換価性のない動産の差押えの禁止

 動産執行は、債務者の動産を差押えてこれを換価し、その売得金をもって債権の弁済に充てることを目的とする手続ですが、従前の動産執行の実態は、本来の趣旨を逸脱し、債務者に対して債権の任意弁済を求めるための間接強制的な手段として利用されることが少なくなかったのです。例えば、債権者は換価価値のない家財道具までも差押えを求めて、その後直ちに売却を行うことを希望せず、指定された売却期日の延期、変更を繰り返し求め、その間に債務者から債権の分割弁済を受けるなどして、動産執行はあたかもそのための手段として利用されていたといっても過言ではなかったのです。このような実態は、制度本来の趣旨からして決して好ましいことではなく、債務者にとっては必要な限度を超える苛酷な執行となるので許さるべきではない。
 そこで民事執行法は、執行官は、差押時において換価性がないことが明らかである動産は差押えることはできないとし、換価の可能性があるものとして差押えても、その後競り売り、入札、又は特別売却、委託売却等の方法によって売却を実施しても買受けの申出がないときは、その差押物は換価性のないものとみなし、執行官は差押えを取消すことができることとした。
 この場合差押物について三回程度売却を実施しても売却ができない場合、又は差押えから六ヵ月を経過しても売却できないことは、この取消しの規定の解釈、運用の一つの基準となるでしょう。なお、買受けの申出がないことにより、差押えの取消しをする場合には、執行官は、差押債権者に対し最終的に買受けの意思の有無の確認を得た上で取消しをするのも運用の一方法でしょう。
 差押取消処分に不服ある者は、執行異議の申立てができる。

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 動産差押えを取消す場合は、法三九条一項一号から六号までに掲げる文書が提出されたとき、差押禁止動産の範囲の変更について、執行裁判所から取消しを命じられた裁判の正本は、法三九条一項六号の文書であるから本条項により差押えを取消すことになる。差押え後に執行官が当該執行債権の全部の弁済を受領したとき。差押え後に超過差押えであることが明らかになったとき。差押物の一部の動産を売却した代金で執行債権及び執行費用の全部の弁済ができたときは、売却を留保している動産については本条項により差押えを取消すことになる。差押え後に剰余を生ずる見込みがなくなったとき。差押物について売却の見込みがないとき。手数料及び費用の概算額を予納しないため申立てを却下したとき。執行申立ての取下げがあったときです。
 執行官は、差押えを取消したときは、差押えを取消した旨及びその理由を差押債権者に通知しかければならない。
 また、債務者その他差押動産を受取る権利を有する者に対し、差押えを取消す旨を通知するとともに、その動産の所在する場所においてこれを引渡す方法によって行う。
 動産の引渡しは、取消しの通知とともに差押えの取消しの要件であるから、引渡しが完了しなければ、差押えの取消しの効果は発生しない。
 しかし、動産を受取る権利を有する者が、その動産を保管しているときは、その者に対し、差押えを取消す旨を通知すれば足りる。通知だけで簡易の引渡しとなるからです。この場合は通知のみによって差押えの取消しの効力が発生するから、差押えの取消しの有無及びその時期を明確にするために、この通知は書面で行うのが相当である。なお、念のため通知の中で差押えの表示を除去してもよい旨を付言することは親切な取扱いでしょう。
 執行官は、動産の差押えを取消した場合において、取消しに係る動産を受取る権利を有する者が債務者以外の者であるときは、債務者が差押えの取消しがされたことを知ることができないような場合に限って、債務者に対し、差押えを取消した旨を通知しなければならない。
 差押えを取消した動産の引渡しができないときは、執行官は、執行裁判所の許可を受けて、動産執行の手続によりこれを売却することができる。売却は、競り売り又は入札その他動産執行について定められた売却の方法によって行うことになる。右により動産を売却したときは、執行官は、その売得金、又は引渡しができない差押金銭から、動産を受取る権利を有する者が受領遅滞に陥った後の保管に要した費用、及び売却に要した費用を控除した残余を供託しなければならない。この供託は、一種の弁済供託であるから、払渡しは複供託者の供託所に対する還付請求によって行われる。
 本条項により動産を売却したときは、執行官は、民事執行規則一三条、一一九条により調書を作成しなければならない。

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