抵当権の実行

 抵当権は、債務の弁済のない場合において、債務の担保として提供された物件を競売し、その売得金から他に優先して弁済を受けられる担保物権ですが、質権が設定者から目的物の占有を奪うのに反し、目的物を設定者に引き続き占有使用させ、もっぱらその交換価値だけを把握するもので、近代的な典型的担保権です。
 この担保形態に最も適するのは不動産であり、しかも不動産は年々値上り傾向にあって、担保価値も高い。
 そのために、抵当権は、不動産をもって本来の目的物とし、不動産物権の上の抵当権をもってこれに準ずべきものとし、立木、工場財団、鉱業財団、漁業財団、道路交通事業財団、港湾運送事業財団、観光施設財団などを不動産とみなして、抵当権の目的としている。
 現在、担保権の目的物としては不動産が最も担保価値が高く、担保権としては抵当権が主要な担保権となっている。この意味において、担保権実行は、抵当権実行を中心に構成されているといえる。

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 抵当権実行は、競売手続に限られ、執行手続において認められるような強制管理的制度は、特殊の場合を除いて認められていない。抵当権を実行するには、抵当権が存在すること、被担保債権が存在すること、被担保債権が弁済期にあることが必要です。
 抵当権が有効に存在しないのになされた競売申立ては却下され、また競売開始決定に対する執行異議の申立てによって争われ、取り消される。しかし、競売手続が取り消されることなく換価がなされ、買受人の代金納付がなされたときは、買受人は、抵当権が存在しなくて払買受不動産の所有権を取得する。
 抵当権者は、競売申立てにあたり、抵当権が有効に存在することを証明しなければならないが、この立証は、一定の書面によるべきことに法定されていて、それ以外の立証が許されていない。
 したがって、法定された書面が存在しないかぎり、競売申立ては許されないことになるが、その反面、これらの法定書類による立証がなされたときは、執行裁判所は、抵当権の存否についての実体判断をすることなく、競売開始決定をしなければならない。
 抵当権は債権に付従する。抵当権にあっては、被担保債権がはじめから存在しないとぎは無効であり、弁済等により、被担保債権が消滅したときは消滅する。競売申立てにあたり、披担保債権についての債務名義は必要でない。
 競売申立て時に被担保債権が存在していて払買受人の代金納付時までに被担保債権が消滅すれば、債務者または所有者は、競売開始決定に対する執行異議の申立てをすることにより、競売開始決定の取消しをすることができるが、この手続を踏まないで、買受人が代金納付をしたときは、爾後買受人の所有権取得を争うことはできない。
 被担保債権が弁済期にないときは、債務の履行を強制できないから、抵当権に基づく競売申立てはできない。ただし、仮登記担保権の実行にあたっての清算期間内においては、抵当権の被担保債権の弁済期前であっても、競売申立てが許され、また抵当権者が、滌除権者から滌除の通知を受けた場合において、増価競売の申立てをするときは、被担保債権の弁済期前であっても、競売申立てができると解されている。
 被担保債権の弁済期が到来しないのに競売申立てをすれば、その申立ては却下されるし、これを看過してなされた競売開始決定は、執行異議の申立てによって取り消される。もっとも、取消しの決定のなされるまでに、被担保債権の弁済期が到来すれば、瑕疵は治癒されるし、競売手続は有効となる。
 民法は、抵当不動産につき、所有権・地上権・永小作権を取得した第三者が、自ら抵当物件の価格を評価算定した金額を抵当権者に支払って抵当権を消滅させる滌除の制度を認めている。
 第三収得者は、いつでも抵当権者に対し、滌除の申立てをすることができるが、抵当権者が抵当権を実行するにあたっては、あらかじめ第三収得者にその旨を通知し、これらの者に滌除の機会を与えなければならない。
 ここに第三収得者とは、すでに不動産につき所有権、地上権、永小作権を取得して本登記を経た者にとどまらず、現在仮登記を有するにすぎない者でも、後日本登記を経ることによって滌除をなしうるに至るから、手続上の要件が具備しないための仮登記であると、物権の得喪変更を目的とする請求権保全の仮登記であるとを問わず、仮登記権利者のすべてをいうと解されている。停止条件付仮登記権利者で条性来成就の者、所有権移転請求権保全の仮登記を有するにとどまる者は、滌除権者ではないが、これらの通知を受ける権利者です。
 抵当権者は、抵当権実行をなすにあたって、そのときに登記簿上に存在する第三収得者のすべての者に対して、抵当権実行をナる旨の通知をなすを要し、かつ、それをもって足りる。抵当権者がこれらの第三収得者に通知した以上、その後にこれらの権利を譲り受けまたは第三収得者としての地位を得て登記を経た者に対しては通知を要しない。これらその後に権利を取得した第三収得者は、すでに通知を受けた者の滌除期間内に限り、滌除権を行使できるにすぎない。
 目的不動産につき、数大の抵当権者が存する場合、そのうちの1人の抵当権者が第三収得者に対して通知をすれば、他の抵当権者は、抵当権実行の通知を要しないで競売申立てをすることができる。
 抵当権者の1人から通知を受けた第三収得者は、すべての登記をした債権者に対して滌除権の行使をなすことを要する。
 この通知は、登記簿記載の第三収得者の住所にあててすれば足りる。これらの住所にあてて通知をしたのに、第三収得者に通知が到達しないときは、その通知が到達すべかりしときから1ヵ月以内に、第三収得者から債務の弁済または滌除の通知がなかった場合に、競売の申立てをすればよい。通例、被担保債権を表示するが、この通知をなす趣旨は、第三取得者に滌除権を行使する機会を与えるにあるから、特定の不動産につき、抵当権を実行する旨を明らかにすれば足り、被担保債権の明示は必ずしも必要ではない。
 通知に瑕疵があり、または通知がなくてなされた競売申立ては不適法で却下される。ただし、手続が開始されたときは、第三取得者は、滌除権を行使したうえでなければ競売手続の無効を主張できないし、売却許可決定も確定し、買受人が代金を納付した後は、これら通知のなかったことを理由として、競売手続による所有権移転の効果を争うことはできない。
 抵当権は、特定の債権を担保するもので、債権に付従するが、根抵当権は、一定の範囲内の不特定の債権を一定の極産額の限度で担保するもので、債権に付従しない。
 抵当権は、特定の残元本と最後の2年分の利息・損害金につき実行することができるが、根抵当権は、確定した元本・利息・損害金の全部につき、極度額の限度で実行することができる。
 被担保債権が弁済期にあるときは、根抵当権に基づき競売申立てをすることができるが、この場合、根抵当権の被担保債権の元本は確定し、その後に生じた債権は担保されない。根抵当不動産につき、滞納処分がなされ、または競売手続が開始したことを根抵当権者が知った時から2週間を経過したとき、債務者または根抵当権設定者が破産宣告を受けたとき、被担保債権が生じないこととなったとき、根抵当権につき元本確定日の定めがあってその到来したとき、根抵当権設定者から、設定の時から3年を経過した後において、根抵当権の確定請求のあった時から2週間を経過したときも、根抵当権は確定する。

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