不動産競売の申立て

 競売の申立ては、書面でしなければならない。旧法下においても競売の申立ては書面によることになっています。
 債権者は、担保権者です。競売手続の当事者としては債権者、差押えの効力が生じた後は、差押債権者と呼称する。債権者を表示するには、自然人であるときは氏名及び住所を、法人であるときは、名称及び主たる事務所、営業所又は本店の所在地それに代表者を記載しなければならない。
 被担保債権を抵当権と共に譲り受けた者は、その被担保債権の弁済斯が到来して抵当権実行の要件が具備している限り競売の申立てをし、原抵当権者と同様の優先弁済を受けることができる。この場合に、抵当権の移転を第三者に対抗するためには、抵当権移転の登記を要するし、被担保債権については、債権譲渡の対抗要件を備えなければならない。
 民事執行法においては、抵当権移転の登記を経てあれば、たとえ債権譲渡についての対抗要件を備えなくても競売の申立てをすることができるのです。
 抵当権付債権を差押えて転付命令を得た債権者は、抵当権移転の登記を経て目的不動産の競売申立てができます。来登記抵当権の実行も認められているので、移転の登記を経なくとも競売申立ては可能です。なお、競売手続進行中にその被担保債権につき転付命令を得た債権者は、当該競売手続の申立債権者の地位承継人として権利を行使できます。
 抵当後件債権の譲渡契約が解除され、債権及び抵当権が旧権判者に復帰した場合、その者は債権復帰についての通知をする以前でも抵当権に基づく競売の申立てをすることができます。

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 代位弁済によって求債権を取得した者は、債権者に代位して競売の申立てをすることができる。債権者に代位するについては、保証人のように弁済をするについて正当の利益を有する者が代位弁済した場合は当然ですが、弁済をするについて正当な利益のない者が弁済した場合は、代位による抵当権の移転について債権者の承諾を必要とし、かつ、債権譲渡と同様の対抗要件を備えなければならない。この場合競売の申立てをするについて、代位原因について公文書をもって証明するとすれば多少面倒な面があるので、実際には代位による抵当権移転の登記をしてその登記簿謄本を提出することになろう。保証人であっても、保証するにっき債務者の委託を受けた場合と委託を受けない場合とで求償の範囲が異なる。求償権者が代位によって権利を行使するには民法五〇一条による制約があることに注意すべきである。保証人が事前求償のために競売の申立てをする場合には、抵当権を実行し得る状態にあるということが判るように記載しなければならない。
 転抵当の場合においては転抵当権者が競売の申立てをすることができることは当然ですが、原抵当権者もさきに述べたようにその債務者(抵当権設定者)に対する債権額が、転抵当権者の債権額を超過する場合には、自ら競売の申立てをして超過額に相当する弁済を受けることができる。
 同順位の多数の抵当権者(共有者)は、被担保債権が可分の場合には、平等の割合による権利を有するのであるから、それぞれ単独で競売の申立てをすることができる。
 国が抵当権者である場合は、申立人は国、その代表者は法務大臣とすべきです。会社、銀行等の支店が取扱つた抵当権について競売を申立てる場合には申立人は何会社支店、又は何銀行支店とすべきではなくて必ずその本店を表示すべきです。けだし、支店は一般に独立の人格を有しないからである。しかし銀行の場合はその抵当物件の登記簿に取扱店名が記載されているときは、載判所のなす競売手続に関する一切の通知書には取扱支店を附記する取扱になっているため、申立人何銀行本店とするほか取扱支店名を表示する。
 債務者は、実行すべき当該抵当権によって担保される債権の債務者である。旧競売法下においては、申立人と対立する相手方はなく、債務者及び所有者は手続上の主体ではなく利害関係人にすぎないと解されていたが実務はこれらを当事者として取扱っていた。民事執行法は担保権の実行としての競売について、競売申立人の相手方があることを明らかにしており、債務者は担保権の実行としての競売において、その負担する債務の消長を来たし、それ故に担保権の不存在又は消滅を理由として執行異議の申立てをすることができることを考えると、債務者も対立当事者である相手方として取扱うのが相当であると解されている。
 債務者を表示するには、自然人であるときは氏名及び住所を、法人であるときは、名称及び主たる事務所、営業所又は本店の所在地、それに代表者を記載する。
 債務者若しくは所有者が死亡し、相続人があることが明らかでないとして相続財産管理人が選任されている場合には、「債務者亡何某相続財産法人、相純財産管理人何某」というように表示する。
 相続人がいない場合とか、不明の場合で相続財産管理人が選任されていない場合には、民事訴訟法五八条、五六条の規定を準用し、執行裁判所に特別代理人選任の申請をした上競売の申立てをすることができる。
 連帯債務は、その債務が当該担保物件によって担保されなければ、その連帯債務者はここにいうところの債務者とはならないから、申立書には抵当権が設定されている連帯債務者のみを表示すれば足りる。
 所有者は、抵当不動産の所有者です。不動産の共有持分や登記された地上権、永小作権のように不動産とみなされるものの競売にあっては、共有持分権者、地上権者、永小作権者です。不動産の共有持分に対する競売の申立ての場合には、競売の相手方である共有者の氏名、住所と、その共有者の有する持分の割合を記載すべきである。最低売却価額はぞの持分について定めることになるからです。債務者と所有者が同一人であるときは「債務者兼所有者」と表示する。債務者以外の第三者が所有する不動産に抵当権を設定したのであれば、その第三者(物上保証人)を所有者として表示する。債務者若しくは物上保証人から抵当不動産の所有権を取得した第三者(第三取得者)があるならば、その第三取得者を所有者として表示することになる。所有者が法人であるときはその代表者をも表示する。
 所有者の現住所が登記簿の記載と異なるときには、登記簿の住所と現住所とを併記すべきです。
 抵当権設定登記後に所有者について相続が開始したのにかかわらず相続登記が未了の場合には、申立人は競売申立前に民法四二三条、不動産登記法四六条ノニにより、相続人に代位して相続登記をなしその相続人を所有者として表示すべきです。
 物件所有者の相続人が所在不明のため、相続財産管理人が選任されている場合には、抵当権者は、家庭裁判所からその審判書を得て、相続人に代位して当該不動産について相続財産法人の登記をしてから競売の申立てをすることになる。
 所有者中には所有権移転の仮登記をした者は含まれない。
 債権者が代理人によって競売の申立てをするとき、又は債務者若しくは所有者に法定代理人があるときには、その代理人の氏名、住所を表示する。
 弁護士又は法令によって裁判上の行為をすることができる代理人以外の者も、執行裁判所の許可を受けて代理人となることができるが、許可がされた場合には、申立書に代理人の氏名、住所を表示する。
 なお、法人も代理人となることができる。
 担保権実行によって他人の財産を換価することが許される根拠は担保権にほかならないから、登記してある場合には、どのような担保権であるかを明確に表示すべきです。未登記抵当権の場合には、担保権の存在を証する判決又は公正証書等に基づき何年同月何口座と座との間に設定した抵当権と記載する。
 数個の抵当権をもって競売の申立てをする場合は、その数個の抵当権を表示する。しかし、実務ではこのような例は極めて少なく、そのうちの一個の抵当権で競売を申立てるものが多いようです
 被担保債権の表示は、担保権を特定するために記載する。その記載は債権者がどういう被担保債権について弁済の請求をし、どれほどの配当等を受けようとするかを明らかにするためにも必要です。したがって、請求すべき債権の種類、元本債権額及び利息、遅延損害金の利率とその起算口を債権証書と照合して、正確に記載するようにする。
 延滞利息は民法三七四条第一項本文の規定により満期となった最後の二年分にっいてのみ、また、遅延利息あるときはこれを通じて二年分についてのみ行い得るにすぎないのですが、これは後順位抵当権者その他配当要求債権者との関係においての制限であって、債権者と債務者、抵当権設定者に対する関係においてはこのような制限は受けない。しかも設定者は元本はもとより、延滞利息、遅延利息はその全額を弁済するのでなければ抵当権を消滅し得ないのであるから、抵当権者は競売申立ての際には民法三七四条の規定を考慮する必要はなく延滞利息等の全額を記載すればよい。
 担保権は、被担保債権の全額の弁済を受けるまで行使することができるので、被担保債権が残存する以上、たとえそれが僅少の額であろうとも、担保の目的となっている不動産全部について競売の申立てができる。競売申立ての段階では、不動産がどのように評価されるのか、どのような優先債権が出てくるか判らないため、超過差押禁止の原則は採られていないからです。
 根抵当権の被担保債権の額は、根抵当権の確定時に存在する債権の元本、利息その他の定期金及び遅延損害金の全部であり、それが極度額を超えるときは、極産額を限度として権抵当権の実行ができる。したがって、民法三七四条一項前段の適用はなく、債権極度額の限度内であれば満期となった最後の二年分を超えても優先弁済を受けられる。根抵当権の元本の確定期日が定められていなくとも、競売を申立てて開始決定かあったときは、元本が確定し、その時に存在する元本債権が担保されることになる。
 根抵当権実行としての競売の申立ての場合には、根抵当権の内容と、現存債権額を明らかにすべきです。
 被担保債権の弁済期到来の事実を表示すべきことは法一八一条、規則一七〇条には規定はないが、執行手続上は強制執行においては執行開始の要件とされ、強制執行の申立てをする債権者が主張、立証しなければならないのであって、担保権の実行としての競売の場合にも同様に解することができる。実際問題としては被担保債権を特定するためには当然弁済期がいつかということを記載するし、損害金発生の始期を明らかにする上にも記載することが望まれる。ただし、弁済期に関する証明は添付する必要はない。
 被担保債権の一部について競売の申立てをする場合には、申立書にその旨及びその範囲を記載しなければならない。
 被担保債権の一部によって抵当権の実行をした場合でも、抵当権は消滅する。一部請求は、目的不動産を競売しても債権全額の満足を得られる見込みのないときに、満足を得られる見込み額に減縮して申立てるとか、差押えの登記の登録免許税を節約するために行われるようです。
 このように一部請求をした場合には、たとえ競売手続の進行中に目的不動産が高価に評価され、債権全額の満足を得られることになっても、差押債権者は債権計算書によって請求額を拡張することは許されない。一部請求の場合、法六三条の無剰余の判断はその一部請求金額によってなされるのであり、それに本来全部請求できるものを債権者みずからその一部分に限定したのであるから、その申立てた請求順に拘束を受けるのはやむを得ないことです。また、後に請求の拡張を認めると、登録免許税のせん脱を許すことにもなるということも拡張を許さない一つの理由です。この場合請求していない残額について請求するには、新たに競売の申立てをして二重開始決定を受けるべきです。抵当権者が二重開始決定を受けるには配当要求の終期までにすることを要しない。配当要求の終期は、一般債権者及び一般先取特権者のみにあるのです。一部請求をした担保権者が別に債務名義を得れば、配当要求の終期までに配当要求をして売却代金の分配にあずかることができる。
 ただ例外として利息、損害金等の附帯の債権で申立時に特定することはできても、請求できないもの、例えば申立時から配当時までの間に生ずる利息又は損害金は、債権計算書によって拡張請求ができる。
 競売の申立書には、滞除権者への抵当権実行の通知をした事実及び滌除権者から、所定の期間内に滞除の通知がなかった事実を記載しなければならない。
 申立書には、競売の対象となる不動産を特定して記載しなければならない。登記してある不動産の場合は、登記簿の表示欄の表示と符合していることを要する。
 未登記の建物に抵当権の設定をうけた抵当権者が、競売の申立てをする場合には、不動産の表示は物件所有の証明書の表示と符合せしめるべきです。
 共同抵当物件については、執行裁判所を同じくする限り同時に競売の申立てができる。数個の担保物件に対してはその全部又は一部について競売の申立てをするかどうかは、申立債権者の自由な選択による。抵当不動産を換価する手段として競売の方法によるのは、債権の回収を目的とするためであるから、数個の抵当不動産のうちその一部をもって債権の回収が確実に見込まれる場合には、他の不動産は競売の目的不動産から除外することもあり得る。
 共同抵当物件の一部について競売の申立てをして申立債権者が債権全額の弁済を受けた場合に、当該売却物件に弁済を受けられない後順位抵当権者が存在するときは、その後順位抵当権者は、競売の対象とならない他の共同抵当物件に対し、共同抵当権者に代位して抵当権の実行をすることができる。この場合共同抵当権者から後順位抵当権者に対する権利の移転は、債務者や抵当権設定者に対しては登記がなくても主張できるが、配当後に他の共同物件上に権利を設定した者に対しては、民法三九三条の代位の附記登記がなければ対抗できない。
 抵当建物が増築のために登記簿の表示と異なる場合には、申立人において民法四二三条、不動産登記法四六条ノニの規定に基づいて所有者に代位して表示の変更登記をするのが望ましいことであるが、申立人がこのような手続を経ないで登記簿謄本の表示によって競売の申立てをした場合でも、建物の同一性を失わず申立書に表示された建物が現実に存在する建物を指し、これが競売の目的となっているものと認められる限り、裁判所はそのまま競売手続を進行して差支えない。この場合裁判所は入札又は売却決定期日公告その他に登記簿表示の地積、床面積と、現況のそれとを併記して手続を進めることになるから、申立書にはこのように現況の地積又は床面積を併せて記載するようにすべきです。
 不動産の共有者はその持分につき抵当権を設定することができるので、抵当権者はその持分について抵当権を実行することができる。この場合の不動産の表示は、その共有不動産全部を掲げなければならない。そして前述のように同時に共有者全員の氏名、住所並びに持分の割合を記載する。持分の割合の記載は競売不動産の特定のために必要であるばかりでなく、最低売却価額の決定にも必要だからです。
 土地区画整理法による換地予定地の指定がなされた土地に対し抵当権を有する者は、なお従前の土地について競売の申立てをなし得るのであって、換地予定地そのものには抵当権を取得するものではないから、従前の土地を表示してなすべきです。
 抵当権の目的たる土地と、そうでない土地とが合併されて一筆の土地となっていても、これがために抵当権は消滅するものではないから、抵当権者はその抵当権の実行のため右の合併土地に対し競売の申立てをすることができる。しかし、従前の土地を標準として競売しなければ売得金の配当その他に支障を生ずるから、債権者において代位し分筆の登記をした後に申立てるのがよい。
 目的物が農地である場合には、買受希望者は都道府県知事又は農業委員会の買受適格証明書がないと買受申出ができないから、農地であることを明確に表示すべきです。

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