動産執行の申立による差押

 動産執行の申立てがあったときは、やむを得ない事情がある場合を除き、原則として申立てがあった日から一週間以内の日を執行を開始する日時と定め、その日時を申立人に通知しなければならない。
 いったん定めた執行開始の日時を変更し、新たに執行を開始する日時を定める場合も準じて取扱うべきです。なお、変更後の日時は、やむを得ない場合を除き、日時を変更する日から一週間以内の日としなければならない。
 この通知は、申立人が通知を要しない旨を申し出た場合を除き、適宜の方法により申立人に通知しなければならない。
 申立人(債権者)又はその代理人は、債務者が拒絶しない限り、執行官の債務者に対する執行処分に立会うことができるので、その日時を申立人に通知することとしているのです。

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 旧法時には執行官は、執行をする際、債務者に出会ったときは、執行に着手する前に任意弁済を促すべき旨の規定が設けられていたが、執行官規則にはこのような規定は設けられなかった。しかし、執行官が債務者に対し執行の無駄を省くためにも執行前に任意弁済の催告をすることを否定されるものではない。ただ、その催告は必要的なものではなく、催告をするか否かは執行官の裁量に委ねられており、債務者が催告をしても応じそうもないときは直ちに差押えをして差支えない。
 催告をした場合でもその旨を調書に記載する必要はない。債務者が執行債権及び執行費用について任意の弁済の提供があったときは、執行官は、差押債権者のためにこれを受領することができる。任意弁済は、執行の場所に臨んだときとは限らないので、債務者が裁判所の執行官室に出頭して弁済の提供があった場合も執行官はこれを受領しなければならない。
 執行債権の一部の任意弁済の受領もできるのであって、分割弁済による任意弁済金については、執行官は、受領の都度充当関係を計算して残債権領を明らかにしてやるのがよい。
 執行官は、弁済として受領した金員は、速やかに差押債権者に引渡さなければならない。事件の併合により差押債権者が競合している場合には、執行官は、債務者に対し誰に対する弁済であるかを確かめて金員を受領すべきで、もし債務者が債権者を特定しなかった場合には、各債権者の債権額に案分して交付することになる。
 受領した金員を直ちに債権者に引渡すことのできない事由があるときは、執行官は、その保管のためこれを所属の地方裁判所に提出しなければならない。保管金の受入れ及びその払い出しの事務の取扱いは、昭五五・八・二八民三第八九三号最高裁通達のとおりです。
 動産に対する執行は、対象物が債務者の占有にあることを要する。差押えは債務者所有の動産に対してなされることが本来の目的に適合するのであるが、債務者が動産を占有、使用している場合には、占有に基づく権利推定の法理により、その物件は一応その所有に属するものとの推定を受けるものであるから、執行官は、その物が真実債務者の所有に属するか否かの実体上の判断を加える必要はなく、債務者の占有する物を差押えることができる。したがって執行官は、債務者又は第三者から、当該物件は第三者の所有に属する旨の中出、あるいは証拠資料が提出されたとしても、その動産の外観状態、あるいは所在場所、その他執行当時における諸状況によって第三者の所有物であると認めるに足りる客観的合理性がある場合を除いて、その物が債務者の所有に属するものとして差押えをして差し支えない。ただ、第三者の所有物であると主張された場合は、執行官としては他に差押えるべき物件を求めるか、債権者の意見を求めて処理するのが相当である。もし他に差押えるべき物件がない場合には債務者の占有の有無を基準として差押えるべきです。
 ここに占有というのは、民法にいう占有とは異なり、その物が、外観上その人の事実的支配のもとにあると認められる状態、いわゆる所持を意味し、自己のためにする意思をもって物を所持することをいうのではない。
 この事実的支配の状態は継続的なものであることを要しない。例えば、債務者が在監中であるとか、家族と別居中あるいは出稼ぎ又は家出をした場合であっても、債務者はその所有財産に対して占有しているものであって、留守家族はこれを保管しているにすぎないのであるから、債務者の占有する財産として差押えることができる。法二一三条一項のような規定が設けられているのは、執行機関が何か債務者に帰属している財産であるかを知るには、いちいち実体関係に入って調査しなければならず、さすれば執行の迅遠は期せられたいから、所持という外観的支配状態に従って差押えをすることにしたのです。
 所持といっても必ずしも直接身体に携えていなくても、例えば旅行中でも家財道具を所持しているといえるし、雇人に持たせている場合でも所持しているといえる。道に物理的な支配があっても、所持が認められない場合がある。例えば店員は店の品物を所持しているとはいえないというが如きです。
 占有(所持)があるか否かの判新基準については極めて困難な問題があるが、具体的事実について判断すべきである。建物内にある動産は、通常は建物の使用者の占有下にあるものとみられるが、数人の家族が同一建物に同居している場合は、動産の性質、外観から特定の者のみの占有にあることが明白であるときには、その者のみの占有を認めることができる。したがって洋服ダンス、和ダンス、台所用品、ミシン、洗濯機、電気冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ等は世帯主の所持にあるものと解され、学習机とか本棚などは子供の専用品である。また会社、工場内にある物は、その代表者、管理人が所持するものと推定される。
 配偶者の一方に対する債務名義により執行する場合、債務者である配偶者の単独占有物か、夫婦の共同占有物か明確でない場合がある。債務者が夫であるときは、女物の衣類、鏡台、女物の装飾品、化粧品等は妻の占有物と認められるから、妻が夫の所有物であるとして任意に提出する場合を除いて差押えは許されない。夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は夫婦の共有と推定される。
 この共同占有に属する動産については、民法七五二条の夫婦相互扶助義務により一方の債務名義であっても差押えることができると解されるが、これにっいては議論のあるところである。
 共同相続人の一人に対する債務名義により相続財産を差押えるには、その者の有する特分権に対し民事執行法一六七条により差押えることになる。
 銀行の賃金率のキャビネット内にある債務者の財産は、銀行が直接支配する銀行内の金庫室に保管されているのであるから、銀行がこれを事実上管理し、占有しているというべきです。したがって銀行が債務者の了解を得た上で任意に金庫を開けてキヤビネツトを提出しない限り執行官は在庫物を差押えることはできない。
 目的物に対し事実上の力を有しない間接占有者のごときは、執行法上は占有者ではない。しかし、自己のためにする意思がないため民法上の占有者ではない他主占有者、例えば受任者、受寄者、運送人、問屋、事務管理者のごときは、事実上の支配力を有するから、執行法上の占有者といえる。
 債務者の所持に属するかどうかは、執行に際し執行官が個々の場合の具体的状態に応じて認定すべきで、もし所持の判断を誤って他人の所持を侵害するときは、債務者は執行異議をもって、また、第三者は第三者異議の訴えにより執行の排除を求めることができる。執行官は差押物件につきその所有権の実体的帰属関係を調査判定する職責を負うものではないから、差押物件が債務者の所有に属しないとの実体上の理由に基づいては、債務者も第三者も、民事執行法一一条による異議を中立てることは許されない。所持の有無にっいての判断に誤りがない限り、第三者がその物について所有権その他の権利をもっていても、差押自体は違法ではない。しかし、当該物件が外形上、あるいは所在場所の状況その他から、若しくは強力な証拠資料の提示を受けることにより何人にも直ちに第三者の所有であることが明白に認識できるときは、差押えを避くべきは当然である。もし占有状態を誤認して差押えた場合は、執行官は職権で執行を取消すべきである。執行は債務者所有の財産に対してなされるのが建前であるから、差押えにあたっては外形上の所持を標準にするとはいえ、所有関係の問題が全然考慮されなくてよいというのではないからです。
 債務者の財産であって、これを債権者が留置権、質権の目的として所持している場合、債務者に対し所有権留保付で売渡した物、譲渡担保として債務者から取得した物のごときは、債権者がこれを執行官に提出して差押えを求めることができる。
 ちなみに債権者が譲渡担保物件を売却したときは、物件の価額が債権額よりも多いときは、その差額は債務者に交付すべきです。
 第三者が契約上又は法律上債務者の所有物件を債務者に返還すべき義務があるにかかわらず占有しているときでも、その占有は保護されなければならないから、その第三者が差押えを承諾しない限り、債務者に対する執行として差押えはできない。そこで法は債務者所有の動産を第三者が占有する場合は、第三者が「物の提出を拒まないとき」に限って差押えができるとしている。「物の提出を拒まない」とは、第三者本人が執行官に対して明示又は黙示の承諾をした場合をいうのであって占有権限ある者の意思を問う趣旨です。したがって第三者本人が任意に動産を提出した場合はもちろん、明示又は黙示に差押えを承諾したときに限って差押えることとしているのである。
 物の提出を拒まない第三者が、法人である場合には、代表者に占有権限があることは当然であるが、一般には支配人や工場長も法人の占有権限を行使し得る地位にあるものと解される。第三者の占有の観念も、債務者の占有と同様です。
 第三者がモの物の提出を拒むときは、債権者は、債務者が第三者に対して有する動産引渡請求権を差押える方法によって強制執行を行うほかない。
 第三者が任意に提出しない動産に対し差押えがされたときは、第三者は執行異議を申立て、あるいは要件の具備するときは、占有権を根拠として第三者異議の訴えを提起することができる。
 動産執行は、執行官による目的物に対する差押えにより開始する。
 執行官は、職務を執行する場合には、その身分又は資格を証する文書を携帯し、利害関係を有する者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
 執行官は、申立書に記載された動産の所在場所について差押えを実施する。
 申立書に記載されていない場所について差押えを行うべきでないから、申立書に記載された動産の所在場所以外の場所で債務者の動産を発見した場合には、債権者は執行場所の追加申立てをすべきです。
 差押えは、執行官が差押えるべき動産等を債務者その他これを占有する者から取上げて、自己の占有に移すことによって行われる。
 執行官は、差押えを実施するに当たり、どの動産を差押えるべきかについては自らの裁量によって決定すべきである。そのために執行の目的上必要な限度で強制的に債務者の住居、倉庫等債務者の占有する場所に立入り、必要があるときは、閉鎖した金庫、預金、手箱等を開いて差押えるべき動産等を捜索することができる。
 債務者である国会議員の占有する動産を差押えるため、議員会館に立入るには、立法府の承認が必要であることに注意すべきです。
 執行官は、債務者の懐中を捜索することはできないから、債務者が財布、時計、指輪、手形等を所持することが明白な場合にはこれを差出させて差押えることができる。
 債務者方が全戸不在の場合には、鉄戸扉、シャッター等の錠前を損懐して立入ることができるが、この場合は、立会人を置いた上、専門の技術者を用いて開かせることが望ましい。
 なお、執行終了後は新しい錠前を取付けておくべきで、その場合には近隣の者に鍵を預け、債務者に鍵の預け先を知らしめるため適切な措置を議じておくべきです。
 債務者の居住するマンションの玄関の自動ドアの開扉を、マンションの管理人が拒否するため債務者に対する差押えができない場合には、執行官は、法五七条二項及び一二三条二項の規定に則り、技術者を用いてドアを損壊して立入ることができる。
 倉庫、金庫その他の容器を開く場合には、債務者に損害を生ぜしめない方法を選ぶべきであるが、場合によっては専門業者を用いて損壊の上開扉することもやむを得ないであろう。この執行の際妨害する者があるときは、執行官は妨害を除去して開くことができる。これらの費用は執行に必要な費用となる。
 差押えは差押債権者の債権及び執行費用の弁済のために必要な限度にとどめなければならないから、執行官は、差押物を評価しながら差押えを行うべきです。
 執行官は、差押えるべき動産等を選択するにっいては、債権者の利益を害しない限り、債務者の利益を考慮しなければならないのであって、差押えるべき動産が数種類あるときは、原則として金銭又は換価の容易な動産から差押えるべきです。
 手形等の有価証券を発見したときは、これを差押えることができるが、他に適当な差押物件があればそれを差押えれば足りるので、常に必ずしも手形等を差押えなければならないわけではない。何故なら手形等は、一般動産と異なり手形上の支払義務者の資力、手形抗弁の附着の有無等によりその価値及び換価性は大きく異なるものがあるが、このような事情は差押時には容易に判明しかいために、執行官としてはその評価額について必ずしも券面額によることはできない等困難な問題があるからです。
 したがって執行官は、手形等については債権者が特にその差押えを希望するか、あるいはその支払が確実視される特別の事情が存在する場合にだけ差押えるようにすべきです。不渡手形は換価価値が零とはいえないが、普通は差押えないことになろう。もし差押債権者の希望で不渡手形を差押えた場合に、債権者その他の第三者が不渡手形であることを承知で買受けの申出をしたときは、執行官は、額面額に近い相当価額で売却できる見込みがなければ、法一三〇条により差押えを取消すべきです。もし低い価額で買受けを許すことになると、このような手形を安く大量に買付けをする者があり、それによって取立ての場合暴利を得るなどの行為を助長することにもなりかねないからです。未完成手形等はそのまま差押えることができる。なお差押物を選択する場合に、債権者の意見の申出については、それが相当であるときは執行官はその意見を尊重するのが適当です。
 債務者の営業のための商品は、他に適切な差押物件がない場合に差押えるようにする。けだしそれによって債務者の営業は停止し、生活にも窮することとなる場合もあるから慎重にすべきである。もっとも債務者は差押えの商品を売却することができ、新たな同一の仕入商品の上に差押えの効力が及ぶとの考えを認めるならば別です。滞納処分により差押えがされている動産を差押えることは差し支えない。
 債権者が第三者の占有中にある動産の差押えを求めるときは、執行官は、その第三者につき、その動産の提出を拒まないかどうかを確かめた上で、差押えを承諾したときにすべきです。
 動産の差押えは、執行場所を単位として行われ、差押えるべき動産の選択は執行官の裁量に委ねられているので、差押えの一部の物を特定してする債権者の取消しの申請は認められない。

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