差押物の点検

 執行官は、債務者、差押債権者又は第三者に差押物を保管させた場合において、差押債権者又は債務者の申出があるとき、その他必要があると認めるときは、職権をもって差押物の保管の状況を点検することができる。差押物の保管状況を把握することは執行官の職務行為に属するからです。
 倉荷証券を差押えた場合に、証券に表示された寄託物の品目、数量について点検の申出があっても執行官はこれについて点検をしたりする権限、義務はない。証券が表象する寄託物返還請求権の目的である動産は執行の目的物ではないからです。
 執行官が点検の必要があると認めるときとは、保管状況が不適当であることが判明したときとか、差押物について更に評価を要するとか、保管期間が著しく長期に亘るときなどがこれに該るものと考える。その他実務では、必要に応じ随時点検をしている。
 旧法下では配当要求債権者も点検の申出ができるとされていたが、他人の手続を利用するにすぎない配当要求債権者には、その必要性が乏しいということから、点検の申出は認めないこととされた。しかし、配当要求債権者から点検の申出があったときは、その理由を参考として、点検の必要が認められれば執行官は職権をもって点検すべきです。

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 点検の結果保管状況が不適当であることが判明したときは、執行官は、保管場所を変更するとか、その他必要な措置を講じなければならない。引続きその者に保管を任せることが不適当であると認められるときは、執行官自らの保管に移し、又は別の保管人に保管させることができる。別の保管人に保管させた場合には、点検調書と別に新保管者との関係で保管調書を作成する。なお、執行官は、点検により差押物が焼失又は滅失していることを確認した場合には、執行事件を終結する。
 執行官は、差押物の点検をしたときは差押物に全く異状がなくても点検調書を作成しなければならない。差押物に不足又は損傷があるときには、不足する差押物又は差押物の損傷の程度、これに対する執行官が採った措置を記載した点検調書を作成すべきです。
 執行官は、差押物に不足又は損傷があるときは保管者でない差押債権者及び債務者に対しその旨を通知しなければならない。差押物の不足又は損傷は執行手続の進行上重要な影響を及ぼすことになるばかりでなく、差押債権者及び債務者等の利益を害することになるからです。
 差押物に不足又は損傷があることが判明した場合に、執行官が採るべきその他の措置については、差押物の返還を受けた場合の措置について述べたところと同じです。
 執行官は、手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券で、その権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求を要するものを差押えた場合には、保管者としての保存行為としてその期間の始期が到来したときは債務者に代わって引受け又は支払のための提示をしなければならない。これによって支払が得られたときは、支払金は配当に充てられることになる。もし差押えた手形等がその要件に白地部分があるときは、執行官には白地補充権はないので、執行官は、白地補充権者である債務者に対し、期限を定めて白地部分を補充するように催告しなければならない。手形等が未完成のままでは、提示しても引受けや支払を得ることは期待できないし、手形等の売却についても完成されたものの方が容易になし得るからである。ただしこの未完成部分のうち振出日欄のみが白地の手形等については、銀行は支払に応ずる取扱いのようであり、満期の記載がない手形は一覧払のものと看倣される。
 催告は、普通郵便、はがき、口頭、事情によっては電話等適宜の方法によってすることができる。催告をしたときは、その旨及びその方法を記録上明らかにしておくべきです。催告を受けるべき債務者の所在が明らかでないとき、又はその者が外国にあるときは、催告すべき事項を公告してする。公告の方法による催告は、公告をした日から一週間を経過した時にその効力を生ずる。
 催告を受けた債務者は、白地部分を補充する法律上の義務はないから、補充をしないことが考えられる。執行官にも前述のように白地部分を補充する権限はないから、債務者が催告に応じないときは、執行官は白地のままで売却手続を進めるほかない。
 白地のままで売却したときは、買受人が白地補充権を承継取得することになる。もっとも債務者は、催告期間を徒過した後でも売却までは白地部分を補充することができる。
 差押債権者は、債権者代位権に基づいて白地補充権を代位行使することができるとする考え方もある。白地が補充されないまま、引受け又は支払のための提示期間の始期が到来した場合には、執行官は、白地のままで提示しても引受け又は支払が得られる見込みがある場合を除いては提示の義務を免れると解されている。この場合には提示期間が経過してしまうので、売却の見込みはなくなるし、他に差押物がないような場合には無剰余にもなるので、執行官は職権をもって差押えを取消すことになろう。
 このように白地手形等を差押えた場合には、白地部分の補充が困難な問題が生ずるので、他に適当な差押え得る動産があれば、白地手形等は差押えない取扱いが相当です。
 もしやむを得ず白地手形等を差押える場合には、できる限り執行の場所で債務者に補充させるようにすべきでしょう。
 債務者が白地の補充をしたときは、執行官は、その旨及び補充の内容を記録上明らかにしなければならない。白地手形等を差押えたことは差押調書に記載することになるが、補充後の手形について後に補充されたかどうか判断できないことになるからです。

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