競売の配当の手続き

 民事執行法は、担保権の実行としての競売手続にも、強制競売の配当に関する規定をすべて準用することとしている。したがって、債権者が一人のときとか、全債権者が全額の弁済を受けられるときは、配当期日を開いて分配手続を行う必要はないが、そうでない場合は、配当期日を開き、配当表に基づいて配当を行うことになる。そして債権者間、債権者と債務者、所有者との間で配当について争いがあるときには、配当異議を申立て、配当異議の訴えを提起することになるのです。
 抵当権の目的となっている土地と、抵当権の目的となっていない同地上建物とが一括売却された場合には、配当すべき売却代金となるのは抵当権の目的となっている土地の代金のみです。一括売却された建物の代金は債務者、所有者に交付すべきであるから、このことを配当表に記載して明らかにしておくべきです。
 建物に担保権が存在している場合には、その担保権を消除して売却するのか、買受人に引受けさせるのかを物件明細書に記載して売却すべきです。買受人が担保権を引受ける旨記載してあれば、売却代金は債務者、又は所有者に交付し、担保権を消除するのであれば、便宜建物の売却代金についての配当表を作成して各債権者に配当する。

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 債権と共に抵当権の譲渡を受けた者が競売手続を受継した場合、申立から受継までに要した競売費用は、当事者から譲渡のあった旨の意思表示がなければ、債権並びに抵当権の譲渡がなされたからといって当然に競売費用を譲渡したものとは認められない。したがって代金配当の場合、競売費用は譲受人に交付できない。
 競売費用を控除した売却代金は通常次のような順に配当される。
 第三取得者の支出した必要費及び有益費、抵当権設定登記後に所有権、地上権、永小作権を取得した第三取得者が、抵当不動産のために支出した必要費又は有益費は、売却代金から競売手続費用に次いでその償還を受けることができる。第三取得者が抵当不動産につき支出した必要費、有益費は、当該不動産の価値の維持、増加のために支出された一種の共益費であるし、しかも第三取得者は競売の結果その権利を失うことになるところから、特に優先的に償還を受けさせることにしたのです。民法三九一条の第三取得者は、同法三七八条、三八一条の場合と同様、競売手続の開始前の第三取得者を指すのであるから、差押えの登記後に所有権等を取得した第三取得者づ必要費又は有益費を支出しても競売手続において償還を受けることはできない。
 第三取得者が必要費又は有益費を支出した場合において、売却代金からその償還を受けようとするときは、必要費については支出した金額、有益費にっいては支出した金額又は不動産の増価額を証明して執行裁判所に配当要求の終期までに届出をすべきです。
 第三取得者が仮登記権判者である場合は、支出費用談は供託しておき、他日本登記をした時又は本登記をなし得る要件を具備した時に交付することになる。
 この費用の償還がない場合には、第三取得者は、その償還あるまで目的不動産を留置することができる。
 第三取得者が優先償還請求権を有しているにもかかわらず、配当を受ける機会を失したため売却代金から優先償還を受けられなかったときは、第三取得者は同金額につき代金交付を受けた抵当権者に対し不当利得による返還請求ができる。代金交付を受けた抵当権者は、第三取得者が受けるべき優先償還金に相当する金員の交付を受けてこれを保有する実質的理由を有しないし、執行裁判所がなした抵当権者に対するその交付行為は、抵当権者がその交付を受け得る実体上の権利を確定するものではないからです。
 租税その他の公課は、国税徴収法八二条以下、地方税法六八条四項等の規定に基づき公課所管官庁からの交付要求の方法で優先的に徴収することができる。国税等の交付要求があったときは、その国税等に関しては競売手続費用に次いで交付することになるが、前述の第三取得者の支出した必要費又は有益費は一種の共益費用であるから、国税等に優先して配当する。国税徴収法一五条以下、地方税法一四条の九以下に規定する場合には、私債権が租税、公課より優先することがある。不動産に対する抵当権の披担保債権と国税等との関係は、国税徴叙法一六条の規定により、国税等の法定納期限等の先後によりその優劣を定めること、国税等が抵当権又は先取特権の一部に優先し、一部には劣後するいわゆる循環関係が生ずる場合の国税徴収法二六条による配当方法については後に述べるところを参照されたい。
 抵当権相互間の順位は、その設定登記の先後によって定まる。したがって後順位抵当権者は、先順位抵当権者がその優先権を行使した残額にっいてのみ優先弁済権を行使できる。数個の抵当権設定登記の申請が同時になされたときは、その抵当権は同順位となる。
 抵当権設定の仮登記を経た抵当権者は、その仮登記に基づく抵当権設定の本登記を経たときは、仮登記後その本登記前に抵当権設定登記を受けた抵当権者より優先して被担保債権の弁済を受けることができる。したがって他の債権者の競売申立てに基づく売却代金の配当時に仮登記のままで本登記をすることができる状態にあることが証明できないときはその配当額は供託される。
 抵当権の被担保債権が配当の日までに弁済期が到来しないものにあっては、配当期日に期限が到来したものとみなし、配当額を交付することになる。
 根抵当権について確定期日を定めた場合は、確定期日が到来すると根抵当権の担保すべき元本は確定することになる。確定期日が定められていない場合は、設定の時から三年を経過したときに設定者から元本の確定請求があったときは、その意思表示が根抵当権者に到達したときから二週間を経過したときに元本は確定することになっているが、このほか、根抵当権者がその有する他の一般債権に基づいて強制競売の申立てをし、競売手続の開始があったとき、根抵当権者が同一不動産上の他の担保権に基づいて競売の申立てをし、競売手続の開始があったとき、根抵当権者以外の者の申立てによって抵当不動産に対する競売手続が開始された場合、あるいは抵当不動産に対する滞納処分による差押えがされた場合には、根抵当権者がこれらの競売手続の開始又は滞納処分による差押えのあったことを知ったときから二週間を経過したとき、いずれも元本は確定することになるので、代金交付の日までには根抵当権者の債権は確定しているから、それに基づいて債権額を記載し、それに応じた交付額を計上することになる。
 元来抵当権は被担保債権である元本と、それに附随して発生する利息及び損害金の全部を担保すべきものであるが、このようにした場合、抵当権者が受取る延滞利息や損害金の額を容易に知り得ないこととなるので、当該抵当物件に対する後順位抵当権者、その他一般債権者に不測の損害を与えることが予想され、ひいては抵当不動産の取引の円滑を阻害することとなる。そこでこれを防ぐ趣旨から、民法三七四条の規定を設けて抵当権者に対し利息、損害金について優先弁済権を主張できる範囲を制限している。すなわち、利息に関する定めあるときはそれを登記しなければならない。利息が例えば当事者間では年二割という契約がなされていても、登記は年一割五分とされてあれば債権者は登記面による利息しか請求できない。けだし第三者に対する関係では登記によってのみ対抗できることになるからである。利息に関する定めの登記があっても利率の登記がないときは法定利率による。利息の登記がなければ利息の配当を受けられない。ただし商人間の金銭消費貸借上の債権のごとく、特約がなくても法定利息を請求できる場合には、利息の定めをせず又はその登記がなくても支払を受けることができる。遅延損害金(遅延利息)は元本債務の当然の拡張であるから特約や登記がなくても法定利率の範囲では当然に請求できるわけであり、後順位抵当権者らにも対抗できる。遅延損害金の約定が法定利率を超える場合には、その利率の登記をしなければ後順位抵当権者らに対抗できない。その登記をしても満期となった最後の二年分についてのみ抵当権により担保されるのである。もし、利息と遅延損害金とともにあるときは、それを通じて最後の二年分に限る。したがって債権計算書にそれ以上の請求がなされていても限度で計算した額を配当表に記載すべきである。もっとも、これは後順位抵当権者その他一般債権者に対する関係で抵当権者の優先弁済請求権を制限するもので、被担保債権の範囲を制限するものではないから、抵当権設定者に対する関係では抵当権者は二年分を超える分も担保権自体の登記はあるのだから配当要求をしなくても配当等を受けられる。したがって、他に抵当権者又は配当要求をした一般債権者がいなければ延滞利息等の全額の支払を受けることができる。この最後の二年分を超える分の配当における順位は、一般債権者と同順位であるから、抵当権者の最後の二年分を超える分については、一般債権者と各債権額に応じて案分配当をすべきである。最後の二年分以上の利息又は遅延損害金についても担保してもらおうとするときは、これに関して特に抵当権を行うことができる旨の特別登記をしておけば、この制限は受けない。この特別登記は、登記上利害関係を有する第三者がない場合、利害関係人があってもその承諾のあるときは附記登記でなされ、承諾を得られないときは主登記によることになる。
 根抵当権者は、極度額を限度として、確定した元本、並びに利息その他の定期金及び債務不履行によって生じた損害の賠償の全部について、その根抵当権を行うことができるものとされている。根抵当権を行うことができるということの意味は、確定元本、利息、損害金のすべてについて極度額を限度として後順位担保権者など第三者に対する優先弁済権を行使することができるということであって、極度額というのは根抵当権者が根抵当権の目的物件について有する換価権能の限度としての意味を持つものであるとされている。したがって民法三七四条の適用はない。このことから根抵当権者はたとえ売却代金に余剰が生じた場合でも、極度額を超える部分については売却代金の交付を受けることはできない。ただし根抵当権者が極度額を超える分について債務名義を得て配当要求の終期までに配当要求をすれば配当を受けられる。差押えの登記前にされた担保目的の所有権に関する仮登記権利者に対しては、仮登記の順位において配当をすることになる。ただし仮登記権利者が、執行裁判所の催告があったのに被担保債権の届出を配当要求の終期までにしないと、配当手続上失権することになる。この仮登記については、抵当権と同じように利息その他の定期金の請求は、満期となった最後の二年分についてのみ行使できる。
 共同抵当権の実行により数個の不動産が時を異にして競売され、売却代金を各別に配当するときは、民法三七四条の制限についてはこれを包括的に適用すべきです。例えば第一回の競売についてその売却代金の配当において満期となった最後の二年分の利息及び遅延損害金の配当を受けた債権者は、その後更に元本の残額について遅延損害金を生じても、第二回以後の配当の際には後順位抵当権者に優先して最後の二年分を超過した遅延損害金の配当は受けられない。
 重利については、その特約のあること又は重利の発生することを登記しただけでは、延滞利息の元本に組入れられた金額を知ることができないために後順位抵当権者らに不測の損害を与えるおそれがあるから、登記された元本を基準として民法三七四条一項を適用すべきです。延滞利息を元本に組入れて元本債権額の変更登記をしたときは、元本に組入れた延滞利息に対する最後の二年分も優先して弁済を受けることができる。
 各抵当権者に元金及び最後の二年分の利息、遅延損害金を支払って剰余金が生じた場合、その剰余金を、目的不動産の所有者が物上保証人である場合には、その者に交付する。債務者が物件所有者であるときも、債務者に交付することになるが、この場合債権全額の満足を受けられない抵当権者又は一般債権者は、取あえず債務者が有する剰余金返還請求権を仮差押えしておき債務名義を得て本執行をすればよい。
 抵当権者が債務名義を得て強制競売の申立てをし売却代金を配当する場合には、各抵当権者に対し元金及び最後の二年分の利息損害金を支払い、なお剰余金が生じたときは、競売申立債権者の債権に配当する。
 抵当権によって担保される利息又は遅延損害金につき「其満期ト為リタル最後ノ二年分」の起算日はいつかということについては説が分かれている。すなわち、弁済期の到来した利意中最後のニカ年分と解すべきです。競売手続開始決定の日を基準として、その時から遡って二年分と解する。その理由として競売手続開始決定後に発生する利息ないし遅延損害金も他の債権者に優先して担保される効力があるとすると、例えば、後順位抵当権者又は一般債権者から競売申立がなされた場合、申立債権者に優先する抵当権の被担保債権の額が競売手続中に増加する場合も考えられ、民訴旧六五六条との関係で当然適法であった競売手続が時の経過とともに不適法となる不当な結果を生ずるからとしている。
 配当表作成の時を基準としてその日から遡って二年分とする。不動産競売においては、配当期日に配当表が作成され、その配当表に異議がないときは配当表に従って代金を交付するので、配当表作成の時と配当実施の日とは同日と考えてよい。
 配当(代金交付)実施の日を基準としてこれより遡って二年分とする。その間に利息、遅延損害金が債務者から任意弁済されないのが通常であるから「最後ノ二年分」の基準を配当表作成時、すなわち配当実施の時から遡って二年分と解するのが合理的であるとする。債権者は現実に売却代金の交付を受けるまでの利息、遅延損害金を請求する権利があると解すべきであるから、抵当権者が現実に弁済を受ける配当実施の日を基準として、これより逆算して二年分の利息損害金を算出する説を妥当とする。実務もこの見解により処理されている。この場合、もし債権計算書に配当実施日までの利息又は損害金が計上されていなければ、裁判所が職権で計算して代金を交付すべきです。

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