工場及び工場財団に対する競売の申立て

 工場の所有者が工場に属する土地又は建物に抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は民法三七〇条の規定による効力の及ぶ範囲が拡大されて、その土地又は建物に「附加シテ之トー体ヲ成シタル物」のほかに、その土地又は建物に「備付ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用二供スル物ニ及フ」ものとされています。したがって備付機械器具がたとえ第三者の手に渡っても、第三者が即時取得をしない限りは抵当権の効力が及んでいるので、土地又は建物等と一体として換価の対象となる。したがって、抵当権者は搬出された目的機械等をもとの備付場所である工場に戻すことを求めることができる。備付機械器具その他工場供用物件に対して第三者が動産執行をした場合には、工場抵当権者は第三者異議の訴えを起して差押えの取消しを求めることができる。
 抵当権の効力の及ぶ備付の機械、器具等は、抵当権の目的である土地又は建物の所有者の所有に属する場合に限るのであって、抵当権の設定当時抵当権の目的である土地又は建物の所有者(抵当権設定者)の所有に属しない機械、器具等には抵当権の効力が及ば庖いものと解されていましたが、最高裁は工場抵当法第二条により抵当権の効力の及ぶ機械、器具等は、抵当権の設定された土地又は建物と所有者を一にするものであることを要するとしながら、抵当権の目的である工場に属する土地又は建物の所有者と、その備付の機械、器具等の所有者が異なる場合であっても機械、器具等の所有者がこれを承諾しているときはその土地又は建物に設定した抵当権の効力は機械、器具等にも及ぶものとの見解を採っています。

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 第一順位の抵当権は土地、建物に、第二順位の抵当権は工場抵当法の工場に属するものとして土地建物及び建物備付の機械について各設定登記があり、第一順位の抵当権者が競売の申立をした場合には、工場抵当法七条二項の趣旨により、土地、建物につき競売開始決定があれば差押えの効力は機械器具にも及ぶのであるから、裁判所は競売申立債権者から機械器具目録を提出させたうえ機械器具を併せて競売すべきです。ただしこの場合の売却代金の配当方法は、第一順位の抵当権者には土地、建物代金より、第二順位の抵当権者には代金と機械器具代金を加えた代金から配当をすることになる。
 工場財団を目的とする抵当権実行としての競売手続は、工場の所在地の地方裁判所の管轄に属する。工場財団を組成する工場が数個の地方裁判所の管轄地に跨がり、又は工場財団を組成する数個の工場が数個の地方裁判所の管轄地内にある場合には、民訴二四条の規定により直近上級裁判所が申立により指定した地方裁判所が管轄裁判所となります。
 工場及び工場抵当法三条による機械器具に対する競売申立の様式としては、不動産競売申立書と同様であるが、物件目録は次のように記載することになります。
 競売の申立てをした工場財団が、数個の工場を以て組成されている場合には、各別に競売の申立てはできないが、抵当権者が個々のものとして売却に付することを希望する場合には、競売の申立てと同時か又は売却期日の公告のあるまでにその旨の申立ができる。この個々に売却に付することができるとした趣旨は、競売を容易ならしめることと、一部の換価代金をもって抵当権者を満足させることも可能であることを考慮されたものです。したがってこの命令があったときは工場財団に属する土地、建物、機械器具等を各別に売却に付することになるのです。
 抵当権設定後に工場財団に属する土地上に建物を築造した場合には、抵当権者はその建物を工場財団とともに競売することができる。この場合建物には抵当権の効力が及んでいないから、抵当権者はその建物の売却代金からは優先弁済を受けることはできない。しかし、その建物が既に築造してある建物の付属建物である場合には当然に抵当権の効力が及ぶのでその代金からは優先弁済を受けることができる。
 抵当権設定後に工場財団に属する土地又は建物に備付けた「機械器具其ノ他工場ノ用二供スル物」は、それが工場財団目録に記載されていない物でも当然に抵当権の効力が及ぶので、売却して差し支えない。しかし工場財団目録への記載は第三者に対する対抗要件とされているので、目録に記載されていない備付物件の代価からは優先弁済を受けられない。また、第三者は工場財団に対する差押えの登記の後も差押の効力を以て対抗されることなくこれについて有効に所有権を取得し引渡しを受けることができる。
 工場財団が一括して売却され、買受人が売却代金を支払ったときは、裁判所書記官は工場財団の所有権移転登記を管轄登記所に嘱託しなければならない。この場合同時に工場財団に属する土地、建物、地上権、不動産賃借権、登記船舶、登録自動車、工業所有権又はダム使用権等について権利移転の登記又は登録を物件の管轄登記所、特許庁、国土交通大臣等に嘱託しなければならない。
 工場財団を個々のものとして売却した場合には、各買受人が取得した権利の移転登記又は登録を述べた各官署に嘱託する。この場合工場財団は消滅するのであるから、裁判所書記官は工場財団の管轄登記所に工場財団の消滅の登記を嘱託し、かつ、各組成物件についてなされた工場抵当法二三条及び三四条記載の抹消の嘱託をしなければならない。

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