増価競売

 増価競売は、既登記の抵当権者がその不動産の第三取得者から滌除の申出を受けた場合に、これを拒絶したときに行うところの競売手続であって担保権の実行としての競売の一態様ですが、競売申立債権者が第三取得者の提供した金額より一割増の代価で競売すべき義務を負担するところから増価競売と名づけられている。元来滌除という制度は、抵当権者が第三取得者から申出た金額が相当のときにこれを承諾して、煩雑な競売予続を省略して、抵当権者は債権の満足を図り、第三取得者は抵当権等の追及効を阻止して自己の権利を保護するという両者の利益保護を調和する趣旨で立法されているのですが、実際には競売を欲しない抵当権者に対し廉価で抵当権を消滅させることを強制するという抵当権者に不利益な面が出ており、制度の存在自体が問題とされる。
 第三取得者に担保権の滌除が認められるのは、不動産と船舶に限られる。航空機、自動車、建設機械は、不動産競売の手続を準用しているが、これらの動産については、代価弁済の制度が存するので、第三取得者は滌除権を有しないからです。
 なお増価競売も、担保権の実行としての競売と同じものであるから、原則的には、競売に関する規定が適用されるが、第三取得者の申出によって始まる手続である関係で、若干の相違のあることに注意すべきです。

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 滌除とは、さきにも述べたように、抵当不動産について、所有権、地上権、永小作権を取得した第三者が、民法三八二条ないし三八四条の規定に従い、抵当権者に一定金額を提供して、その承諾を得た金額を支払い又は供託して当該抵当権を消滅することをいうのです。民法三七八条や、不動産の先取特権や、不動産質権にも準用される。抵当証券の発行された抵当権については、滌除に関する規定は適用されない。
 滌除権者は、抵当権者から抵当権の実行通知を受けるまでは、いっでも滌除権を行使できる。抵当権実行の通知を受けたときは、滌除権者は一カ月以内に登記をした各債権者に民法三八三条所定の書面を送達しなければ滞除権を行使することができない。この一カ月という期間は第三取得者のために各別に起算するものと解する。抵当権実行の通知後に民法三七八条に掲げる権利を取得した第三者は、最後に通知を受けた第三取得者が滌除権を行使できる期間内に限り滌除権を行使できるのである。
 第三取得者が滌除権を行使するには、登記した各債権者に対し民法三八三条の一号ないし三号の書面を送達しなければならない。これは債権者に対し滌除権者の申出を容れるか、増価競売の請求をするかの判断をさせるための資料の提供です。したがってここにいう登記した債権者とは、増価競売の請求ができる債権者でなければならない。登記した債権者の中に仮登記権利者を含むか否か問題ですが、仮登記をした抵当権者も、本登記をしなくても抵当権の存在を証する確定判決等の文書を提出すれば競売の申立てができるので、不動産登記法二条一号の仮登記を受けた債権者は民法三八三条の登記した債権者に含まれる。
 第三取得者が登記した各債権者に送達すべき民法三八三条一号の書面には、第三取得者が抵当不動産を取得した原因、年月日、譲渡人及び取得者の氏名、住所、抵当不動産の性質、所在、代価、その他取得者の負担を記載しなければならない。このうち、その他取得者の負担とは、第三取得者の支払うべき地代、小作料、第三取得者の引受け支払うべき債務の額などをいう。同条二号の書面は登記簿謄本ですが、これは登記した債権者相互の関係を鴉除の対象たる抵当権者に知らしめ滌除の申出について判断させるためです。同条三号の書面には、債権者が第三取得者から滌除の申出を受けた日から一カ月以内に民法三八四条の規定に従い増価競売を請求しないときは、第三取得者は、抵当不動産の買受代金又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済又は供託すべき旨を記載する。結局抵当権を消滅させるべき金額を提示して、債権者の承諾を求めるものです。債権者が滌除の申出を承諾したとき又は濡除の申出後一ヵ月以内に債権者が増価競売の請求をしない場合は、第三取得者は提供金額を債権の順位に従って弁済又は供託しなければならない。例えば提供金額が一、〇〇〇万円で、抵当不動産の第一順位甲抵当権者五〇〇万円、第二順位乙抵当権者四〇〇万円、第三順位丙抵当権者五〇〇万円であれば、甲に五〇〇万円、乙に四〇〇万円、丙に一〇〇万円を弁済するか、あるいは供託することになる。債権者の権利や、優先順位などに疑いのあるときは供託の方法をとればよい。民法三八三条一号と三号の書面を各別に作成しなければならない規定はないから、これらを合せて一通の書面にしてもよい。
 第三取得者が滌除権を適法に行使するには、登記した債権者全員に滌除の通知をしなければならない。したがって、もし債権者のうち送達を受けなかった者があったときは、判例、通説は瑕疵ある滌除としてこれを無効としている。すなわち滌除通知をした債権者に対する分も無効となるというのです。これについては抵当権者が登記簿上の住所と異なるところに居住し、しかも住所変更登記をしていないため第三取得者において変更後の住所を知り得ないような場合もあり得るので、この要件を厳格に解するのは疑問です。瑕疵ある滌除の申出に基づいてなされた増価競売の申立ても有効であり、しかも滌除を避けようとして故意に抵当権者が住所を移転することも考えられるから、滌除の申出が現実に到達しなくても通常ならば到達したであろう時期に滞除の効力を生ずるものと解すべきであるとする見解がある。
 滌除の通知を受けた各債権者が、第三取得者の提供の申出を承諾したとき、又は滞除の通知を受けた後一ヵ月以内に増価競売の請求をしないため第三取得者の申出を承諾したものと看倣された場合には、第三取得者は滌除金額を弁済又は供託すべきです。もし弁済、又は供託しないときは滌除の効力を生じない。この弁済又は供託は何時までにすべきかについては民法には何らの規定はない。判例は第三取得者の弁済又は供託は遅滞なくこれを行い、もしこれについて遅滞があればその後供託をしても何ら抵当権を消滅させる効力なく、滞除の通知そのものも、また全然効力を失うものとしている。
 第三取得者がその提供金額を弁済又は供託したときは滌除は終了する。この場合抵当権は第三収得者が金額を支払ったときに消滅する。各債権者が提供金額を承諾又は承諾したものと看倣されたときに消滅するのではない。

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