産したときは、これらの者の財産は、破産財団を構成し、その管理処分権は破産管財人に専属することとなるので、この場合には「破産者何某、破産管財人何某」と表示して、競売申立てをすべきです。
 競売の目的となる不動産は、当該抵当権の目的となった不動産です。不動産とは、土地および土地の定着物をいう。土地の定着物とは、土地に固定的に付着して容易に移勤しえない物であって、取引観念上、継続的にその土地に付着せしめた状態で使用されると認められる物をいう。土地の定着物は、不動産とされるといっても、土地と離れて独立の権利の目的となるかどうかは別問題です。土地の定着物には、次の三つの形態のものを認めることになる。第1のものは、土地と離れた独立した不動産と認められる建物および立本法の適用を受ける立木です。第2のものは、土地と一体としてのみ処分に服するもので、土地から分離しないかぎり、独立して処分の対象となりえないものです。門、塀、石垣、庭石などはこれにあたる。第3のものは、土地と離れて独立に処分の対象となるが、対抗要件を満たさないかぎり、土地の処分にしたがうものです。立本法の適用のない樹木、工事中の建物で独立の建物までに至らないもの、鉄塔、ガスタンクなどがこれにあたる。
 土地の定着物のうち、建物は、土地とは独立した不動産とされているが、その他の土地の定着物は、土地に対する競売手続によって、土地の処分にしたがう。
 建物に対する競売にあっては、建物が敷地上に存在する現状において競売されるのであって、同時に敷地賃借権を競売の目的とするものではない。しかし、もともと建物の所有権が競売によって買受人に取得されたときは、特段の事情がないかぎり、敷地賃借権伝達物の従物として、建物の所有権移転に伴い競落人に移転する。したがって、敷地賃借権の存在または価格が明白であるときは、建物の最低売却価格を定めるにあたり、敷地賃借権の価格をこれに算入すべきものであるが、その不明なときは、これを考慮することなしに競売建物の競売価格を定める。
 抵当権の設定された土地上に、抵当権設定者が事後に建物を築造し、競売申立て時においてなお同建物を所有するときは、抵当権者は、当該抵当権の目的たる敷地とともに、地上建物をもあわせ競売することができる。もとより抵当権者は、地上建物の競売を強制されるものではなく、敷地のみを競売したときは、地上建物の所有者は、買受人に対抗できる土地使用の権原を有しないから、同地上建物の収去義務を負うことになる。
 地上建物をあわせ競売した場合、土地と建物を別々に売却することは許されない。この場合、抵当権者の優先弁済権は土地についてのみ存し、地上建物に及ばないことはいうまでもないが、他に債権者がいなければ、地上建物代金からも弁済を受けられると解すべきです。
 抵当権の目的となっている土地または建物が、同時に他の工場抵当の目的となっているときは、工場抵当法3条所定の機械器具を同時に競売しなければならない。この場合、これらの機械器具代金に対しては、申立抵当権者の抵当権は及ばない。
 抵当権の効力は、特にこれを排除しないかぎり、目的不動産に付加して一体となった物および主従の関係にある従物に及ぶ。したがって、競売の申立てにあたって、これらの付加物・従物を除外しないかぎり、競売の目的となる。抵当権の目的となった土地の上に立木が生立しているが、立本法による登記のない場合には、抵当土地の競売において、これらの立木は土地とともに当然競売に付される。
 ただ、これらの付加物・従物のうち、不動産にあっては、登記のある場合、当事者の意思が推認されるから、次の付属建物のような取扱いが生ずる。
 付属建物が主たる建物の従物または付加物と認められるときは、主たる建物に対する抵当権設定後に抵当権設定者によって築造されたときで払主たる建物とともに競売される。
 付属建物とは、物理的には別棟をなす数個の建物を、利用上、機能上の観点から、うち1棟を主たる建物となし、他の建物を従たる建物としての1個の建物として登記した場合の従たる建物をいう。この場合、これらの個々の独立建物を、数個の建物として登記するかまたは1個の建物として登記するかは、当事者の意思にまかされており、これらを1個の建物として登記する場合の主従の別も、当事者の意思を尊重すべきものである。したがって、ある建物を1個の建物のうちの付属建物として登記した場合においては、主たる建物に対する抵当権は、付属建物に及ぶこととなる。
 競売の目的不動産は、これを特定できる程度に記載することを要する。土地であればその所在・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を、付属建物のあるときはその種類および床面積を記載する。その表示は登記簿謄本の表示にしたがって記載し、未登記であれば、その旨および現況にしたがって記載すべきである。なお、申立書には、登記簿謄本、登記簿上所有の事実が明らかでないときは、申立不動産が相手方所有者の所有に属することを証する文書、末登記不動産については、同様に相手方所有者の所有に属することを証する文書および不動産登記法101条2項に規定する図面の添付を要する。
 さらに、申立不動産が土地の場合には、その土地に存する建物および立本法の登記のある立木のあるときは、これらの登記簿謄本、中立不動産が建物または立木の場合は、その存する土地の登記簿謄本の添付も必要です。
 競売の申立書には、抵当権および披担保債権を記載することを要する。なお、競売の目的不動産に第三収得者があるときは、第三収得者に対し抵当権実行の通知をしたのに第三取得者から滌除の申出のない事実を記載する。第三収得者から滌除の申出のあった場合において、これを不服として抵当権の実行をするときは、増価競売の申立てをすることになる。
 競売申立てにあたって抵当権および被担保債権を表示するのは、どの抵当権に基づいて、どのような債権につき競売申立てをするのかを特定するためのものであるから、これらを特定認識できる程度に記載することを要する。通常は、抵当権設定者、目的不動産、抵当権設定の年月日、設定登記の年月目、登記番号、被担保債権の発生原因、年月日、債権額、残存債権額を記載する。
 抵当権を承継した場合には、相続その他の一般承継の年月日、原因を、その他の特定承継にあっては、譲渡、代位弁済その他特定承継の年月日、原因を記載する。
 なお、被担保債権の一部について競売申立てをするときは、その旨およびその範囲を明らかにしなければならない。
 したがって、これらの記載は、債権額を限定する意味を有し、これを増額するには、単なる補充訂正では足りないで、新たな競売申立てによるべきです。
 被担保債権の一部が弁済等によって消滅して払残存債権があるかぎり、抵当不動産全部について競売申立てができる。被担保債権についての債務名義を要しないが、抵当権の存在を証明する確定判決その他の裁判上の調書の謄本または抵当権の登記されている登記簿謄本の提出を要し、抵当権を承継した場合には、相続その他の一般承継にあっては、その承継を証する文書を、その他の承継にあっては、その承継を証する裁判の謄本その他の公文書の提出を要する。もっとも、この場合、抵当権についての承継取得による登記を経ていれば、その登記簿謄本の提出をもって足りる。
 利息・損害金については、満期となった最後の2年分の利息・損害金だけでなく、利息・損害金の全額について競売申立てできる。他の債権者に対する関係では、民法374条の制限を受けるが、抵当権設定者に対する関係ではその制限を受けないと解されている。
 債権が弁済期に至らないときは、債権の履行を強制できないから、抵当権の実行をすることはできない。競売申立書には、必ずしも履行遅滞の事実の記載を要しないが、損害金を請求する場合には弁済期到来の事実を記載するを要するし、その他の場合でも弁済期を記載すべきものであろう。弁済期未到来の場合には、原則として競売開始決定に対する執行異議の申立によって争われるべきものです。
 被担保債権が分割払いのものであっても、遅滞となった部分についての競売申立ては当然に許される。分割払いの場合、多くは割賦金の支払を1回または数回怠ったときは期限の利益を失う旨の特約が付されている。この場合、債権全額につき競売申立てはできるが、後順位の抵当権者に対しては、期限の利益の喪失を対抗できないから、すでに弁済期の到来した分についてのみ優先して弁済を受けられるにすぎないと解されていたが、抵当権の登記事項中より弁済期の削除された現在では、登記事項とされない特約については、その特約をもって第三者に対抗できると解すべきです。なお、配当にあたっては、確定期限の到来していない債権は弁済期が到来したものとみなされる。
 根抵当権にあっても、被担保債権の一部に遅滞があれば競売申立てができる。この場合、被担保債権の元本は確定し、確定した元本および利息・損害金につき、極産額の範囲内で弁済を受けられる。
 執行裁判所は、目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所である。
 建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがって存在する場合には、建物に対する競売については、建物の存在する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が、また、土地に対する競売については、土地の所在地を管轄する地方裁判所または建物に対する競売の申立てを受けた地方裁判所が管轄する。
 この場合、執行裁判所は、必要なときは、他の管轄裁判所に移送することができる。この移送決定に対しては、執行抗告はもとより執行異議の申立てをすることもできない。

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