担保権の実行としての不動産競売

 旧法における担保権の実行としての競売は、旧民事訴訟法による強制競売のように、債権者が債務名義を取得して、それに基づいて国家の公権力により債務者の財産の処分権を奪って換価し、その代金から債権の満足を受ける手続とは異なり、担保権者は、担保権の有する優先弁済権に内在する換価権に基づいて換価した代金から満足を受け得るとしていましたが、ただこの換価は、担保権者が随意の場所で随時に売却できるのではなく、旧競売法により競売裁判所に競売申立てをして裁判所により換価してもらうことにしていたのです。
 ところで民事執行法の下では、担保権の実行としての競売は民事執行の一種として規定されたが、ここに述べた考え方は民事執行法においても受け継がれ、不動産競売をするには従前と同様債務名義は不要という建前が採られることになりました。これは旧競売法の制定以来債務名義なしで担保権の実行を許してきたため、今これを必要とするとしては、取引界の混乱を招くことになるので、これを避けようとした配慮によるものです。
 しかし、強制競売手続と不動産競売手続とは、このように本質的な違いはあっても、両手続は共に国家の公権力の介入により債務者の財産を換価するのであるから、立法治的に考えれば両者を統一的に立法することが合理的であるので、民事執行法ではできる限り統一が図られることになり、不動産競売については、民事執行に共通の規定である第一条から第二一条までが適用され、強制執行の総則規定では債務名義に関する諸規定を除き、その一部を準用するほか、不動産の強制競売の規定が一般に準用しています。これによって両手続はかなり共通なものとして規定されるに至ったのです。
 なお、不動産を目的とする担保権は、使用権能を伴う不動産質権を除き、目的物の交換価値を把握しているにすぎないので、使用収益権能を取上げてその収益から債権の満足を受けるための執行である強制管理は、担保権の実行としては認められない。この点は旧法と同様です。

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 不動産を目的とする担保権の実行としては、民事執行法は旧法と同様競売のみが認められています。競売は執行裁判所が執行機関となり、強制執行と同じく開始決定によって差押えの宣言をし、差押えの登記、配当要求、二重差押え、剰余主義の採用、超過売却の禁止、賃料代払の許可、申立債権者及び買受人等のための保全処分等従来の任意競売にはなかった規定が設けられているが、そのほか開始決定の通知、現況調査、評価書、物件明細書の写しの備置き、無剰余の場合の保証の提供方法、買受けの申出をすることができる者の制限、不動産の売却方法、売却決定期日を開くことができない場合等の通知、売却許可決定の公告等、代金納付期限、保証として提供されたものの換価、配当期日等の指定、計算書の提出の催告、売却代金の交付、配当等の手続は、すべて強制競売の場合と同様に行われる。
 ただし、これらの規定巾規則二五条三項、三七条一号、五一条四項の「債務者」とある部分は、「債務者及び所有者」と読み替えるべきで、二三条一号、二号、二七条、二九条一項四号ハ、五号ニ、六号、五九条三項、六一茶巾の「債務者」とある部分は、「所有者」と読み替えなければなりません。
 抵当権者が、抵当権を実行するため競売の申立てをするためには、実質的要件として抵当権及び被担保債権が有効に存在していること、それについて履行遅滞のあること、形式的要件として当事者能力、訴訟能力、代理権、管轄権の存在、第三取得者に対して抵当権実行の通知をしたことというような一定の要件を具備していることが必要です。
 他人の財産を換価することが許される根拠は、担保権にほかならないから、抵当権の実行をするには有効な抵当権が存在することを要する。たとえ抵当権が存在するように登記簿上記載されていても、抵当権設定契約が無効であるとか、被担保債権消滅等によって抵当権が現存していなければ、競売手続の開始は許されない。
 抵当権実行のためには、抵当権設定登記がされていることは要件ではない。債務者又は所有者との間に有効な抵当権設定契約が存すれば足りる。抵当権の譲受人も競売の申立てができるが、この場合も抵当権移転の附記登記は必要でない。また抵当権と共に被担保債権を譲受けた者は、その通知、承諾のある以前でも競売の申立てができる。抵当権設定及びその移転登記は第三者に対する対抗要件に過ぎず、抵当権設定の当事者間にあっては対抗要件を具備する必要がないからです。
 しかし、抵当権設定の登記がないと第三者に対しては対抗できないので、未登記で競売の申立てをした抵当権者は、配当の段階では他の債権者に優先弁済権を主張することができない。したがって、当該手続において配当を受ける場合も、法八七条一項四号の債権者ではなく、同項一号の差押債権者として、他の一般債権者と同順位で配当を受けることができるにすぎない。また抵当権と共に被担保債権の譲渡を受けた者が、第三者に対する対抗要件である通知、承諾とかその確定日付をとらないと、競売の申立てはできても、同様配当の段階では他の債権者に劣後したり、配当を受けられない場合が生ずる。
 被担保債権に転付命令を得た債権者が競売の申立てをする場合は、債権の移転につき対抗要件を備える必要はないし、抵当権移転の登記も要しない。旧法下では執行命令が確定しても、抵当権移転の登記は債務者との共同申請によらなければならなかったため、債務者の協力が得られないときは登記手続を求める訴えを提起するなど面倒な問題があったが、民事執行法は転付命令が確定したときは、差押債権者の申立てにより執行裁判所の裁判所書記官において抵当権移転の登記の嘱託をすることになっている。
 登記された抵当権についてその設定登記が無効な場合であっても、抵当権設定契約が実体上有効であり、かつ、法定文書がある限り抵当権を実行することができるが、この場合は抵当権設定登記がない場合と同様の結果になる。
 抵当権の仮登記権利者は、競売の申立てをすることはできない。仮登記の状態の抵当権では、抵当権の存在を公証していないと解されるからです。もっとも公正証書とか、確定判決等をもって担保権の存在を証明すれば競売の申立てができる。しかし、抵当権設定の仮登記後に第三取得者の登記がされている場合には、仮登記のままでは第三取得者には対抗することができないので、申立時の所有者が抵当権設定者でないときには、競売申立ては不適法として却下される。
 後順位の抵当権者も競売の申立てをすることができる。この場合には競売の結果消滅する最先順位の抵当権設定当時の状態で競売に付せられ、買受人もその状態で所有権を取得する。したがって最先順位の抵当権設定登記後に賃借権や、地上権を取得し、又は所有権に関する仮登記をした者は、これらの権利を買受人に主張できない。
 先順位の抵当権が存在するために、後順位の競売申立債権者は、配当を受けられない見込のある場合には、法六三条により競売手続が取消されることがある。後順位の抵当権者のした競売の申立てが先順位の抵当権を害する目的をもってなされたような場合は、先順位抵当権者は抵当権実行を阻止するための仮処分を求めることができる。
 抵当権者が、抵当不動産の所有権を取得した場合には、混同によって抵当権は消滅するのであるが、後順位抵当権者がある場合に先順位抵当権が消滅することになると、後順位抵当権者が不当に利益を得る結果になるので先順位抵当権は消滅しないこととされている。この場合先順位抵当権者は自己所有の不動産に対し競売の申立てをし、他人の不動産である場合と同様の順位で配当を受けることができる。
 合筆等により一筆の土地の一部に抵当権が存する場合にはその全部の土地について競売の申立てができるが、差押えの登記嘱託前に債権者は競売開始決定正本を代位原因を証する書面として、所有者に代位して分筆登記手続をしなければならない。
 抵当権者が、民法三七五条一項により、その抵当権を他の債権の担保にした場合に、抵当権実行ができるかどうかについては、原抵当権者がその抵当権の全部を転抵当にした場合より転抵当権者の被担保債権額が大きい場合は、原抵当権者は競売の申立てができない。原抵当権者の披担保債権額が、転抵当権者の披担保債権額より大きい場合には、議論のあるところで、担保価値移転説又は抵当権質入説を受けた残りにつき弁済を受けることになるとしている。これに対し、抵当権及び債権貫入説によると原抵当権者の競売の申立ては許されないこととなる。原抵当権者にその差額について競売権を認めた場合転抵当権者に特に損害を与えるならば格別、そうでない限り原抵当権者にも競売中立権を認めてよい。
 抵当権は債権担保のためにあるのであるから、担保されるべき債権が存在しなければ、抵当権の実行は許されない。抵当権設定当時に存在した債権が、競売における買受人の代金納付前に弁済、相殺、更改、免除等により消滅したことが明らかになれば、債務者の異議、抗告によって競売事件は無効となり買受人は抵当不動産の所有権を取得することはできない。披担保債権の譲渡又は被担保債権に対する転付命令が無効なため、その債権を担保する抵当権も取得しなかった者が競売を申立てた場合は、その競売は無効です。
 被担保債権の一部が消滅しても、残余があれば抵当権は消滅しないから、抵当権の不可分性により全抵当物件について競売の申立てができる。
 競売手続の開始後に、披担保債権と共に抵当権が譲渡されその対抗要件が具備された場合には、譲受人は執行裁判所にその事実を証する公文書を提出して自己のために競売手続の続行を求めることができる。
 競売手続の開始後に、競売申立人に一般承継事由が生じた場合においては、その承継の事実を証する文書を提出して競売手続の続行を求めればよい。
 民法五〇〇条による代位弁済があっても抵当権は消滅しないから、代位権者が抵当権者に代位して抵当権の実行ができるので、代位弁済が競売手続の開始後にされた場合は、代位権者は抵当権移転の登記をし、その登記簿謄本を提出して競売手続を続行できる。
 抵当権の披担保債権が質入された場合には、抵当権の随伴性により抵当権も質権に服することになるので、抵当権者は債権の取立てができない。したがって債権取立てのための競売の申立ても許されない。
 根抵当権は当座貸越契約、手形割引契約等の継続的取引契約から生ずる数多の債権の一定の極度額を担保する抵当権であり、債権が現存しなくも、継続的取引関係から生ずる将来において発生すべき基礎関係があるときは成立するが、根抵当権を実行するには特に根抵当権によって担保される債権が確定し、かつ、債権の弁済期の到来したことを要する。
 抵当権の実行をするためには、被担保債権が履行遅滞の状態にあることが必要です。履行期の定めがあるときは、その期限の経過により、履行期の定めのないときは、その履行の催告により遅滞に陥るので、直ちに抵当権を実行することができる。特約により期限の利益を喪失させて履行期前に抵当権を実行するには、競売申立書にその事由を記載して疎明しなければならない。割賦払の債務は、毎回の履行期に割賦額を支払う義務があるから、各履行期にその支払を怠るときは各割賦額について遅滞に陥るものであり、不履行の部分については直ちに抵当権の実行ができる。抵当権の不可分性により各割賦額についても目的不動産により担保されたものであるからである。割試金の支払について、その支払を怠るときは期限の利益を失い全額に対し履行期の到来するために、債権者の期限の利益を喪失させる意思表示を要するときには、その意思表示をした旨を明らかにして競売の申立てをすべきである。履行期到来前にした競売の申立ては不適法であるから申立ては却下される。裁判所がこれを看過して手続を開始しても、これに対し異議をもって競売手続は取消される。しかし異議の裁判がされるまでに、履行期が到来したときはその瑕疵は治癒される。履行期前に競売を申立て手続が開始された場合、売却許可決定確定までに期限が到来したような場合も、その瑕疵は治癒される。履行期前の競売の申立てでも、売却許可決定が確定し、代金の納付があれば、買受人は有効に目的不動産の所有権を取得する。
 転抵当権者が担保権を実行するには、自己の債権及び原抵当権の被担保債権について履行期の到来することを要する。
 抵当権者が、抵当権を実行しようとするときは、その抵当権設定後に抵当不動産を取得した者に、自ら抵当不動産の代価を評価算定させてその価額を抵当権者に支払って抵当権を消滅せしめるいわゆる湯除の制度を認めて、その第三取得者の利益を保護するため、あらかじめ抵当権の実行をする旨を第三取得者に通知しなければならないとされている。第三取得者が通知後一ヵ月内に鴉除権を行使しないときにはじめて抵当権者は競売の申立てをすることができる。
 滌除は、抵当不動産の第三取得者が抵当権者に対して一定の金額を支払い又は供託して抵当権を消滅させようとするものであって、第三取得者の提供する金額は、その者が任意にその代価を評価算定した金額であり、これにより抵当権を消滅せしめるためには、抵当権者の同意を要する。もし抵当権者がこれを拒否するためには増価競売という煩雑な手続をする義務があり、この競売においてこの提供された金額より一割高で買受ける者がないときは、抵当権者は自ら一割高で買受ける義務を課せられる。また、競売を欲しない抵当権者に競売を強いることになるし、手続面からは第三取得者がこの通知の欠航を理由として不服の申立てをして、抵当権実行を阻害すること甚だしいものがあるなどから、不当な制度だともいわれています。
 抵当権実行の通知をなすべき者は、抵当権を実行しようとする者であって、通常は抵当権者であるが、抵当権者の競売権を代位して行使すること0できる債権者代位権者、抵当権の譲受人で、その譲渡につき対抗要件を備えた者、取立債権者、国税徴叙法による債権差押があったときの徴収職員です。
 通知を要する第三取得者は、滌除権を有する者であって抵当不動産について所有権、地上権、永小作権を取得した者です。これらの権利を有する者は抵当権者に対抗できる者でなければならないから、その権利についての登記を経た者に限られる。
 第三取得者が仮登記権利者である場合、仮登記権利者が滌除権を有するか否か問題のあるところですが、判例は当初は滌除権を否定した態度をとっていたが、大正末期から仮登記権利者にも滌除権を認め、学説も一致してこれを支持していることから、仮登記権利者にも抵当権実行の通知を要する。この仮登記は単に手続上の条件を具備しない場合、すなわち不動産登記法二条一号の仮登記の場合は問題はないが、権利移転請求権保全の仮登記権利者については議論のあるところで、停止条件付であるときには民法三八〇条によってその条件の成否未定中には滌除権を有しないので通知の要なしとする見解がある。これに対し判例は条件成就の有無にかかわりなく、通知を要するとし、仮登記権利者にも滌除権を認めており、戦後の高裁判例もこれと同旨に解しているものが多く出ている。これらの判例によると不動産登記法二条一号、二号を問わず通知をしないと競売の申立てはできない。学説は不動産登記法二条一号二号の仮登記とも民法三八一条の第三取得者と、同三七八条の第三取得者を別異に考え、同三八一条の第三取得者は通知後一ヵ月以内に権利を取得し本登記をする可能性がある以上、右一号二号のいずれの仮登記か、条件成就しているかにかかわりなくすべて通知を要するが、滌除には本登記を要すると解している。滌除の手続をするには本登記を要するとする学説の立場が正当です。
 抵当権者より先順位にある仮登記権判者は、第三収得者ではないから、通知の必要はない。この仮登記権判者が本登記をすると、木登記の結果抵当権設定登記は無効に帰するからです。例えば一番抵当権と二番抵当権との間に仮登記がある場合には、一番抵当権者が抵当権を実行するときは、仮登記を有する第三取得者に対し通知を要するが、二番抵当権者が抵当権を実行する場合には、通知を必要としない。
 抵当権実行の通知の方法については何らの規定がないが、通常は通知書到達を明確にするため配達証明付内容証明郵便で送達することを要する。この通知は登記簿記載の第三取得者の住所にあててすれば、実際に到達しなくても、通知が通常到達したであろうときから一カ月内に第三取得者から債務の弁済又は濡除の通知を受けないときには、抵当権者は競売の申立てをすることができる。意思表示は到達しなければ効果が生じないので、相手方が所在不明の場合には、公示送達の方法をとらなければならないとする民法九七条ノニの規定は、抵当権実行の通知のような観念の通知にも一般的には適用されるのですが、抵当権実行にもこれが要求されると実行が遅延することになることから判例、学説とも第三取得者の所在が明らかでないときには登記簿記載の住所にあてて通知をすれば足りるとしている。そして通常到達すべき時から一カ月を経過すれば競売の申立ては許される。競売申立債権者が第三取得者の住所を知っているときは、その住所にあてて通知すべきはもちろんである。第三取得者が昼間不在のため郵便による送達ができない場合には、執行官に対し私文書の送達を依頼することが考えられる。
 この通知が行われず、また、なされた通知に瑕疵がある場合には、競売申立権がないから、競売の申立ては却下される。既に競売開始決定がなされたときは、債務者及び通知を受けなかった第三取得者等の執行異議、売却許可決定に対しては執行抗告により競売手続は取消される。この通知をせずに競売の申立てをしたときでも、第三取得者がその点を指摘して競売手続に不服を申立てず売却許可決定が確定した場合には、瑕疵が治癒されたものとし、他の利害関係人はその点を主張して抗告することはできない。売却許可決定が確定し売却代金が納付されたときは、第三取得者は通知を受けないことを理由として買受人への所有権移転の効力を否定することはできない。
 抵当権者は民法三八一条の通知が第三取得者に到達した後一か月経過しなければ競売を申立てることはできない。ただ第三取得者が滌除権を放棄し、又は的所権を行使しない意思が明白なときは、一か月の期間経過前でも競売の申立てができると解されているこの場合には、第三取得者からその旨の書面の提出を求め、競売申立書に添付しなければならない。期間経過前に申立てがされた場合には、たとえ競売開始決定時に既に一か月経過したとか、開始決定後競売取消までの間に一か月を経過したときでも、申立ては適法を欠くことになって却下又は手続を取消さなければならないとするのが判例、通説です。
 一か月内に第三取得者から適法な滌除の通知がされたときは、抵当権者は増価競売を請求することができるのであって、もはや抵当権の実行は行うことができない。
 抵当権者が抵当権実行の通知を発してから一か月の期間が経過して競売申立てが可能になっても、競売の申立てをなさずして長期間を経過したときは、その通知は効力を失う。したがって競売の申立てをするには改めて通知しなければならない。東京地裁では、六か月を経過している場合は、改めて通知をしなければならないとする取扱しである。裁判所によっては一年位までは許容している例がある。

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