競売開始決定

 競売の申立てを受けた執行裁判所は、管轄の有無、適法な申立てであるかどうかを審査し、適法なものであれば、実体権の判断はすることなく開始決定をする。
 不適法な申立てであれば、申立却下の裁判がなされる。却下の理由が、例えば担保権や、彼担保債権が存在しないとか、弁済期米到来である場合のように実体上の理由、又は、手数料不納付、申立書の記載事項が補正されないとか、添付書類の欠格のように手続上の理由である場合を問わず申立債権者は執行抗告ができる。
 開始決定においては、申立債権者のために目的不動産を差押える旨の宣言がされる。旧競売法においては、開始決定において差押宣言をする規定はなく、ただ、競売申立記入登記の嘱託の規定があっただけですが、判例は、この競売申立ての記入登記自体に差押えの処分制限の効力があるとしていた。民事執行法は、強制競売、担保権の実行としての競売の両者とも差押えの宣言をし、しかも競売申立ての登記とせず、差押えの登記を嘱託することとし、その処分制限を明確に公示することとしたのです。
 この開始決定は、債務者、物件所有者に送達する。この場合差押えの効力は、開始決定が物件所有者に送達されたときに生ずる。ただし、差押えの登記が、開始決定の送達より前にされたときは、登記がされた時に生ずる。
 所有者に対し開始決定を送達する場合に、所有者は住所を移転したのに、登記河上の住所の変更登記をしていないときは、登記法上の住所に送達する。もし不送達になったときは、債権者をして調査せしめ、判明した住所その他就業場所に送達する。それでもなお不送達になったときは、申立債権者の申立てにより公示送達をすることになる。
 既登記の抵当権等による競売の申立の場合は、抵当権者は抵当権設定登記後の所有権に関する処分には、差押えの登記がなくても抵当権をもって対抗することができるが、未登記抵当権による競売申立の場合は、差押えの登記をしないとその後の処分に対抗できない関係上、差押えの登記は速やかにする必要がある。
 担保権実行としての競売申立てについて、競売開始決定がされた場合、債務者又は物件所有者、裁判所の許可を得た代理人は、実体上の理由をもって執行異議を申立てることができるとされている。この法一八二条というのは極めて簡単な実体上の異議を主張する手続であって、強制競売にはない規定です。そのほかに、競売手続上の瑕疵があれば、総則の規定に基づいて執行異議を申立てることができる。

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 競売開始決定がされた場合に、それが適式な手続を踏まずになされたものであるとき、例えば、申立書に添付すべき書類が、添付されていないのに開始決定がされた場合とか、担保権の存在を証明している文書でないのに、その文書により開始決定がされた場合、滞除権者に通知してから一カ月を経過していないのに競売申立てがされたようなときには、債務者又は所有者は執行裁判所に異議の申立てができる。
 なお、被担保債権の弁済期が到来していないとか、弁済期の猶予を受けているという場合には、競売手続を開始することは許されないので、手続上の瑕疵事由として法一一条の異議事由となる。
 担保権の実行手続は、さきに述べたように担保権に内在する換価権能に基づいて債務名義を要せず目的不動産の競売の申立てをすることができ、執行裁判所はその申立てによって手続を進めて担保権者に債権の満足を与えようとするものである。その競売の申立てにあっては、民事執行法は旧競売法と同じように債務名義を要求しない代りに、債務名義に近いような担保権という換価権の存在を立証させるにもっとも適当な文書の提出を要求しているのですが、執行裁判所は、競売申立ての段階で実体的な担保権の存否について判断をすることは、執行機関の範囲を逸脱することになるということから、この文書が提出されさえすれば手続を開始することができるとしているのです。
 このように債務名義を要求していないことから、担保権の設定契約が無効であるとか、担保権が不存在であったり、被担保債権の消滅により担保権が消滅したというときには、強制競売の場合のように請求異議の訴えや、執行文付与に対する異議の訴えのような厳格な不服申立手続を採ることはできないために、これら実体権についても競売手続内で執行異議という形で簡易に争うことができるとされているのです。
 異議申立ては、競売開始決定正本の送達があった後、買受人による代金納付までの間いっでもできる。
 担保権の設定契約が無効であるとか、担保権の不存在又は消滅、被担保債権の弁済期未到来又は履行猶予を事由として異議申立てができる。この異議はあたかも強制執行における請求異議に類似するものといえる。担保権や被担保債権の一部不存在は、不動産競売においては、超過差押禁止の原則は採られていないことと、担保権の不可分性の関係から、執行異議の事由とはならないと解されている。
 異議申立てがあったときは、執行裁判所は、口頭弁論を関いて審理することができる。しかし、決定手続であるから、実務上口頭弁論を関くことはないのが従来の例です。口頭弁論を関かない場合は、法五条による簡易な証拠調として利害関係人その他の参考人を客将することができる。
 この執行異議手続の存在意義というのは、本来簡単に証明できる事項にっいては簡易な方法で競売開始決定を覆すことができるということであるから、抵当権設定契約が無権代理人によってなされたとか、通謀虚偽表示によるもので無効であると主張して異議を申立てた場合のように本格的な審理を必要とするときは、別に担保権不存在確認の訴えによるほかない。
 債務者又は所有者の申立てた異議事由が認められる場合は、執行裁判所は、競売開始決定を取消す旨の決定をする。
 この取消決定に対しては執行抗告をすることができる。この取消決定は確定しなければその効力を生じない。
 取消決定が確定したときは、裁判所書記官は、差押債権者より登録免許税を納付させた上で差押登記の抹消登記の嘱託をしなければならない。
 異議が認められないときは、異議申立てを却下する旨の裁判がなされる。この却下の裁判に対しては、執行抗告は認められないので、債務者又は所有者は、別に担保権不存在確認の訴えを提起するほかない。
 執行異議の申立てがあったときは、執行裁判所は、職権をもって執行異議についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで執行停止の裁判をすることができる。
 申立人は執行停止を求める権利はないが、裁判所の職権発動を促す意味での申立てはできる。申立書には、執行停止を求める理由、提供すべき担保を記載したらよい。
 この執行停止の裁判に対しては不服申立てができない。担保権不存在確認の訴えを提起したときは、競売手続停止の仮処分を求めることができる。

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