競売の配当等の手続き

 執行官が金銭を差押えたとき、差押物の換価によりその売得金の交付を受けたとき、又は手形等の提示によりその支払を受けたときには、その差押金銭、売得金又は手形等の支払金について弁済金の交付又は配当を実施しなければならない。
 民事執行法は原則として平等主義を採っているので、債権者が競合するときは、売得金等は債権額に比例して平等配分をする。しかし債権者の中には優先権を有する者もあるので、この場合は民法、商法、特別法の規定に従って配当することになる。倒産した会社や商店などの財産を差押え換価した場合などには、実務では雇人の給料債権について配当要求の申立てが提出されることが多い。給料債権は、一般の先取特権の一種として、雇人が受けるべき最後の六ヵ月分について執行費用に次いで他の債権者に先立って弁済を受けることができるので、この点の配慮が必要です。

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 配当等を受けるべき債権者は、差押債権者、事件併合の手続が行われ、配当要求の効力が生じた動産執行事件又は動産仮差押執行事件の申立債権者。
 差押金銭については、執行官がその差押えをするまで、売得金については、執行官がその交付を受けるまで又は仮差押動産の売却をした場合に供託された売得金については、動産執行が続行されるまで、手形等の支払金については、執行官がその支払を受けるまでに法一三三条の規定による文書を提出して配当要求をした先取特権者及び質権者と、同様に配当要求をした農業用動産の抵当権者。滞納処分又はその例により交付要求をした官署、配当要求の終期までに交付要求をした租税債権者です。
 期限来到来の確定期限付債権は、配当等については、弁済期が到来したものとみなされるから、債権を有する債権者は、配当等を受けることができるが、その額は、元本及びこれに対する弁済金の交付又は配当の日までの利息並びに費用に限られる。その債権が無利息であるときは、弁済金の交付又は配当の日から期限までの法定利率による中間利息を控除して弁済金又は配当の額を計算する。
 債権者が一人である場合又は債権者が二人以上であっても、差押金銭、売得金又は手形金等の支払金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行官は、債権者に弁済金を交付し、剰余金があれば債務者に交付する。
 弁済金を交付する場合には、債権者の債権の利息は交付の日までの分を請求できる。弁済金の交付手続は適宜の方法で行うことができる。したがって、差押金銭については、差押えの現場に債権者が出願している場合には直ちに交付することができる。この場合には債権者本人又は受領権限ある代理人から受領書を徴した上交付すべきです。
 売得金については、売却の実施の終了時に債権者が一人でも出頭している場合には、その場で弁済金を交付することができるし、交付すべき債権者がその場にいない場合には、後日適当な時期に地裁執行官室に債権者の出頭を求め交付することになる。
 この現場における弁済金の交付については、金銭差押時又は執行官が売得金の交付を受けるまでは、配当要求も許されるし、執行停止もあり得るので、執行官は、それらの事実を確認した上で交付手続をすべきである。この点について東京地裁執行官室では、執行官が、執行宮室に執行停止書面、二重執行の申立て又は配当要求の申立てがあったかどうかを確かめた上で交付手続をする取扱いである。
 執行官は、弁済金の交付については、配当計算書に準じた計算書を作成してその交付手続を明らかにするのがよい。
 債権者が二人以上であって売得金等で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができない場合でも、全債権者の協議が調えば執行官限りで売得金等の配当をしてよい。
 したがって、執行官は、金銭を差押えたとき、売得金の交付を受けたとき又は手形等について支払を受けたときにおいて、各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができないときは、配当要求の終期が到来後二週間以内の日を配当協議の日と定め、各債権者に対しその日時及び場所を通知するとともに、配当協議の日までに配当計算書を作成しておかなければならない。
 配当協議の日を通知すべき各債権者は、差押債権者及び配当要求をした債権者です。仮差押債権者や執行停止中の債権者等も協議に加わることができるので、通知すべきです。債務者には通知する必要はない。この通知は適宜の方法によることができる。
 通知を受けた債権者は、配当協議の日に出頭して協議をすることが期待されるが、協議の方法については、何も規定されていないので適宜の方法により協議すればよい。なお執行官は、配当協議の日の通知とともに、執行官作成の配当計算書の写しを各債権者に送付し、それによって配当協議の日に意見を求める方法を採れば、迅速に協議が進行することになろう。
 この方法によれば、配当協議の日に出頭しない債権者には、配当計算書に対する異議の有無を書面で申出るべき旨を催告する取扱いが可能であり、使宜であろう。実務ではこの方法によって取扱われている。
 配当協議の日は、配当要求の終期後二週間以内の日であればよいから、例えば、売却の実施が終了した時に、全債権者が出頭しているときは、執行官は、直ちに配当協議の日を開く旨を告げ、その場で配当計算書を作成して配当協議の目を開くことも考えられる。
 配当協議の日において売得金等の配当について、全債権者間において執行官があらかじめ作成した配当計算書記載のとおり協議が調ったとき又は異議がないときは、債権者間に利害の対立がないわけであるから、執行官は、その配当計算書に従って配当を行う。
 債権者間に執行官の作成した配当計算書の記載内容と異なる協議が調ったときは、執行官は、その協議に従って配当計算書を改めた上配当を実施することになる。
 これにより配当を行う場合には、債権者の債権の利息は配当協議の日までの分を請求できる。執行官が売得金等の受領後に法三九条一項各号の文書の提出があった場合における配当の実施については、弁済金の交付について述べたところと同様です。
 債権者間に配当の協議が調わないときは、執行官は、その事情を執行裁判所に届出なければならない。この事情届出は、書面によってすべきです。
 事情届出書には次に掲げる事項を記載しなければならない。
 事件の表示、差押債権者及び債務者の氏名又は名称、配当に充てるべき金銭の額、売得金、差押金銭、手形等の支払金等を記載する。執行費用の額、執行官が受ける手数料及び執行官が支払又は償還を受ける費用等事情届出をするまでに判明している執行費用を種目別に記載する。配当協議が調わない旨及びその事情の要旨。
 配当協議が不調になったこと、配当計算書に異議を唱えた者の主張の要旨、不出頭債権者等執行裁判所において配当を実施する場合に参考となる事項を明らかにする。
 執行官は、執行裁判所に事情届を提出する場合には、保管金となっている差押金銭等を執行裁判所に引継ぐため、保管票に所要事項の記入及び所定の押印をし、これを取扱主任官に送付する。
 執行裁判所が配当を実施するには事件の記録を必要とするので、事情届には、事件の記録を添付することになる。事情届が提出された場合には、執行裁判所は直ちに立件の上配当手続を行わなければならない。
 執行官が配当等を実施する場合において、配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、執行官は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
 その債権が停止条件付又は不確定期限付であるとき、仮差押債権者の債権であるとき、強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本が提出されているとき、その債権に係る先取特権又は質権の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき、この事情届出は、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。
 事件の表示、差押債権者及び債務者の氏名又は名称、供託の事由及び供託した金額、法一四一条一項の各号に該当する事由及び供託した金額を記載することになる。
 事情届には、供託言正本及び事件の記録を添付しなければならない。事情届が提出された場合には、執行裁判所は、供託の事由が消滅したときに配当等の手続を実施しなければならない。供託金の払渡しのための支払委託の手続は執行裁判所が行う。
 配当等を受けるべき債権者の債権が、取立訴訟の判決で供託の方法により支払を命じられたものであるときは、執行官は、その判決に基づいて動産執行の結果、その債権者に対する配当等の順に相当する金銭は供託しなければならない。この場合、明文の規定はないが、執行官は、執行裁判所に対し供託した旨の連絡をすべきものと解する。供託金の払渡しは、執行裁判所の支払委託に基づいて行われる。
 債権者が配当等の受領のために出頭しなかった場合には、執行官は、その債権者に対する配当等の順に相当する金銭を供託しなければならない。
 この供託は、一種の弁済供託であるから、供託金の払渡しは、被供託者(債権者)が供託所に対する還付請求によって行われる。したがって、執行裁判所への事情届を要しない。
 債務者が剰余金の受領のため出頭しないときは、執行官は、民法四九四条の弁済供託の規定により、剰余金の順に相当する金銭を供託することができる。
 執行裁判所は、執行官から配当について債権者間に協議が調わないとして事情届出があったとき、執行停止文書等の提出により配当等の順に相当する金銭を供託し、その事情届出があった場合には、配当等の手続を行わなければならない。執行裁判所は、この事情届出があった場合は、配当事件として朗の符号を付して立件する。
 この配当手続については、不動産競売手続における配当手続の配当期日等の指定、計算書の提出の催告、配当計算書の作成等、売却代金の交付等の手続、執行力のある債務名義の正本の交付等の規定が準用される。この場合において、規則五九条一項中「不動産の代金が納付された」とあり、及び同条二項中「代金が納付された」とあるのは、「配当等を実施すべきこととなった」と読み替えるものとする。

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