競り売りの方法により売却すべき動産の見分け

 執行官は、競り売り期日又はその期日前に、売却すべき動産を一般の見分に供しなければならない。旧法下では競売の際に実物を示さなければならないとしていたが、これは買受希望者に買受けの申出をするか否かを決めさせるものであるから、そうであるなら競り売り期日又は期日前のいずれかの機会に買受希望者の見分に供すれば、その目的を達することができる。差押物によっては、売却実施の際に見分に供することが困難な物があるから、競り売り期日前に見分させて、売却を実施する際には実物を示さなくても足りることとしたのです。
 これによって差押動産を差押えの現場や、保管させた倉庫内に置いたまま裁判所内の売却場で売却することが可能となったのです。期日前の見分に適する動産としては、山林内で保管している伐採木、工場内にすえ付けられた大型機械等がこれに該当する。散逸しやすい動産や、他の動産と識別しにくい動産等は、売却後に紛争を生じやすいので、期日前見分の方法を採ることは適当でないと解されている。
 保管者が保管中の動産を、競り売り期日前に一般の見分に供するには保管者の承諾が必要です。この場合執行官は、保管者に協力を要請するとともに、保管者が債務者である場合などには、その利益保護に十分配慮すべきです。保管者が期目前の見分を拒絶したときは、執行官は、当該差押動産を保管者から引き上げて自ら保管した上見分の機会を設けるほかない。

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 執行官は、売却すべき動産を、競り売り期日前に一般の見分に供しようとするときは、見分に供する日時及び場所を定めた上、あらかじめ公告しなければならない。
 見分期日を定めた場合において、競り売り期日が債権者の申請又は買受人がないため職権で期日を変更したときは、その競り売り期日のたびに見分期日を定めなければならない。
 売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供する場合において、その動産が債務者の占有する建物内にあるときは、執行官は、見分に立ち会わなければならない。見分する者と債務者との間に紛争が生じる危険が大きいので、執行官に立会義務を課しているものです。
 当該動産の保管者から執行官の立会いを求める申出があったときも、執行官は立会わなければならない。
 債務者の占有する建物以外の場所における事前見分の場合においては執行官の立会義務はないが、見分の場所において紛争の生じる可能性、差押え動産の指示、特定の必要性などを考慮して、執行官の裁量により見分に立ち会うことは差し支えない。
 執行官の立会いは、参参入の有無にかかわらず競り売り期日の公告に示された終了時刻まで継続しなければならない。
 執行官は、売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供したとき、及び事前見分に立ち会ったときは、その旨を記録上明らかにしなければならない。執行官の裁量により事前見分に立ち会ったときも、その旨を記録上明らかにするのが相当です。
 執行官は、競り売り期日に、競り売り場所において競り売りすべき物を差押調書と比照して点検し、異常がなければ一般公衆に対し、事前見分に供していないときは、売却物件の見分をさせ、売却条件を告げ売却物件を呼上げて買受けの申出を催告し、買受けの申出の額を競り上げさせる方法により競り売りを行う。
 買受けの申出をした者は、より高額の買受けの申出があるまで、自己の申出の額に拘束される。
 執行官は、競り売り期日に、人の住居である競り売りの場所において、競り売りを実施する場合に債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに出会わないときは、市町村の職員、警察官その他証人として相当と認められる者を立ち会わせなければならない。
 執行官は、売却場所の秩序を維持するため、次の権限を有する。
 他人の買受けの中出を妨げ、不当に価額を引き下げる目的で連合する等の行為によって売却の適正な実施を妨げる行為をした者又はこれらの行為をさせた者。他の民事執行事件の売却不許可決定の中で、これに掲げるような行為をしたと認定されて不許可決定を受け、その決定の確定の日から二年を経過しない者。民事執行の手続における売却に関し、公務執行妨害、封印破棄、強制執行免脱、競売入札妨害、談合、収賄、贈賄の罪を犯し、有罪として刑に処せられ、その裁判の確定の日から二年を経過しない者に対しては、売却の場所に入ることを制限し、若しくはその場所から退場させ、又は買受けの申出を許さないことができる。
 また、執行官は、必要があると認めるときは、売却場所に参集した者に対し身分に関する証明を求めることができる。民事執行法六五条の規定の趣旨は、動産執行手続にも適用されるからで、身分証明としては、一般的には運転免許証、その他各種の身分証明書、名刺等が考えられる。
 執行官は、その所属する地方裁判所構内において競り売りを実施する場合に、その売却場の秩序を維持するため、必要があると認めるときは、執行裁判所に対し援助を求めることができる。援助を求められた執行裁判所は、裁判所の警備員その他の裁判所職員の出動、又は、民事執行法一八条一項により官庁又は公署、とりわけ警察に対し援助請求ができる。
 裁判所以外で行う売却に際し抵抗を受けるときは、執行官は、その抵抗を排除するために警察上の援助を求めることができる。
 買受申出人が法人である場合には、代表者の資格証明書を提出しなければならない。
 代理人によって買受けがされる場合には、代理権を証する文書を提出することになる。この代理人の資格には制限はない。
 共同して買受けの申出をしようとする者は、あらかじめ書面をもって、買受けの申出をしようとする者の関係及び持分割合を明らかにして執行官の許可を受けなければならない。「あらかじめ」とは、買受けの申出をする前であれば、競り売り期日の開始後でもよい。許可は物件ごとに個別的に受けなければならない。一括売却が相当であるとされる物件の場合は、全部の物件について一括して許可を受ければよい。
 許可するか否かは、執行官の裁量に委ねられているが、夫婦、親子、兄弟のような親族関係にある者その他相当の事由があり、公正な競争を妨げるおそれのない場合には、許可が与えられるであろう。
 債務者は、買受けの申出をすることができない。資力のない債務者の妻子は債務者と同視される。債務者が買受けることができるなら、その買受代金をもって債権者に任意弁済をすべきであるとの考え方によるものです。
 買受人が代金を支払わなかったため更に動産を売却するときは、前の買受人は、買受けの申出をすることができない。
 買受けの許可を受けながら代金を支払わないような不誠実な買受人に再度の買受申出を許すべきでないことは当然です。
 執行官は、法令の規定によりその取得が制限されている動産については、買受けの申出をすることができる者を所定の資格を有する者に制限をすることができる。執行官は、制限をした場合には、所定の資格を有する者以外の者が、買受けの申出をしてもこれを許してはならない。制限の内容は、売却条件として競り売り期日の公告の公告事項であるが、執行官は、買受けの申出の催告に先立ってこれを告げるべきである。
 買受けの申出については、執行官は、その申出額のうち最高のものを三回呼上げた後、より高額の申出がなければその申出をした者の氏名又は名称、買受けの申出の額及びその者に買受けを許可する旨を告げなければならない。
 買受ける資格を有しない者の計算において買受けの申出をした場合は、執行官は、民事執行法七一条三号を類推適用して買受けを不許可にすべきです。
 買受けの申出願が、評価額に比し、あるいは社会通念に照らして不相当に低額であると認められるときは、執行官は、買受けを許さないことができる。しかし、動産を競り売りの方法により売却する場合には、最低売却価額は設けられていないから、どの程度の願であれば不相当であるとして規定を適用すべきかは一概に言えず、具体的事案によって考慮すべきです。一回の売却で申出願が不相当であっても、売却を何回か試み、また、各種の売却方法を活用しても同じ程度の願の申出であるときは、不相当の願ではないとして買受けを許しても差し支えない場合がある。売却価額は、執行官又は評価人の定めた評価額によるものであるから、買受人がないからといってこれをみだりに逓減すべきではないが、何回も売却を試みても買受けの申出がないときは、差押物を点検し評価し麻した上で売却することも考えられる。
 競り売り期日において直ちに代金が支払われる場合には、執行官は、支払われた売得金の合計額が、各債権者の債権及び執行費用の合計額を超えた時点で、他の動産については超過差押えとして法一二八条二項により差押えを取消さなければならない。
 代金支払の日を定めた場合において数個の動産を売却する場合には、執行官は、差押物を順次売却し、その売得金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができることになったときは、執行官は、他の動産(超過分)の競り売りを留保しなければならない。すなわち、執行官は、買受けを許可した動産の売得金の合計額が各債権者の債権及び執行費用の全部を超えた時点で他の動産の競り売りを留保することになる。
 この場合代金支払の日に買受けを許可された動産の代金が全部支払われたときは、競り売りが留保された動産については超過差押えとなるから、執行官は、法一二八条二項によりすみやかに差押えを取消さなければならない。代金が支払われないときは、留保動産は更に売却することとなる。
 執行官が買受けの申出額を呼上げ中又は買受けを許す旨の告知前に、債務者が債務の履行を申出た場合には、執行官は、競り売り手続か一時中止すべきで、履行の提供があったときは、それを有効と認めるべきです。
 有価証券のうち取引所の相場のあるものは、売却日の相場以上の価額で売却しなければならないから、執行官は、買受けの申出の額が、価額を下回る場合には買受けを許してはならない。
 取引所の相場のある有価証券は、通常競り売り、又は入札によって売却しても、相場を超える額で買手がつくことは期待できないから、ほとんどの場合は、証券業者に売却を委託する方法により売却することになろう。この場合売却の日の相場以下では売却してはならないとして売却価額の下限が制限されていることであるから、委託売却の方法を選択するについて執行裁判所の許可を受ける必要はない。
 証券業者に売却を委託したときは、売却手数料及び有価証券取引税を差引かれたものが売得金となる。
 これらの有価証券特に譲渡人と譲受人の共同申請による名義の書換えをしないと譲渡を対抗できない記名社債のような有価証券を売却するにあたっては、その有価証券の流通性を確保しなければ、買受人が損害を受け、ひいては安くしか買受けの申出をしないおそれもあるので、執行官は、買受人が代金を支払ったときは、その有価証券を買受人に引渡すときに債務者に代わって名義書換えに必要な行為をすることができる。もっとも、この場合売主である債務者が名義書換えに協力すれば問題はない。
 執行官の名義書換えに必要な行為としては、「買受人何某に議渡したから、民事執行法第一三八条の規定により、債務者何某に代わり、名義書換えを請求する」と記載した書面に、執行官の職を表示し、執行官が署名又は記名押印して買受人に交付する。

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