差押の効力

 適法な差押えによって債務者は執行の目的物である動産についての処分権能を失い、その処分権能は国家が取得する。差押物の処分権能を失うといっても、差押物の保管が債務者に任せられた場合は、封印その他の方法により事実上使用が不可能とされた場合を除き、これを通常の用法に従って使用することは妨げられない。
 差押えは、差押物に対する債務者の処分を禁止する効力を有する。したがって債務者に保管を委ねた差押物を債務者が任意に処分してもその処分は執行手続上は無効です。ただし、処分の相手方である第三者が即時取得の要件を具備していれば権利取得を対抗できると解される。
 差押えの効力は、差押物から生ずる天然の産出物、例えば差押えられた家畜が子を産んだ場合、あるいは差押えられた鶏が卵を産んだような場合にも及ぶことになる。

スポンサーリンク

 差押えによって差押物の占有は、執行官に帰属する。封印票や標目票などを施して債務者や第三者にこれを保管させた場合でも、その占有は執行官に帰属するのです。ここにいう執行官の占有とは、私法上の占有を意味するのか、公法上の占有なのかについて見解が分れている。兼子・執行法によると前者の見解のもとに、差押えによって目的物の直接占有は執行官に帰し、封印などを施して債務者又は第三者の保管に任せた場合でも、債務者らは執行官の占有機関として目的物を所持しているものであると解すべきで、執行官の直接占有に基づき間接占有を有するに止まるとしている。これと見解を同じくする裁判例もある。これに対し判例は後者の見解のもとに、強制執行手続において執行官の差押えによる動産の占有は元来公法上の占有であって私法上の占有ではないから、その動産に対する私法上の占有は依然債務者にあり、差押えによって消滅することはないとしている。執行官が差押物を取上げ自から保管した場合債務者の私法上の占有に影響がないといえるかどうか問題はあるが、この場合も債務者の事実上の支配はあると解し、指図による引渡の方法で譲渡できるものと解される。
 このように差押えによって生ずる法律関係がどうなるかということは、差押え中といえども債務者又は第三者が差押物件について時効取得するかどうかに関係があるのです。
 差押えが時効中断の事由となることは民法一四七条に規定するところですが、この時効中断の効力は、判例、通説によれば執行申立時に生ずるとされている。しかし、債務者の所在不明のため執行不能に終った場合には、時効中断の効力は生じない。ただし執行官が差押手続に着手すれば、差押える物がないため執行不能に終っても時効中断の効力は失われない。したがって執行申立時に時効中断の効力が生ずるといっても、執行に着手する必要があるので、執行着手があった場合にだけ執行申立時に遡って中断の効力が生ずると解すべきです。
 債務者等に保管させていた差押物を第三者が占有することとなったときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てによりその第三者に対し差押物を執行官に引渡すべき旨を命ずることができる。
 旧法下では差押物につき自救行為として侵害を排除できる場合を除き、強制的には取戻すことはできないものと解されていたが、差押物の占有が第三者に移っただけでは差押えの効力は消滅しかいから、執行官は、差押えた動産を引き続き占有、保管する職責を有するので、民事執行法は差押えの効力を高め、手続の安定を図ることが望ましいということで、簡易な手続によって見せられた執行裁判所の引渡命令により差押物の取戻しができるものとしたのです。
 もっとも執行官は、引渡命令が発せられる前に差押物を占有するに至った第三者を説得してその物を返還させる等取戻すための適切な措置を講ずるべきです。
 引渡命令を発するための要件は、差押物を第三者が占有するという事実のみで足りるから、申立書にはそのことのみを記載すればよいのであって、第三者がどのような経過で占有を取得したかとか、占有権限など実体的な権利関係を有するか否かなどの記載は必要でない。
 申立権者は差押債権者に限る。執行官から差押債権者に対し、差押物を第三者が占有している旨を通知したが、差押債権者において引渡命令の申立てをしない場合には、執行官は、引渡命令の執行以外に差押物を取戻す手段を尽くしたりえ、これを取戻すことができないと判断される場合には、差押物の滅失の場合に準じて執行不能として事件を処理するほかない。
 この引渡命令は、執行における簡易な手続であり、第三者が差押物を占有することにより種々の権利関係が生じることも起こり得るので、長期間が過ぎた後の申立ては相当でないということから、債権者が、差押物を第三者が占有していることを知った目から一週間以内に中立てなければならないとされている。
 執行裁判所は、申立てが不適法であれば却下する。申立てを相当と認めたときは、次の様式による引渡命令を発する。
 執行官が差押物を自ら保管中第三者にその占有を奪われた場合や、差押物を保管中の第三者が他の者に占有を奪われ、若しくは他の者に任意に占有を移転した場合又は第三者が差押物を善意取得した場合などにおいても、執行裁判所は、そのような実体関係を顧慮せずに引渡命令を発することができる。
 第三者が差押物を善意取得した等取戻しを妨げる実体上の権利を取得していることは、この引渡命令に対してでなく、すなわち引渡請求権の存否を問題にするのではなく、それは本体の動産執行に対し第三者異議の訴えを提起して、この実体上の権利を主張し、占有の回復を求めることになる。また、第三者は動産執行に対し執行異議を申立、その差押えの取消しを求めることもできる。
 この引渡命令に対しては執行抗告をすることができる。執行抗告においては、実体上の異議事由は主張できない。
 引渡命令は債務名義類似のものであるから、この命令を受領した差押債権者は、その命令正本に基づいて差押物の所在する場所を管轄する地方裁判所所属の執行官に対して引渡命令の執行を申立てなければならない。
 執行官は、差押債権者の申立により民事執行法一六九条の動産の引渡し執行に準じて差押物に対する第三者の占有を解いてこれを取上げ占有を取得する。この執行は、引渡命令が相手方に送達される前であってもできる。この引渡命令は、法五五条の保全的債務名義に関する規定が準用されているから、執行にあたり執行文の付与を要しない。命令が申立人に告知された日から二週間を経過したときは執行することができない。この場合は法一二七条二項により再度の申立ても許されない。この執行に要した費用は共益費用となる。
 差押動産の引渡執行は、債務名義に基づく本来の民事執行の実施には当たらない。なぜならこの引渡執行は、動産執行の派生的執行手続にすぎず、執行官の差押えという状態を回復させるためになされるものであって、他人に新たな占有を与えるものではないからである。この意味でこの引渡命令は、債務名義類似なものであり、又は仮処分命令に準じるものと解されている。したがって差押動産引渡命令に対しては請求異議の訴えは認められない。
 引渡命令の執行をした執行官は、当該差押物の差押えをした執行官とその所属する地方裁判所を異にするときは、差押えをした執行官に対し、引渡命令に基づき第三者から差押物の取上げ執行をした旨を通知しなければならない。
 この通知を受けた執行官は、差押物を引取らなければならない。ただし、差押物の引取りのために不相応な費用を要すると認めるときは、引渡命令の執行をした執行官に対して、当該動産執行事件を移送することができる。移送をするか否かは、執行官の判断に委ねられているが、実務の取扱いとしては、事前に差押債権者の意見を聴くのが相当でしょう。
 執行官は、差押物の引渡命令を執行した場合には、調書を作成しなければならない。

動産に対する強制執行/ 動産の差押手続き/ 動産執行の申立による差押/ 差押物の保管/ 差押えの通知/ 差押物の点検/ 差押の効力/ 差押えの制限/ 超過差押えの禁止/ 換価性のない動産の差押えの禁止/ 債権者の競合と二重差押えの禁止/ 差押え動産の配当要求/ 差押物の評価/ 差押物の売却/ 差押動産の競り売り/ 競り売りの方法により売却すべき動産の見分け/ 売却動産の引渡し/ 動産執行における入札/ 競り売り又は入札以外での売却/ 競売の配当等の手続き/ 動産執行申立ての取下げ/ 担保権の実行としての動産競売/ 動産競売事件の併合/

お金を借りる!

船舶に対する強制執行/ 自動車に対する強制執行/ 動産に対する強制執行/ 債権に対する強制執行/