債権者の競合と二重差押えの禁止

 差押えの競合は、同一の財産について多数の債権者の差押え及びその効果が重複する場合です。同一債務者に対し共同して動産執行の申立てをした多数債権者のために同時に同一の財産に対し差押えをする場合、差押え実施前に同一の債務者に対し、同一の差押えの場所について他の債権者から更に動産執行の申立てがあった場合、この場合には規定はないが、民事執行法ー二五条二項を類推して両事件を併合して共同差押えの方法により執行する。
 A債権者のため、債務者の動産が差押えられた後、執行力のある債務名義の正本を有するB債権者から同一の債務者に対する執行の申立てに基づいて執行がなされる場合です。
 執行官は、差押えがされた動産に対しては更に差押えることはできないとされている。
 旧法は仮差押えの執行がされた動産を重ねて差押えることは妨げられたいとしていたが、民事執行法は、仮差押えの執行の方法も本執行と何ら変りはないということから、仮差押えの執行がされている動産についても重ねて差押えができず、この場合は事件併合の手続によるものとしている。
 動産執行による差押えは、不動産執行や、債権執行による差押えと異なり、執行官による目的物の現実の占有取得という事実上の処分によって行われるから、実力支配を二重に行うべきでないということと、平等主義を採る我が国の法制のもとでは、差押えの先着順によって債権の優劣を決するのは妥当ではなく、また、手続の複雑化を避ける趣旨から原則として二重差押えを禁止しているのです。

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 競合する債権者が、既になされた執行手続に参加する方法としては、動産執行の申立てによる事件の併合の手続がある。
 すなわち差押え又は仮差押えの執行がされている場所について、同一の債務者に対し、更に動産執行の申立てがあった場合は、執行官は、先行の執行事件で差押えられた動産の存在を現認し、まだ差押え又は仮差押えの執行をしていない動産があるときはこれを差押え、差押えるべき動産がないときはその旨を明らかにして、その動産執行事件と先行の動産執行事件とを併合しなければならない。
 事件の併合をするには、差押え又は仮差押えの執行を受けた債務者に対し重ねて動産執行の申立てがあったというだけでは足りず、先行の差押え又は仮差押えの執行と同じ差押えの場所について更に動産執行の申立てがあった場合に限られる。
 例えば債権者Aの申立てにより甲場所について差押えを実施した後、債権者Bが同じく甲場所について動産執行の申立てをした場合には事件の併合をしなければならない。
 この場合B事件を併合するため執行官が甲場所に赴いたところ、債務者は既に転居している場合でも、執行官は、A事件とB事件との併合手続をすべきです。事件の併合は執行の場所を単位としてなすべきで、債務者の所在場所は問題とならないからです。
 同一債務者に対する執行の申立てであっても、差押えの場所を異にする場合、例えば債権者Aは、甲場所を差押えの場所とし、債権者Bは、乙場所を差押えの場所として執行の申立てがされたとすれば、事件の併合をすることかく、各別に売却及び配当の手続を進めることになる。
 民事執行法一二五条二項前段の「差押えの場所」とは、差押えを実施した場所をいうのであって、差押物が現存する場所をいうものではないと解される。ところで先行の動産執行事件により差押えがされた差押物が、その後他に移動している場合に、後行の動産執行の申立債権者が旧住所地で差押えた物について配当を受けようとするときは、旧住所地を差押えるべき動産の所在場所として執行の申立てをすべきです。この場合執行官は、旧住所地を差押場所として差押えがされていることは債務者カード等により知り得るから、転居先における旧住所地での差押物の存在を確認の上後行の執行事件については差押えるべき動産がないことを明らかにして事件の併合手続を行うべきです。
 この場合新住所地が執行官の職務執行区域外であるときは、差押物を取戻すか、執行裁判所の許可を得て職務執行区域外で売却するか、いずれかの措置を採ることになる。債務者の転居先が不明であるとき、転居先が遠隔地で差押物の取戻しが困難であるときは、執行不能として処理するほかない。
 この後行の債権者が、債務者の新住所に存在する旧住所地での差押物以外の物を差押えようとするときは、新住所地を差押えるべき物の所在場所として執行の申立てをする。この場合は、まだ差押えられていなかった動産は事件併合の対象とならないから、別事件として手続を進めることになる。
 この見解に対しては、先行の差押えによる差押物が現に存する場所について更に動産執行の申立てがあったわけであるから事件併合の要件を充たしていると解し、併合手続を行うことができるとする見解がある。
 動産執行において差押えがされた物につき、その執行の場所について動産質権者又は動産先取替権者が債務者の差押えを承諾する旨の文書を提出して動産競売の申立てがされた場合には、その動産競売の目的物である特定の動産に関して事件の併合の手続を行うことになる。後行の動産競売の申立てが一般先取特権によるものであるときには、先行の動産執行の差押えの効力は動産競売によって差押えた物にも及ぶことになるので、事件の併合手続は法一二五条三項前段の規定によることになる。
 事件の併合をする場合には、執行官は、先行の動産執行事件又は仮差押執行事件の差押調書又は仮差押調書に基づいて、まだ差押え又は仮差押えの執行をしていない動産の有無を調査し、執行をしていない動産があればこれを差押えて差押調書を作成し、差押え又は仮差押えの執行をすべき動産がないときは、差押えるべき動産がないことを記載した調書を作成した上、執行記録に「○○場所について○○事件と○○事件を併合する」と表示して事件併合の旨を明らかにする。
 それ故に執行官は差押えに着手する前に、当該債務者が既に差押え又は仮差押えの執行を受けているかどうかを確かめる必要がある。このために各執行官室に差押債務者の名簿を備え付け、また、執行官は、勤務庁以外の裁判所の管轄区域内で差押えをしたときは、その旨を当該裁判所に勤務する執行官に通知する等の取扱いをすることが望ましい。
 事件が併合されたときは、後行の動産執行事件において差押えられた動産は、併合の時に、先行の動産執行事件において差押えられたものとみなし、後行の動産執行の申立ては、先行の動産執行事件に対し配当要求の効力を生ずる。
 先行の差押債権者が動産執行の申立てを取下げたとき、又はその申立てに係る手続が停止され、若しくは取消されたときは、先行の事件において差押えられた動産は、併合の時に径行の事件のために差押えられたものとみなされる。
 また、仮差押執行事件と動産執行事件とが併合されたときは、動産執行事件の方で手続が進行するので、先行の仮差押えの執行がされた動産は、併合の時に後行の動産執行事件において差押えられたものとみなされ、仮差押執行事件の申立ては配当要求の効力を生ずる。差押債権者が動産執行の申立てを取下げたとき、又はその申立てに係る手続が取消されたときは、動産執行事件において差押えられた動産は、併合の時に、仮差押執行事件において仮差押えの執行がされたものとみなされる。
 執行官は、既に差押え又は仮差押えの執行がされている動産について更に動産執行の申立てがあった場合は、事件を併合しなければならないが、この場合は後行の動産執行事件又は先行の仮差押執行事件の申立ては、配当要求の効力を生じることになる。動産の差押えについては超過執行禁止の原則が適用されるため、配当要求があると、先行差押債権者、仮差押債権者は執行債権の全額の弁済を受けられなくなるので、先行差押債権者、仮差押債権者は、債権確保のため適宜の推薦が採れるようにするため、また、債務者には、執行事件に対し不服を申立てる機会を与えるため、執行官は、債務者及び先行事件の差押債権者又は仮差押債権者、後行事件の差押債権者に対して事件を併合したことを通知しなければならない。
 二個の動産執行事件を併合すべき場合において、先に差押えをした執行官と、後に動産執行の申立てを受けた執行官とがその所属する地方裁判所を異にするときは、後に動産執行の申立てを受けた執行官は、差押えをした動産の差押調書又は差押えるべき動産がないときは、そのことを記載した調書を作成した後、先に差押えをした執行官に事件を移送しなければならない。
 仮差押執行事件と動産執行事件とを併合すべき場合において、仮差押えの執行をした執行官と、動産執行の申立てを受けた執行官とがその所属する地方裁判所を異にしているときは、進行していく動産執行事件を取扱う執行官は、事件を併合するために仮差押えの執行をした執行官に対し、事件を移送すべき旨を求めなければならない。
 事件の移送を求められた執行官は、遅滞なく移送を求めた執行官に当該事件を移送しなければならない。
 事件の併合をするのは、差押え又は仮差押えの執行を受けた債務者に対し、その差押え又は仮差押えの同一の執行の場所について更に動産執行の申立てがあった場合に限られるから、以上の移送の問題が生じるのは、数個の動産の所在する場所が二つの地方裁判所の管轄区域にまたがっている場合において、二つの地方裁判所に所属する執行官がそれぞれ差押え又は仮差押えの執行をした場合に限られる。
 同一地方裁判所の中の他の庁に勤務する執行官相互間においても以上に準じて取扱うことになる。

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