超過差押えの禁止

 執行官は、動産を差押えるにあたっては、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えて差押えてはならない。したがって執行官は、差押物を評価しながら差押えを行うべきです。
 民事執行法は、平等主義を採用していることから、超過差押えの禁止の原則を採ることは一見矛盾するようにも思われるが、動産執行については優先債権者以外の債権者の配当要求を認めず、これらの債権者は債務名義を得て二重執行の申立てをしなければ配当にあずかれないこととしているので、超過差押禁止の原則を維持することによって債務者との利害の調整を図っているのです。
 差押物の評価は第一時的には執行官が行う。この場合は執行官の自由な判断によるが、債権者その他の関係人の意見を聞いてこれを参酌して決めることができる。差押物が高価な動産で評価人による評価を要するものであるときも、差押時に執行官が一応評価し、その後に評価人に評価させなければならない。差押物が手形、小切手である場合には、原則としてその額面をもって評価額とする。
 同一債務者に対する差押えの場合に、執行の場所が数個あるときは、各場所併せて執行債権及び執行費用の額にみっるまでしか差押えをすることはできない。

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 連帯債務者数名(連帯保証人を合む)に対し執行する場合には、各債務者ごとに執行債権及び執行費用の額に連するまで差押えをすることが許される。しかし、全債務者を通じて執行債権額を超えて換価することはできない。実務では連帯債務者数名に対し同時に執行することは稀れです。例えば債権者Aが連帯債務者甲、乙、丙に対し金五〇万円の執行債権をもって執行の申立てをした場合には、甲に対し執行をし、その差押物の評価が三〇万円であったとしたら、次に乙に対し執行債権二〇万円の範囲で執行をし、競り売り期日に評価額で売却されて執行債権の満足が得られるとすれば丙に対しては執行をしない取扱いである。差押物の選択は執行官の自由な判断によるから、執行の順序は丙からなされる場合もあり得る。連帯債務者甲、乙、丙に対する執行の場合、債務者ごとに別件とする関係で担当執行官が異なれば執行官は互いに連絡をとることによって執行債権額を超えて換価することのないようにしている。
 執行官がいったん差押えをした後に超過差押えが明らかになったときは、執行官は速やかに超過部分の差押えを取消さなければならない。超過差押えが明らかになった場合とは、差押時の評価が誤っていたような場合、差押え後一部任意弁済がされた場合、併合事件の一方が申立てを取下げた場合、が考えられる。
 執行官が執行債権額を超えて差押えをした場合は、債務者は執行異議により超過差押えの取消しを求めることができる。また、超過差押えになっていないのに差押えが取消された場合には、差押債権者は執行異議の申立てをしてその是正を求めることができる。この場合差押えの取消しの部分はまだ執行は継続しているとみるべきだからです。
 執行異議の申立てをしても、取消処分の効力は停止しないので、差押えの解除を止める必要があれば、手続の停止の裁判を得なければならない。取消処分が認められると、その部分は換価が行われなくなり、債権者としては損失を披ることもあるので、超過差押えかどうか上級裁判所にも判断をしてもらうのが相当であるため、この執行異議の申立てを却下する裁判に対しては執行抗告をすることができるとしているのです。
 差押えるべき動産の売得金で、執行手続の費用を弁済して剰余を生ずる見込みがないときは、執行官は差押えをしてはならない。差押物を売却しても債権者の債権回収の見込みがないときは、手続を進めても無益であるのでこれを防止する趣旨です。
 この規定は、執行停止中であるか否かを問わず適用される。
 剰余を生ずる見込みがないというのは、動産執行の開始の際に判断される場合だけでなく、差押え後に差押物を換価しても剰余を生ずる見込みがない場合を合むと解すべきです。すなわち、差押え後に配当要求や交付要求があったため、差押物の換価代金から配当要求債権者や滞納税金等が優先するため差押債権者の債権の弁済にあてられる見込みがないときは、手続を進めることは無益であるから、執行官は、剰余の見込みがないと判明した時点で速やかに差押えを取消さなければならない。
 この場合差押えを取消すにあたり執行官は事前に差押債権者に通知する必要はないが、配当要求の通知をする際に併せて無剰余となる旨及び追加差押えの意思の有無を確認するのが相当です。
 配当要求等がない場合でも、差押え後に差押物が損傷又は差押物の価額が低落した場合や、執行費用が増大したため換価しても剰余を生ずる見込みがない場合も、同様差押えを取り消さなければならない。
 執行官の差押え取消処分に対し不服があれば、差押債権者は執行裁判所に対し執行異議の申立てができる。
 取消処分に対し執行異議の申立てをしても取消しの手続は停止されないので、差押債権者はこれに対し執行停止の裁判を求めることができる。執行異議の申立てを却下する裁判に対しては執行抗告をすることができる。
 差押債権者は、差押え後配当要求があったため又は差押物の価額が低落等により、債権の満足が得られなくなった場合には、債権の満足に必要な限度で追加差押えができる。この場合差押債権者は既になされた差押えが取消される前に、先の差押手続内で追加差押えの申立てをすれば足りるので、執行文の再度付与を受けて新たな差押えの申立てをする必要はない。

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