不動産競売手続と他の執行手続き

 滞納処分による差押えがされている不動産に対しても、競売の申立てをすることが許され、裁判所は申立てに基づいて競売開始決定をすることができる。この場合裁判所書記官は差押えの登記の嘱託をし、開始決定のあった旨を徴収職員等に通知をする。そしてじ後滞納処分による差押えが解除されるか、又は競売手続続行の決定かあった場合でなければ裁判所は手続の進行はできない。
 抵当権実行としての競売開始決定による差押えの登記がされた後に、当該不動産について他の債権者が仮差押えをすることは差し支えないが、この場合は、配当要求の終期までに仮差押えの登記をした上で、法五一条の配当要求の申出をしないと配当は受けられない。

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 民事執行法は、仮差押え後の処分行為は仮差押債権者だけでなく、その執行手続に参加した債権者に対する関係でも対抗できないとする、いわゆる手続相対効を採用しているのであるが、仮差押え後に設定された抵当権に基づいて競売開始決定がされた場合、どのような取扱いをするかについては、法八七条二項の規定によれば、仮差押え後に設定された抵当権については、仮差押えが取り消されるか、取下げにならない限り配当は受けられないので、そのような不確定な状態にある抵当権者の申立てに基づく競売手続は開始すべきではない。したがって、申立ては却下すべきである。
 このような抵当権者でも、仮差押えが取消し又は取下げの可能性があるから、競売申立てに基づいて開始決定をし、差押えの登記をして無剰余売却禁止の考えを採り入れ仮差押えの帰すうが定まるまで手続を停止しておくべきです。
 仮差押えに後れる抵当権者であっても、その抵当権に基づく換価権能を有するわけで、ただ配当を受けられないというにすぎないのであり、また、手続を停止しなければならないとする条文上の根拠はないのであるから、抵当権者の申立てに基づく競売手続により換価し、配当の段階まで進め、そこで停止をしておくべきです。
 手続を進めている間に仮差押債権者が債務名義を得て二重の開始決定がされた場合、先行する抵当権者による競売手続がどうなるかについては、これについてその取扱いについて二つの考見方がある。
 一つは、仮差押債権者による本執行の申立てにより、抵当権者は配当を受けられないことが確定したのであるから、抵当権者による以後の競売手続は無益であるとして、執行裁判所は、職権をもってこれを取り消し、仮差押債権者による本執行事件で手続を続行すべきです。
 この見解には、仮差押債権者による本執行事件が売却により終了した段階で抵当権者による競売手続を取り消すべきであるとしてその取消しの時期に異なる考え方がある。
 もう一つは、仮差押債権者が本執行の申立てをしたからといって、抵当権者による競売手続を職権で取り消す根拠はないから、そのまま先行する抵当権による競売手続で進行し、配当の段階で抵当権者に売却代金の配当がなくてもやむを得ないことである。この場合には手続費用のうち共益費用については、抵当権者に優先配当をすべきであるというのです。
 抵当権者による競売手続を、続行することは、無益なことであるから、仮差押債権者による本執行の段階で職権でこれを取り消し、仮差押債権者による執行手続により続行する考え方で処理するのが相当です。
 このような事例では、抵当権者としてはおそらく申立てを取り下げることになるでしょう。
 このように見てくると、今後は仮差押えが取り消される見込がない以上、仮差押えのされている不動産に対し抵当権を設定することは危険なことだといえる。
 甲所有不動産に乙債権者が仮差押えの登記を経た後に丙が甲からその不動産を買受け、所有権移転登記をし、丁から金借して不動産に抵当権設定登記を経由したが、丙が債務を返済しないために丁が競売の申立てをした事例の場合は、丙所有不動産に対する競売であるから、売却によっても乙の仮差押えは消滅することはない。したがって乙が債務名義を得て甲債務者に対し強制競売がなされると、丁は売却代金から配当を受けることもなく、また、丁の競売の申立てに基づく買受人の所有権移転登記は、対抗できないものとして抹消されることになる。このために、実務上は丁の競売開始決定をし、差押えの登記を嘱託して、その後の手続は仮差押えの取消しがあるまで停止するほかない。もし仮差押債権者が債務名義を得て強制競売の申立てをした場合は、目的不動産は同一であっても、債務者がまったく異なるので二重開始決定の扱いはできないから別個の事件として進行することになる。
 抵当権の設定登記後に抵当不動産に対し処分禁止の仮処分の登記がなされても、抵当権の実行をするには妨げとならないから、抵当権者は競売の申立てをすることができる。
 処分禁止の仮処分登記のされた後に登記された抵当権に基づいて競売の申立てができるかどうかについては問題のあるところで、この点は強制競売の場合と同様の問題がある。すなわち競売の申立てを許さない、競売の申立てはできるが競売開始決定をした段階で停止しておく、停止の必要はないが、停止した方が相当である、競売手続を進行、終了させてよいが、売却による所有権移転登記はできないというようにその見解が分かれている。実務は競売の申立てを受理し、競売開始決定をし、差押え登記をした段階で停止し、仮処分登記が抹消された後に手続を進める取扱いが多い。
 担保仮登記がされている不動産に、抵当権設定登記がなされている場合に、仮登記担保権者が、仮登記担保の実行通知をし、すでに清算金を支払ったときは、その後にされた抵当権実行としての競売の申立てに基づく開始決定に対し、仮登記担保権者は、当該不動産に対する所有権の取得をもって対抗することができる。
 清算金の支払前及び清算期間中に、競売申立てに基づく開始決定があった場合は、仮登記担保権者は執行裁判所に債権届出をすることによって配当金の交付を受けられる。優先順位は、担保仮登記に係る権利を抵当権とみなし、その担保仮登記のされた時にその抵当権の設定の登記がされたものとみなされるので、他の抵当権設定登記との先後によって決まる。
 抵当権の目的である不動産の所有者が破産宣告を受けても、抵当権者は別除権を有するから、破産手続によらないで抵当権実行による競売手続によって自己の債権の弁済を受けることができる。したがって破産宣告前になされている競売手続は破産管財人を相手方として続行できるし、また、破産宣告後であっても、新たに破産管財人を相手方として抵当権に基づく競売の申立てができるのです。抵当権者が抵当権実行を怠るときは、破産管財人は民事訴訟法によって目的不動産を換価することができるのであって、抵当権者はこれを拒むことはできない。この場合抵当権者は換価代金から優先弁済を受けられる。
 抵当権の目的である不動産について和議の開始があった場合、抵当権者は別除権者として破産の場合と同様競売の申立てをして権利行使ができる。
 民事調停規則六条は、民事調停の申立てがあった場合、調停の成立を不能にし又は著しく困難ならしめるおそれがあるときは、申立てにより裁判所は民事執行の手続の停止を命ずることができるとしている。実務上は債務者や物上保証人から被担保債権の分割弁済その他債務弁済方法に関する民事調停を申立て、競売手続の停止を求める例が多い。この場合は競売の申立てはできないし、申立て後はその進行が停止される。
 抵当権実行としての競売には、請求異議の訴えの規定の準用がないので、事前に抵当権実行を阻止するには、抵当権の不存在や、無効、又は被担保債権の不存在や、消滅を事由として、抵当権設定者又は抵当不動産の第三取得者が、抵当権不存在確認請求を本案として抵当権実行の禁止ないし競売手続停止の仮処分を求めることができる。抵当権実行禁止仮処分があった場合は、競売申立てが許されないとするのが実務の大勢である。学説もこれに賛成している。また、競売手続停止の仮処分がされた場合は、競売手続の続行はできない。なお、実務では、詐害行為によって第三者が抵当権を設定した場合とか、後順位の抵当権者がいたずらに抵当権を実行しようとする場合などに、一般債権者又は他の抵当権者から競売手続停止を求めることがある。これらの仮処分命令が執行裁判所に提出されると当然に競売手続は停止される。

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