差押物の保管

 執行官は、動産を差押えたときは、原則として自ら保管する。特に金銭や、貴金属、カメラ、時計又は有価証券など紛失の危険の多い物、その他運搬容易な差押物は執行官自身において保管するのが相当です。
 執行官は、差押物については、周到な注意をもって保管しなければならない。差押物について腐敗や虫害その他の毀損による価値の減少の防止に努めるべきで、例えば、差押えた家畜に飼料を与えるとか、有価証券の場合は、失権防止のために必要な処置をとらなければならない。
 金銭を差押えた場合に、これを受取るべき者に直ちに交付できない事由があるときは、執行官は、その保管のためこれを所属の地方裁判所に提出しなければならない。
 執行官は、相当と認めるときは、差押物を債務者、差押債権者又は第三者に保管させることができるとされているので、実務の実際は金鉄、貴金属、カメラ、時計、有価証券等を除いては、差押物のほとんどは債務者の保管に委ねられている。

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 執行官は、相当であると認めるときは、差押物をそれまで占有していた債務者、債権者又は物の提出を拒まなかった第三者に保管させることができる。債務者が執行の場所に居合せなかった場合でも、不在の債務者に保管させることは差し支えない。
 差押物を差押時の状態で維持すれば動産執行の目的は達せられるから、執行官の裁量により債務者等に保管させることにしたものです。保管させることが相当であると認められる場合とは、差押債権者の承諾がある場合とか、執行官自身において保管することが場所的、時間的に困難である場合とか、差押物の性質、形態からして運搬すること自体が著しく困難である場合や、運搬に多大の損傷又は危険を伴う場合、運搬自体は物理的には困難ではなくても、その運搬の費用が差押物の価額に比較して高額である場合とか、保管させても執行逸脱の危険性の少ない物であるときなどをいうのです。債務者等に保管させるについては、執行官のこのような相当性の判断の下になされるのであるから、その者等の承諾を得る必要はない。
 執行官は、自己の裁量により差押物をそれまでの占有者でない差押債権者又は第三者に保管させることができる。しかし債権者又は提出を拒まなかった第三者の占有していた動産を差押えた場合に、これを債務者に保管させることは認められていない。
 執行官は、差押物の保管に特殊な設備や技能を要する場合に、職務執行区域内で適当な保管者を見いだすことが困難である場合などのように特に必要があるときは、所属の地方裁判所の管轄区域外で差押物を保管させることができる。
 執行官は、差押物を債務者、差押債権者又は第三者に保管させるときは、これらの者に対し差押物の処分、差押えの表示の損壊その他の行為に対する法律上の制裁を告げなければならない。
 債務者等に保管を任せる場合でも、差押物の保管責任は執行官にあり、その選任監督については執行官に責任がある。また保管者である債務者等は法律上当然の義務として善良な管理者の注意をもって差押物を保管しなければならない。
 差押物の品質、性状等により、その保管のため特別の処分を必要とし、そのために費用を要するときは、債権者に予納させた上で執行し、費用はモの予納金から支出すべきです。この費用を要する場合とは、例えば差押えた物の腐敗、毀損を防止する場合とか、高価な盆栽で手入を要するとか、差押家畜その他の生物を第三者に保管させてその飼料代や管理費等の支出を要するが如きです。
 鶏を差押えた場合には、鶏の産んだ卵にも差押えの効力が及ぶが、他方差押え中の飼料の問題があるので実際は債権者に卵に対する分は差押えを解放させて、債務者の処分にまかせ、その代り債務者が無償で鶏を飼育する方法が考えられる。債権者が数名あるときは、その費用は執行債権の割合に応じて各債権者に予納させることになる。
 執行官は、差押物の従前の占有者である債務者、差押債権者、第三者に差押物を保管させた場合に、保管者が保管に関する定めに違反したとき、保管状況が不適当であるとき、保管者が差押物に不足又は損傷を生じさせたとき、換価のため必要があるとき等執行官が自ら保管する必要があると認めたときは、保管者から差押物を強制的に取上げ自ら保管することができる。
 執行官が占有保管中の差押物を債務者が特出した場合には、同様差押物を強制的に取上げることができる。
 差押物の従前の占参看でない差押債権者又は第三者に保管させた場合に、この各事由が生じた場合には、執行官は、これらの者から差押物の返還を求めて自ら保管することになる。規則一〇四条一項の従前の占有者による保管は任意の契約に基づく保管と解されるからです。
 執行官が差押物を取戻す必要がある場合で、差押物が執行官の所属地方裁判所の管轄区域外に所在するときには、執行官は、その管轄区域外においても職務を行うことができる。この差押物を取戻す必要がある場合とは、前述のように差押物が第三者の手に渡った場合においてその返還を説得するとき、執行官が占有する差押物を債務者が特出した場合、執行官が保管者に保管させた差押物を自ら保管する場合等が考えられる。
 差押物を債務者等に保管させる場合には、執行官は、差押物件封印票により差押物に封印をし、封印するのに適しない物にっいては差押物件標目票を貼り、これらの方法によることが困難な場合には、その他の方法により、その物が差押物である旨、差押えの年月日及び執行官の職、氏名を表示しておかなければならない。
 なお、封印票等を破棄し又は無効にした者は、刑罰に処せられることのある旨も併せて表示することは旧法時と同様です。
 差押えの表示は特に困難な事情がないかぎり、なるべく各差押物ごとにすべきです。呉服類のようなものは風呂敷に包むとか、繩をかけて封印するとか、木材、石炭などはまわりに繩でも張って差押えの表示をしたらよい。目的物によっては荷札のようなもので表示することも考えられる。在庫商品、原材料、製品等多数の動産の巣合物か一括して差押える場合には、差押物はその種類、所在場所、量的範囲により特定して、個別に差押えの表示ができない場合には、差押物の所在する倉庫に公示書を貼付する方法が考えられる。
 ルームエアコンの差押えの場合は室内機、室外機ともに差押えの表示をするのが適当です。
 牛、馬、羊、豚、鶏などを差押えた場合には、種類別に数の確認に努め、その差押物の特殊性に応じて差押えの表示を工夫してなすべきで、例えば標目票を貼り付けた木札などを首につけ、写真を撮っておくとか、公示書に毛色、年令、性別を記載するとか、ペンキ、刻印などで特定する方法が考えられる。それが困難なとき、例えば豚や鶏などのように数の多いものについては、豚舎、鶏舎を特定して、モの豚舎、鶏舎内での認定可能な範囲において種類、数等を表示してするのが相当です。
 商店の店舗内の多数の陳列商品を差押える場合に、現状のまま差押え、物件ごとに差押えの表示をせず債務者保管として差押えの表示は余り目立たない個所に貼付する取扱いは相当でない。物件ごとに表示しないと例えば、酒やかん詰類、洋品、雑貨類などは、それを売払って後へ同品質のものを補充しておけばわからないことがある。このような流通する商品はこのようなことが現実にはあり得ることはやむを得ないともいえるが、是認できない。このような場合には、第三者をして保管させるとか、箱に収納して封印の上債務者に保管させることが望ましい。
 差押えの表示は、当該物件が差押えの目的物であることを明らかにし、一般取引の安全を保護し、第三者に不測の損害を被らしめない目的を有するから、差押えを明白にすることは差押えの効力発生要件であって、この表示を欠いた場合には差押えは無効です。したがって外観上容易に認識できる程度に表示すべきです。例えば差押物である机の下裏側に公示書を貼付するとか、家屋内の勤産の差押えについて押入の開戸の裏側に公示書を貼付したものは差押えを明白にしたものとはいえない。しかし、差押え後、この表示が執行官の意思に反して損壊されたり、自然に脱落しても、差押えの効力には影響がない。もっとも、差押物に対しても善意取得は妨げられないから、差押えの表示が脱落した場合等において、差押えの事実につき善意、かつ、無過失な第三者が差押物の譲渡を受けてその所有権を取得したときは、差押えの効力は消滅する。執行官は差押えの表示の損壊又は脱落を発見したときは、速やかにその修復の措置をとらなければならない。
 執行官は、差押物を従前の占有者である債務者、債権者、物の提出を拒まなかった第三者に保管させる場合において、相当であると認めるときは、差押物の使用を許可することができる。
 使用の許可をしたときは、そのことを差押えの表示中に明らかにしなければならない。
 差押物を従前の占有者でない差押債権者又は第三者に保管させる場合には、それらの保管者には差押物を使用させることは認められていない。
 このように債務者その他の者に保管させた場合あるいは使用させたものについて、保管方法が悪いときや、保管者が差押物に不足又は損傷を生じさせたとき、換価のため必要があるとき等には、執行官は、使用許可を取消し、あるいは自ら保管することができる。

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