動産の差押手続き

 動産に対する執行の申立ては、債権者又はその代理人から差し押さえるべき動産の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に対してしなければならない。
 執行官に対する申立ては、書面でする。書面によって申立てを要するとしたのは、時効中断の効力発生の時期を明確にさせるためにも必要です。
 債権者及び債務者とは、執行債権者及び執行債務者のことです。債権者及び債務者は執行力ある債務名義の正本に記載されているとおり確定しているので、その氏名、住所あるいは商号、本店の所在地等は執行力ある債務名義の正本の表示と一致していることが必要です。執行文付与後債権者又は債務者の氏名、住所、商号、本店の所在地等に変更があったときは、申立にあたりその点を戸籍謄・抄本、住民票、登記簿謄本、抄本等によって明らかにして、新旧双方の氏名、住所等を表示すべきです。法人組織でないのに何々会社という名称を用いて取引をしているものについては、債務名義の正本の表示のとおり何々会社こと何某と記載する。
 管轄を同一にする連帯債務者数名に対して執行を求める場合は、各人ごとに申立てをするか又は一通の申立書に当該債務者を連名で記載して申立てをするかは債権者の自由です。一通の申立書に記載して申立てをした場合でも実務では一債務者ごとに立件をして処理することになっています。
 債権者が代理人によって申し立てるとき、又は債権者及び債務者に法定代理人があるときには、その代理人を表示しなければならない。

スポンサーリンク

 債務名義を表示するには、判決、和解調書、調停調書、執行証書等法二二条各号に掲げるものを事件番号等によって特定して記載する。
 一個の判決、和解調書等に数個の債務名義が存在している場合には、どの債務名義によって執行をするかを明らかにしなければならない。例えば書式例の債務名義欄に「○○地方裁判所平成○○年第○○号和解調書のうち和解条項第三項」というように記載する。
 申立書には執行債権を表示すべきです。規則九九条にはこの記載は要求されていないが、債権者が満足を得べき債権の種類と額を記載することは当然です。この執行債権の記載によって超過執行にあたるかどうかを判断することになる。
 執行債権は債務名義の記載によって、何程の順について強制執行を求めるかを記載する。債権が数個ある場合には、どの債権について執行を求めるかを記載すべきである。同種、同額の債権が数日ある場合には、債権発生の年月日を明記して特定させることが必要です。
 請求債権の一部について執行を求める場合は、その趣旨及びその範囲を明確にする。債権の内の一部について執行を求めた場合は、後に執行債権の増額は認められない。超過執行にあたるかどうか等の判断は、申立書に明示された請求金額が基準になるからである。残余債権について満足を得たければ、新たに執行の申立てをすべきです。
 利息についてその定めがあるときには、執行申立当時確定している額につき執行を求める場合にはそれを記載する。損害金については、執行申立ての日までの分を確定して請求する方法と、支払済に至るまでの分を請求する方法とがあります。利息、損害金は執行申立以後も元金の支払を受けるまでは当然に発生するものであるから、後者の請求の方法は許されてよいはずであるが、実務では超過差押えの禁止の規定を考慮し、損害金についても執行申立の日までの分を算出して請求させることにしている。
 執行費用とは、強制執行に要した執行機関、当事者、その他関係人の支出した費用をいうのであって、共益費用と解され、他の債権に先立って弁済を受けることができるものです。この執行費用は、執行について必要であった部分に限り債務者の負担となり、債務名義を要しないで執行手続において同時に取立てることができるので、申立書に明記することが必要です。また、執行費用は、執行債権と共に超過執行に該当するか否かの判断の資料になる。申立書に記載する執行費用は執行準備費用から申立時までに要した費用です。執行費用額の算定につき根拠となる規定は、民事訴訟費用等に関する法律、同規則、公証人手数料規則、執行官の手数料及び費用に関する規則などです。執行費用について試行申立書に全然記載しなかったとか、又は記載洩れの執行費用については、別途執行裁判所に対し執行費用額確定決定の申立てをして、その決定書を債務名義として金銭債権による取立てができる。
 動産執行においては、不動産執行のようにその表示によって執行の目的物を特定することは通常困難です。差押えの場所においてどの動産を差し押さえるべきかは、執行官の裁量によるとされているので、執行債権者は申立てにあたって対象物を特定する必要はない。民事執行法は手形、小切手等の指図証券が動産執行の対象とされたが、債権者は債務者の所持する有価証券の内容を確知することは事実上困難であるから、申立てにあたって差し押さえるべき有価証券を特定せず、申立書様式の執行の目的及び執行の方法欄の該当事項を○で囲んで申立てをすればよい。求める強制執行の方法は、動産執行を求めると記載すべきであるが、○印によって動産執行を求めることが明らかであるからそれで足りる。
動産執行においては、前述のように差押えの場所においてどの動産を差し押さえるべきかは執行官の裁量によることになるが、その差押えにあたっては、執行すべき目的物がどこにあるかが明らかにされなければ執行官は、執行に着手することができないのであって、差押えの場所は、即目的物の所在場所ということができる。そうだとすると差し押さえるべき動産の所在場所を明らかにすることは、差押えの対象となり得る動産を特定することになるといえるので、申立書には、必ず目的物の所在場所を記載しなければならないのです。
 差押えるべき動産が所在する場所は、社会通念上他と区別される一個の場所であることを要し、通常は、差押えるべき動産の所在する土地の地番、建物の家屋番号によって表示されることになるが、要は執行官がその表示されたところにより執行の場所を認識できる程度に記載すれば足りる。
 一個の場所というのは、登記簿上の不動産の個数による感荷はないので、申立書に記載された一個の場所の範囲内に合まれると認められる限り、差押えを行うことは妨げない。例えば、債務者の住居が執行場所となっている場合において、住居とは敷地の地番を具にするが、これと同一敷地内に存在し一体として利用されている債務者が占有する他の建物、工場に所在する動産は、同一場所と解して差し押さえることは許される。住居と店舗が隣接するような場合も同一場所と考えてよい。しかし、一抹のアパート等の各部屋は、それぞれ別個の場所というべきです。
 申立書に複数の執行場所を記載することは、執行場所がいずれも申立てを受ける執行官の職務執行区域内にある限り許される。数個の地番にまたがって存在する山林の伐採木とか、機械器具等が執行の目的物である場合には、申立書には、当該数個の地番を記載すべきです。この場合申立書には、一つの地番しか記載されていなかったとしても、当該伐採木又は機械器具等が他と区別される一個のまとまった場所に存在するものと認められる限り、記載のない地番の土地上にある伐採木又は機械器具等についても差し押さえるべきです。
 動産を差し押さえる執行官は、申立書に記載された目的物の所在場所で差押えを実施すれば足り、債務者が他の場所において動産を占有又は所有しているか否かを調査する感要はない。
 申立書に動産が所在する場所の記載を欠く場合又はその記載が不十分な場合には、執行官は、債権者が出頭している場合は中立書の補正を命じ、債権者が補正に応じない場合には、申立てを却下する。この場合執行官は、申立人に対し、申立てを却下する旨及び却下の理由を通知しなければならない。もし申立書が郵送されてきた場合には、中立書に債務者の住所が記載されているときは、その住所が差し押さえるべき動産が所在する場所と解して受理してよい。
 複数の場所において差押えをすることを求める場合でも、事件は一件として立件する。申立て後に執行場所の追加の申立てがあっても新たな立件を要しない。
 動産執行の申立てについては、執行力のある債務名義の正本を必要とするほか、執行開始に必要な要件を具備していることの証明書、例えば、債務名義の送達証明書、法二七条の規定により執行文が付与されたときは、執行文と債権者が提出した文書の謄本の送達証明書、立担保の証明書、反対給付の提供の証明書を提出すべきである。連帯債務者数名に対する一通の債務名義に基づき、その全員に対し、同時に各別の申立言により執行の申立てをする場合には、そのうちの一通に債務名義の正本を添付し、他の申立言には便宜コピーによる債務名義の写しを添付するか、又は添付しかいで正本は何某に対する執行申立書に添付してある旨を付記するようにする。
 申立債権者又は債務者が法人である場合は、資格証明を、代理人によって申立てる場合には、代理権を証する代理委任状の添付を必要とする。
 訴訟上の救助を受けた者が申立てをする場合には、救助を受けたことを証する書面を提出しなければならない。
 執行官が目的物の所在する場所に臨場の便宜のために、その所在場所の略図を添付することが望ましい。
 約束手形の振出人は、支払をするにあたり、所持人に対し手形に受取を証する記載をしてこれを交付すべきことを請求することができることは手形法三九条一項、同法七七条一項三号に規定しているところである。これは支払人をして二重払の危険から免かれしめるとともに、支払済の証明を容易にさせるためです。このことは任意の支払であろうと、差押の結果手形債権の支払を受ける場合であろうと異なることはない。執行官が動産の差押えをするにあたっては、その対象物が債務者の財産である現金の場合もあろうし、動産の場合もあると思われる。現金又は動産を換価して、その代金を差押債権者に交付し、その額が債権全額の弁済に充当されるときは、約束手形金債権による執行については債務者は手形の受戻しを請求することができるのであって、その請求があれば執行官はこれに応じなければならない。したがって執行申立ての際には執行官は債権者に執行力ある債務名義の正本の外に手形原本を提出させて預かるべきであろう。これについては、仮に手形を債務者に交付せず、その結果手形が再び流通したとしても、取得者は手形債務者から弁済の抗弁を対抗されることになるから、手形債務者が二重に支払の責任を負わせられる危険がないとして、債務者に交付する必要はないとの考え方もあるが、裏書人が債務者の場合には、裏書人は更に振出人に対し償還請求をすることも考えられるので、執行官としては手形原本をいつでも交付できるよう用意する必要があろう。このことは執行官の執行に限らず、執行裁判所の執行の場合にも債権者が債権全額の支払を受ける段階において考えられることです。実務において手形原本を預かることを考慮しないのは、債権全額の弁済を得られることがほとんどないということと、執行機関があらかじめ預っていると紛失等の危険があることなどを考えてのことでしょう。
 ちなみに債権者が手形債権に転付命令を得た場合に、その債権の弁済を受けるためには、手形法七七条一項三号、三九条三項の一部支払の場合の規定により認められた支払があった旨を手形上に記載し、かつ受取証書を交付することを要するとした裁判例がある。
 執行官は、申立てにより取扱う事務について、申立人に手数料及び職務の執行に要する費用の概算額を予納させることができる。ただし、申立人が訴訟上の救助を受けた者であるときは、予納させることができない。費用の予納義務者は申立人です。
 数名の債権者のために同時に差押えの申立てがなされ執行をするについては、合有債権、連帯債権又は不可分債権に基づく場合を除き、債権者ごとにその執行すべき債権の順に応じて手数料を納付させる。
 予納させる金額は、担当執行官が事案により適当と認める順による。予納金額は、原則として申立事件の終局までの処理に要する順を基準として定めるべきです。しかし、まず差押えの費用を予納させ、差押えの実施後に売却の費用を予納させるなどの取扱いをすることは差支えない。事件が進行した後に予納金が不足するときは、更に予納させることができる。
 予納金額は、事務取扱いの統一のため、各裁判所執行官室では事件の種別ごとにあらかじめ一定の標準を定めている。
 執行官は、申立ての適否を審査し、適法と認めたときは、申立人に対し手数料等の予納金額及び予納すべき期間を明示すべきです。
 申立人は、期間内に手数料等の概算額を予納すべきで、もし執行官の定めた期間内に予納がされなかったときは、申立は却下される。
 予納すべき期間を経過した場合であっても、却下する前に予納がされたときは申立てを却下することはできない。
 手数料等の概算額の予納は、執行官所属の地方裁判所に対してすることになる。予納金の提出を受けた地方裁判所は、これを保管金として取扱う。

動産に対する強制執行/ 動産の差押手続き/ 動産執行の申立による差押/ 差押物の保管/ 差押えの通知/ 差押物の点検/ 差押の効力/ 差押えの制限/ 超過差押えの禁止/ 換価性のない動産の差押えの禁止/ 債権者の競合と二重差押えの禁止/ 差押え動産の配当要求/ 差押物の評価/ 差押物の売却/ 差押動産の競り売り/ 競り売りの方法により売却すべき動産の見分け/ 売却動産の引渡し/ 動産執行における入札/ 競り売り又は入札以外での売却/ 競売の配当等の手続き/ 動産執行申立ての取下げ/ 担保権の実行としての動産競売/ 動産競売事件の併合/

お金を借りる!

船舶に対する強制執行/ 自動車に対する強制執行/ 動産に対する強制執行/ 債権に対する強制執行/