抵当権の実行による売却手続き

 売却の方法は、従来では競り売りを原則しとし、例外的に入札の方法をとることを認めていた。本法は、時代の要請に適応して売却方法の弾力的な選択ができるように、最高裁判所規則によって売却方法を定めることにしている。同規則によると、入札または競り売りの方法により売却を実施しても適法な買受けの申出がなかった場合には、他の売却方法、たとえば随意売却の方法をとることができる。
 その結果、従来は競売期日に適法な競買の申出をする者がないときは、新たに競売期日を定めて実施し、その際には最低競売価額を1割程度引き下げることにしていたが、本法のもとではこのような取扱いはなされないことになった。本法では、入札または競り売りの期日において買受けの申出がなかったときでも、原則として最低売却価額が変更されることはない。
 買受けの申出の保証は、従来は現金と有価証券に限られており、その金額は競買申出価額の10分の1であったのが、金銭のほか銀行振出の小切手や銀行・保険会社の保証証券の提供が認められるようになり、金額は、最低売却価額の10分の2と改められた。

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 数個の差押不動産を個々に売却するよりも、一括して売却するほうが買受人に便利で値段が高くなる場合がある。たとえば、隣接して一括利用に適する一団の土地とか、土地とその地上建物です。そこで、本法は、超過競売とならないかぎり、同一買受人に買い受けさせるのが相当と認められるときは、差押債権者や債務者を異にする場合でも、一括売却ができることにしている。なお、超過競売になる場合でも債務者の同意があれば、一括売却ができる。従来は一括競売については規定がなかったが、差押債権者を異にする場合を除いて、ほぼ同様な取扱いがなされていた。
 一括売却した各不動産の権利者を異にするなどの理由により、各不動産ごとに売却代金額を定める必要がある場合には、売却代金の総額を各不動産の最低売却価額に応じて按分し、各不動産の売却代金を算出する。
 従来は、競落人が代金を納付しなかった場合には、常に再競売をしていたが、本法は、できるだけ再換価が行なわれるのを防止するために、最高価に次ぐ買受けの申出をした者が一定の要件のもとに次順位買受けの申出をすれば、再度の売却を実施しないで、売却許可決定をすることにした。
 なお、再競売の場合には前の競落人に差額負担義務を課する規定があったが、本法はこれを廃止し、そのかわり買受保証金が増額された。
 競売申立ては、原則として自由に取り下げることができるが、買受申出入を保護するために買受けの申出があった後に競売の申立てを取り下げるには、最高価買受申出人および次順位買受人の同意を得なければならない。
 二重に開始決定がされている場合には、後になされた開始決定に基づいて手続が続行されるので、買受申出人の同意を得ないで取下げができるが、続行によって売却条件に変更を生ずる場合、たとえば取下げ前には買受人に対抗できなかった用益権が取下げによって対抗できることになる場合には、買受申出人の同意を得なければならない。
 買受人が代金を納付するまでに不動産がなんらかの事由により滅失した場合には、事由のいかんにかかわらず、競売は取り消される。
 天災その他買受人の責に帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、売却決定期日前であれば、買受申出人は、売却不許可の申出をすることができ、売却許可決定後代金納付までの間であれば、買受人は売却許可決定の取消しを求めることができる。
 買受けの申出があった後に、債務者が不動産の価格を減少させ、もしくは引渡しを困難とする行為をしたとき、またはこれらの行為をするおそれがあるときは、執行裁判所は、最高価買受申出人の申立てに基づき、債務者に対して、これらの行為の禁止を命じたり、不動産の執行官保管を命じたりすることができる。
  従来は、買受人が代金を納付して所有権を取得した後に、抵当権の不存在またはすでに消滅していたことが判明したときは、買受人は所有権を取得できないと解されていた。本法は、代金納付後に抵当権の不存在または消滅が判明しても、買受人は所有権を失わないことにして、買受人の地位の安定をはかっている。
 執行裁判所は、代金の納付があった場合には、配当表に基づいて配当期日に配当を実施する。ただし、債権者が1人である場合、または2人以上であって売却代金で配当にあずかる各債権者の債権および執行費用の全部を弁済することができる場合には、売却代金の交付計算書を作成し、弁済金交付の日を定めて弁済金を債権者に交付し、剰余金を債務者に交付する。
 なお、前記の売却代金には、買受人が代金を納付しないために返還を請求できなくなった保証や、無剰余となる場合に買受人となる資格のない差押債権者が提供した保証のうち、申出額から代金の額を控除したものも加算される。
 配当表は、配当期日において出頭した債権者および債務者を審尋し、また即時に取り調べることができる書証の取調べをして作成される。配当者に不服のある債権者または債務者は、配当異議の申出をすることができるが、その後一定期間内に配当異議の訴えを提起しないと、配当異議の申立てを取り下げたものとみなされる。
 従来は、期限未到来の債権に対する配当額は供託することにしていた。本法は、その点について明文を設け、配当期日に弁済期が到来したものとみなして配当する。したがって、債権者は、利息付債権についてはその時点までの利息しか配当を受けることができず、無利息債権については、元本から未経過の期間に対応する利率による利息を控除した額の配当を受けることになる。
 配当を受けることができる債権者の範囲は次のとおりで、従来とは相当異なる。
 差押債権者、配当要求の終期まで強制競売また一般先取特権の実行としての競売の申立てをした者に限る。ただし、配当要求の終期が更新されたときは、更新前の申立債権者は配当にあずかる。
 配当要求債権者、配当要求の終期までに配当要求をした者に限る。ただし、終期が更新されたときは、更新後の終期までに配当要求をした者も配当にあずかる。なお、配当要求できる債権者は、債務名義を有する債権者、差押の登記後に登記された仮差押債権者、本法181条1項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者である。
 差押えの登記前に登記をした仮差押債権者、差押が競合している場合には、原則として最初の差押えの登記前に仮差押えの登記がなされていることを要する。この要件を満たす仮差押債権者は、配当要求をしなくても配当にあずかる。
 差押えの登記前に登記された担保権で、売却により消滅するものを有する債権者、差押えの登記前に登記されている先取特権、質権、抵当権で、売却により消滅するものを有する債権者は、配当要求をしないでも配当にあずかる。なお、差押えが競合している場合には、原則として最初の差押えの登記前に担保権の登記がされていることを要する。
 したがって、他の債権者の申立てによる競売手続において本登記をしていない抵当権者が売却代金から配当を受けることができるのは、差押え前に仮差押えの登記をしている場合か、配当要求の終期までに競売の申立てまたは配当要求をした場合です。

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