差押動産の競り売り

 民事執行法は、差押えた動産の売却の方法として入札又は競り売りのほか特別売却、委託売却によることができるとしていますが、民事執行規則においては、動産執行の場合は、通常多数の物件を同時に売却することが多いこと、最低売却価額の制度が設けられなかったこと、旧法当時からの動産執行の運用の実情を考慮して、入札より競り売りを原則的なものとし、民事執行規則一一四条から一一九条迄の規定が設けられたものです。
 執行官は、競り売りの方法により動産を売却するときは、競り売り期日を関く日時及び場所を定めなければならない。執行官は動産の差押え、売却の実施についての主体であることから、競り売り期日の指定は執行官のみの権限とされ、執行裁判所はこれに関与することはできない。

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 競り売り期日は、やむを得ない事由がある場合を除き、差押えの日から一週間以上一月以内の日としなければならない。一週間以上の日としなければならないとする趣旨は、なるべく多くの買受希望者を募るためには、一定の期間をおいて公告等の方法をとる必要があること、債務者の弁済や、執行手続に対する債務者又は第三者の各種の異議申立の機会を与えるためです。また、差押えの日から一月以内の日としなければならないとする趣旨は、執行手続を迅速に処理するにあります。
 東京地裁執行官室では、差押時に定める売却期日は原則として二週間後とし、債務者不在により執行を実施した事件については、少なくとも三週間以後としている。
 競り売り期日を差押えの日から一週間以内としなければならないやむを得ない事由としては、例えば、差押物が腐敗し易い生鮮食品のような場合とか、差押物を長く貯蔵すれば多額の貯蔵のための費用を要するとか、差押物の価額が短期間に著しく減少するおそれがある場合などが考えられる。差押物の貯蔵の費用が多額を要するばかりでなく、債権者が貯蔵のため必要な費用を予納しない場合もこれに該当する。一月以上の日とすべき場合は、例えば、評価人の評価に長期間を要するとか、差押物が特殊な動産であるために買受希望者を募るのに相当の期間を要する場合などが考えられる。
 競り売り期日を開く場所は、特別の制限はないので執行官の裁量により裁判所内の売却場その他適宜の場所を定めることができる。実務は、差押物が家具什器とか機械類のような場合は、旧法下と同様差押えの場所、すなわち債務者方を売却場とするいわゆる軒下競売が大多数を占めている。
 民事執行法は、一般市民が買受けの申出がし易い場所で、誰もが買い易い方法で売却されることを意図したはずですが、依然として従来どおり軒下競売が一般であり、しかも道具屋か、債権者が安価に買受けるというのが大多数を占めている。
 執行官は、競り売り期日を職務執行区域外の場所で開く場合は、差押債権者等の利害に影響を及ぼすことが大きいから、執行裁判所の許可を受けなければならないとされている。
 職務執行区域外の場所で競り売り期日を開く例としては、差押物が職務執行区域外へ移動した場合ですが、通常はこのようなときは、執行官が差押物を取戻した上職務執行区域内において売却することになるが、差押物の運搬に要する費用、期間、差押物の所在場所等を考慮して、そのまま職務執行区域外で売却することが適当であると判断した場合には、執行裁判所の許可を受けて、その場所で売却することができる。
 競り売り期日の変更(延期)は、執行官の専権に属する。いかなる場合にこれを認めるかは、執行官の裁量によることになるのであって、差押債権者、債務者等には申立権はなく、また変更をするについてこれらの者の同意を要しない。債権者、債務者共謀の上しばしば期日を変更するようなことがあると手続の迅速処理を阻むことになりかねないからです。
 執行官は、やむを得ない事由がある場合のほかは、いったん指定した期日の変更をすべきではない。しかし、実際は債務者において金策の目途がついたとか、当事者間で示談進行中であるということもあるので、このような事情は広くやむを得ない事由に該当するものと解し、東京地裁執行官室では当事者から期日変更の申請があれば、不動産の強制競売手続における売却期日の変更についての取扱いを参考として、民事執行法三九条三項の趣旨を参酌の上、変更は五回に限り、通じて六ヵ月を超えることができないという運用がなされている。このことは、公示書及び売却期日通知書に記載することとしている。
 やむを得ない事由があると認め、競り売り期日を変更した場合には、変更後の期日は前の競り売り期日から一月以内とすべきである。また、買受申出人がないため、更に競り売り期日を指定するときも、民事執行規則一一四条一項を類推して新たな競り売り期日は、やかを得ない事由がある場合を除き、前の競り売り期日から一月以内とするのが相当です。
 執行官は、競り売り期日を定めたときは、次に掲げる事項を公告しなければならない。
 事件の表示、売却すべき動産の表示、競り売り期日を開く日時及び場所、法令の規定によりその取得が制限されている動産について買受けの申出をすることができる者の資格を制限したときは、その制限の内容、例えば差押物が銃砲刀剣類、毒薬、劇薬等の場合は、買受けの申出をすることができる者の資格に制限がある。この場合制限することができるのは、執行裁判所ではなく、執行官です。
 売却すべき動産を競り売り期日前に一般の見分に供するときは、その日時及び場所。この事前見分においては、見分の開始時刻のみならず終了時刻をも定めて、その双方を公告に記載する必要がある。終了時刻を定めて記載しないと、執行官の立会いの終了時刻が判らず不都合であるからです。
 代金支払の日を定めたときは、買受けの申出の保証の額及び提供の方法並びに代金支払の日。差押物の売却価額が高額となると見込まれるときは、競り売り期日から一週間以内の日を代金支払の日と定めることができる。この場合は、買受申出者は差押物の評価額の一〇分の二に相当する額の保証を提供しなければならない。
 売却すべき動産が貴金属又はその加工品であるときは、その貴金属の地金としての価額地金としての価額は不動産競売における最低売却価額に当たる。
 公告は、公告事項を記載した書面を競り売りを行う執行官所属の地方裁判所の掲示板に掲示して公示する。
 動産執行の場合、競り売りの公告を掲示した時と、競り売り期日との間に一定期間をおくことが定められなかったのは、動産の性質から差押えの直後に売却する必要がある場合もあり、画一的に一定の期間をおくこととするより、差押物の種類等により、執行官の裁量によって適宜の期間をおく方が相当であると考えられてのことです。東京地裁執行官室では、通常の場合差押時に定める売却期日は二週間後とすることになっているので、差押えの日の翌日には売却期日の公告をしている。
 差押えの日から競り売り期日までの期間が一週間未満の場合、特に差押えの当日又はその翌日に競り売り期日を開く場合でも、競り売りの公告は必要であり、これを省略することは許されない。
 競り売り期日を変更した場合には、前記書式例の公告の競り売り期日欄に変更した日時を記載した上改めて公告をする。
 執行官は、競り売り期日を定めたときは、各債権者、及び債務者に対し、競り売り期日を開く日時及び場所を通知しなければならない。
 この通知は適宜の方法によることができる。口頭で告知してもよいし、普通郵便、はがきで知らせてもよい。通知を受けるべき者の所在が明らかでないとき、又はその者が外国にいるときは、通知をする必要はない。
 執行官は通知した旨及びその方法、通知をすることを要しない場合にはモの事由を記録上明らかにしなければならない。
 配当要求債権者に対する競り売り期日の通知の費用は、共益費用となる。
 競り売り期日を変更した場合には、執行官は、同様各債権者及び債務者に通知する。

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