差押え動産の配当要求

 ある債権者のために、既に差押えが開始された後でも一定の債権者は債務者の同一財産について配当要求をすることによって執行手続に参加し、自己の債権の満足を受けることができる。
 動産執行においては配当要求ができるのは、先取特権者と、動産執行に際し質物を任意提出した質権者に限られる。これらの者に配当要求を認めないと、権利行使の途が事実上ふさがれてしまうとの配慮によるものです。
 先取特権者には、差押えに係る債務者の特定動産の先取特権者と一般の先取特権者がある。前者の例としては、不動産の賃貸借、動産の売買、荷物の運輸、種苗の供給等の債権者であり、後者の例としては共益費用、雇人の給料、葬式費用、日用品供給の債権者です。先取特権は、債務者の財産から他の債権者に優先してその債権の弁済を受けることができる。

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 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者(物上保証人)から受取った物を、債務の弁済を受けるまで占有し、弁済のない場合にはその物により他の債権者に優先して弁済を受けることができる。
 農業用動産の抵当権者は、民法三三〇条の第一順位の先取特権者と同一の権利を有するから、動産の執行について配当要求をすることができる。
 租税債権による交付要求も、配当要求の終期までにすることができる。この場合租税債権は一般債権に優先して弁済を受けられる。
 差押動産に対する譲渡担保権者又は所有権留保売買の場合の売主は、配当要求をすることは認められていないから、この者等は第三者異議の訴を提起して、その差押えの取消しを求めるほかない。
 配当要求をする者は、執行官に対し、その権利を証する文書を提出してしなければならない。
 「その権利を証する文書」とは、先取特権者については、例えば、不動産賃貸の先取特権の場合は、不動産賃貸借契約書、動産売買の先取特権の場合は動産売買契約書、質権者については質権設定契約書、質物の保管証、雇人の給料債権を有する一般先取特権者の場合は未払給料の証明書又は申立人自身の作成した証明文書のごときです。
 執行官は、これらの権利の存否について実質的審査権を有しないから、形式的にその権利を証する文書であることが認められる書面が提出されている限り、配当要求を認めなければならない。たとえ配当要求債権者と債務者との間に通謀虚偽表示に基づく疑いがあるとしても、それは配当異議によって解決するほかない。
 このような文書を提出して配当要求をしたにもかかわらず、執行官が配当要求を認めないときは、配当要求債権者は、執行異議を申立てることができる。
 債務名義を有する債権者及び仮差押債権者の配当要求は認められたいから、これらの者は二重執行の申立てをした上配当等にあずかるほかない。これは配当要求があっても差押えの範囲は広がらないことと、差押えについては超過差押えが禁止されているため、単純な配当要求を認めると執行に参加している債権者が不利益を受けることになるからです。
 配当要求は重要な申立てであり、かつ、数額等に誤りが生じないために書面でしなければならない。
 配当要求書には、債権の原因及び額を記載しなければならない。債権には、債権の元本のほか、利息その他の附帯の債権が含まれる。この元本及び利息は各別にその額を記載する。債権の原因の記載は、債権を特定できる程度で足りる。
 動産先取特権又は質権に基づく配当要求は、当該権利の目的物である動産を特定してすべきであるから、その目的物を記載する。
 一般先取特権は、債務者の一般財産を権利の目的とするのであるから、差押物を記載する必要はないが、差押えは執行場所を単位として行われ、配当等の手続は執行場所ごとに行われることもあるので、執行場所が数個ある場合には、どの場所における執行について配当要求をするかを明らかにするため、配当要求書に執行場所を記載するようにする。もっとも例えば、甲債権者がA場所につき差押えをし、乙債権者がA、Bの両場所につき差押えをして事件が併合されているときは、甲の申立事件に対して配当要求をすると記載すれば、執行場所の記載がなくてもA場所の差押物の売得金のみについての配当要求と解されるし、乙の申立事件について配当要求をすると記載されていれば、A場所とB場所における差押物の売得金等について配当要求をしているものと解することができる。
 配当要求書には、配当要求債権者の権利を証する文書を添付する。そのほか差押債権者及び債務者に対する配当要求の通知書に添付するため、差押債権者、債務者の数に応じた配当要求書の副本を提出する。
 配当要求債権者は、執行官に対し、配当要求の通知書送付に要する費用を納めなくてはならない。
 配当要求は、差押物の売却による売得金については執行官がその売得金の交付を受けるときまで、法一三七条又は一七七条三項の規定により供託された売得金については、動産執行が続行されることとなるまで、差押金銭については執行官がその金銭を差押える時まで、手形等の支払金については執行官がその支払を受ける時までにしなければならない。
 配当要求があったときは、執行官は、差押債権者及び債務者に対しその旨を通知しなければならない。
 動産執行における配当要求債権者は、一般債権者に優先する債権を有する者であるから、差押債権者にその旨を告知して、他の執行を行うかどうかの機会を与え、債務者には不服申立の機会を与えるために行われるのです。
 租税債権の徴収権者による交付要求があった場合も、その旨を差押債権者及び債務者に通知すべきです。

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