抵当権の実行による競売の申立て

 担保権の実行として不動産の競売申立てに債務名義を要しないのは、従来と変わりはありません。しかし、担保権を有することを証明する方法は限定されています。したがって、抵当権者が競売の申立てをするには、担保権の存在することを証する確定判決もしくは家事審判法15条の審判またはこれらと同一の効力を有する和解調書、調停調書などの謄本、抵当権の存在を証する公証人が作成した公正証書、抵当権設定登記がされている登記簿謄本を提出することを要し、抵当証券の所持人が競売の申立てをするには、抵当証券を提出しなければならない。単に抵当権設定仮登記をしているにすぎない者や私署証書で抵当権設定契約をしているにすぎない者は、これまでと違って競売の申立てをすることができない。そこで、登記留保の取扱いをした場合に、仮登記仮処分により抵当権設定仮登記をして競売申立てをするというこれまでのやり方はとれなくなったから、登記留保の取扱いをする場合には、抵当権設定契約を公正証書でしておかないと、競売の申立てをする必要を生じたときに支障をきたすことになる。

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 従来は、他の債権者の申立てにより強制競売または任意競売の手続が開始している不動産につき強制競売または任意競売の申立てをした場合には、後の申立事件を前の申立事件の記録に添付する手続をとり、二重に開始決定をすることはしなかった。本法は、このような場合に、二重に開始決定をし、また二重に差押えの登記をすることにしている。
 旧法の記録添付の制度のもとでは、先行の事件が取り下げられたり取り消されたりして、記録添付債権者の申立てによって事件が進行することになった場合に、記録添付債権者は、登記簿上には公示されていないため、仮登記を本登記にする申請があっても、登記簿上の利害関係人としては取り扱われない、という不都合な結果を生じていたので、これを改めたわけです。
 前の手続が取り消されたり、前の競売申立てが取り下げられた場合に、後の申立債権者のために、いままで進行してきた手続を利用して手続が続行されるのは、旧法の記録添付の場合と変わりはない。もっとも、差押えの効力を生ずる時期が、前の手続と後の手続では違う関係で、手続の一部のやり直しを必要とする場合がないわけではない。
 抵当権者が第三収得者の滌除の申出を拒絶して増価競売の請求をしたときは、その後1週間(従来は3日)以内に増価競売の申立てをしなければならない。申立てに際して提供する担保は、金銭、有価証券のほか、新たに銀行・保険会社の支払保証が加えられた。
 執行裁判所が競売申立てを適式なものと認めると、競売開始決定をして債権者のために不動産の差押えを宣言する。この開始決定は、職権で債務者に送達される。
 差押えによって債務者は処分制限の効力を受けるが、その効力発生の時期は、開始決定が債務者に送達された時です。しかし、送達前に差押えの登記が先にされたときは、登記の時に差押えの効力を生ずる。
 差押えは、債務者が通常の用法にしたがって不動産を使用し、または収益することを妨げないが、所有権の譲渡、担保権および用益権の設定は、すべて制限される。
 従来はこの処分制限の効力につき、差押債権者には対抗できないものの、その他の債権者の関係では処分制限の効力はないと解する見解が有力であった。これに反して、本法は、差押え後の処分はすべての債権者に対抗できない立場をとっている。したがって、差押えの登記後に所有者が交替しても、旧所有者に対する他の債権者は、配当要求をすることができ、差押えの登記後に抵当権の設定がされてもね抵当権者は、その差押えによる手続が進行しているかぎり配当にあずかることはできない。
 旧法は、代価より競売め費用を控除し、その残金は遅滞なくこれを受け取るべき者に交付することを要すると規定していたにすぎなかったので、任意競売手続に強制執行の配当に開する規定が準用されるかどうかについては説が分かれていた。しかし、本法は、担保権の実行としての競売にも、強制競売の規定をすべて準用することにして、この問題を立法的に解決した。
 その結果、旧法時代の執行の実務では認めなかった無担保債権者の配当要求が認められることになった。もっとも、虚偽債権による配当要求を排除するために、本法は、配当要求できる債権者を、債務名義を有する債権者、差押えの登記後に仮差押えの登記をした者、一定の文書によってその権利を証明した一般の先取特権者に限定しており、債権者であるということだけで配当要求ができるわけではない。また、配当要求をなすべき時期も限られており、開始決定と同時に定められる配当要求の終期までにしなければ、配当にあずかれない。ただし、配当要求の終期は3ヵ月ごとに更新される。
 差押え前に抵当権設定登記をした抵当権と差押え前に仮差押えの登記をしている債権者は、届出をしなくても配当を受けることができる。しかし、これらの者にも、執行裁判所に債権の届出をして手続に協力する義務があり、届出をしなかったために損害を生じたときは、損害賠償義務を課される。これは、売却代金から差押債権者に配当できる剰余が出るかどうかが早目にわかるようにして、むだな執行手続を進行させたり、進行できる執行手続を届出がないために無剰余と誤認して取り消すような事態が生ずるのを防止するためです。
 競売の目的となる不動産の現状、特にその権利関係が明らかでなければ、適正な値段で売却することができないので、本法は調査にあたる執行官や評価をする評価人の権限を強化して、十分な調査ができるようにしたほか、執行裁判所が事実調査のために利害関係人その他参考人を審尋できることとして、調査の結果と評価に対する信頼性を高めている。
 競売の目的となる不動産の現況と権利関係の調査の結果や最低売却価額が定まった経緯は、執行記録を閲覧すれば知ることができる。しかし、利害関係人以外の者が執行記録を閲覧できるのは、売却手続が行なわれる際のごく限られた時間のみで、精読する時間的余裕はない。
 そこで、本法は、不動産の現況と売却の結果買受人が引き受けることとなる質権、用益権その他留置権のような権利の存在や仮処分の執行の存在を明らかにする不動産の明細書を執行裁判所が作成し、その写しを一般人が閲覧できるよう、裁判所に備え置くことにした。
 強制競売における剰余主義の規定は、任意競売には準用されないと解されていたので、競売申立てをした後順位抵当権者に配当される見込みのない場合でも、競売手続は遂行された。しかし、本法は、強制競売における剰余主義の規定を準用しているので、無剰余の場合には換価は行なわれない。
 そこで、競売申立債権者の債権に優先する債権の見込額が最低売却価額を超えているときは、執行裁判所は、この旨を申立債権者に通知する。通知を受けた債権者が競売手続の遂行を望むならば、優先債権の額が少なくて無剰余でないことを証明するか、または優先債権の額を超える額を定めねその申出額を超える買受けの申出がないときは自分がその申出額で不動産を買い受ける旨を申し出て、その申出額に相当する保証を提供しなければならない。なお、差押債権者が買受人になれない場合には、申出額と買受申出額の差額を負担することを申し出て、申出額と最低売却価額の差額に相当する保証を提供しなければならない。
 従来は、差押債権者が差し押えた不動産の価値を保全するための保全処分を認める規定がなかった。本法は、債務者が、不動産の価格を著しく減少する行為をなし、またはそのおそれのある行為をするときは、差押債権者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせ、または立てさせないで、債務者に対し価格を減少させる行為の禁止命令を発することができるとし、債務者がこの命令に違反したときは、債務者の占有を奪い執行官に保管させる命令を発することができることにしている。なお、買受人が代金を納付した後は、このような命令は買受人が裁判所に求めることになる。
 借地上の建物に対する抵当権を実行し競売申立てをした場合に、競売手続中に債務者の賃料不払いにより建物の敷地の賃貸借契約が解除されると、建物を買い受けても土地の使用権がないため、建物としての価値がなくなり、スクラップとしての価値しかないことになる。そこで、債務者が賃料の支払を怠っているときは、賃料の代払いをして賃貸借契約が解除されるのを防止する必要がある。しかし、競売手続外で代払いしても執行費用とは認められない。根抵当権を設定している場合には、極度額に余裕があれば、被担保債権として優先弁済を受けることは必ずしも不可能ではないが、現在一般に銀行が使用している根抵当権設定契約証書の被担保債権の範囲に賃料代払いによる債権が含まれるかどうかは疑問です。
 本法は、これを立法的に解決して、建物に対する競売開始決定後に、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、差押債権者に未払いの賃料の支払を許可することができるものとし、許可を得て支払った賃料や許可申立ての費用は、共益費用として優先弁済を受けることができることにした。

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