差押不動産の強制管理における債権者の競合と保護

 強制管理にあっても二重開始決定は認められます。すなわち、強制管理開始決定がされた不動産について、更に強制管理の申立てがあったときは、執行裁判所は、後の申立てにっいても開始決定をすることとし、先の強制管理の事件で手続を進めることになります。この場合裁判所書記官は、二重開始決定のあったことを先行の開始決定に係る差押債権者及び管理人に通知しなければならない。管理人にも通知をする趣旨は、二重開始決定がなされたことにより、先の開始決定に係る管理人は後の開始決定に係る事件に開しても管理人である地位を有することを知らせ、併せて配当に加えるべき差押債権者の存在を知らせることにあるのである。先の開始決定に係る強制管理の申立てが取り下げられ、又はその手続が取り消されたときは、後の強制管理開始決定に基づいて当然に手続は続行します。また、先の開始決定に係る強制管理の手続が停止されたときは、裁判所書記官は、この旨を後の開始決定に係る差押債権者に通知しなければならない。先の強制管理の手続が停止されたときは、執行裁判所は、後の強制管理の申立人の申立てにより、後の強制管理開始決定に基づいて手続を続行する旨の裁判をした上で手続を続行することになる。
 この場合、裁判所書記官は、この旨を債務者及び管理人に通知しなければならない。
 強制管理において配当要求をすることができるのは、執行力のある債務名義を有する債権者に限られている。配当要求は執行裁判所にすることになる。この方式については、強制競売と異なるところはない。仮差押債権者や一般の先取特権者であっても配当要求は認められない。抵当権者は強制管理の手続内においては、収益につき優先権を主張し得ないので配当要求は認められない。抵当権者や一般の先取特権者は、競売の申立てが認められているし、仮差押債権者は、仮差押命令告知の日から二週間の執行期間内に、仮差押の執行として、独立して通常の強制管理の申立てができるから、配当要求を認める必要がないからです。
 配当要求があったときは、裁判所書記官は、差押債権者、債務者及び管理人に通知しなければならない。管理人に対し通知するのは、管理人が配当等を実施するからです。
 強制管理の場合は、強制競売と異なり、配当要求の終期ということはないから、強制管理手続が継続している限り、配当要求をすることができる。ただし、執行裁判所が定める期間ごとに配当等が実施されるので、その期間までに配当要求をした分は、それまでに収取された収益から分配を受けられる。
 執行停止書面が提出されていても、配当要求は許される。その場合でも執行裁判所の定める期間までに配当要求をしていないと、その期間の分の配当等は受けられない。
 国税等の交付要求についても、執行裁判所が定める期間ごとに執行裁判所に対してする。
 執行裁判所は、不適法な配当要求は却下することになる。この却下の裁判に対しては、執行抗告ができる。

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 管理人は、強制管理開始決定のされた不動産を管理するため、債務者の占有する不動産については、債務者から強制的にその占有を取り上げて第三者に賃貸することができるのですが、そのために債務者はその居住権を奪われることとなる。
 この場合、当該不動産を直接占有する債務者を直ちに追い出してしまうのでは、転居先が容易に見つからないような場合には、強制管理の執行のために債務者に対し苛酷な結果を来すことになる。そこで、債務者は直ちに転居先を得ることができないときは、執行裁判所に対し強制管理の目的建物の使用許可の申立てができる。
 この使用許可には債務者の申立てが必要で、執行裁判所が職権ですることはできない。建物使用許可の要件は債務者の居住する建物につき強制管理開始決定があったこと、強制管理開始決定があった時点において当該建物に債務者が居住していることが要件であるから、債務者が強制管理開始決定があった後に居住を開始した場合には建物使用許可の申立てはできない。また、強制管理開始決定後に債務者から賃借して居住した者も本条によりその使用を許可されることはない。
 債務者が他に居住すべき場所を得ることができないこと、住居は人の生活に不可欠のものであるから、代替住居への移転が容易でない場合にのみ本条の許可が認められる。通勤上不便であるから使用したいというような理由では、許可にはならない。
 使用許可は居住に不可欠な部分に限定されるから、営業用店舗は原則として含まれない。ただし管理人は、債務者に営業用店舗を賃貸して引き続き使用させることは許されるとされている。
 建物の使用許可は、債務者及び債務者と生計を一にする同居の親族の居住に必要な範囲において、期間を定めてなされること。生計を一にする同居の親族には、婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者も含まれる。
 本条は、債務者及び同居の親族の生活を保護するための規定であるから、生計を一にしない同居の親族は本条によって保護を受けられない。建物使用許可申立書には手数料を要しない。
 執行裁判所は、申立てを認容するときは、債務者等の居住に不可欠な必要最小限度の範囲において、使用期間を定めて建物の使用を許可する旨の決定をする。この期間は、債務者が他に居住すべき場所を得ることのできない事情、そして他に居住すべき場所を得られるようになるであろう期間などを勘案して定められる。この決定は債権者、債務者に送達する。この決定に不服がある者は執行抗告をすることができる。
 建物の使用許可があれば、管理人はその裁判の限度で管理の権限が及ばなくなる。
 しかし、債務者等が管理人の管理を妨げたり、又は事情の変更があったときには、執行債権者又は管理人の申立により、建物の使用許可決定を取り消し、又は変更することができる。
 債務者等による管理人の管理の妨害行為は有責である必要はないと解されている。この取消し又は変更の決定に対しては、執行抗告をすることができる。
 強制管理により債務者の生活が著しく困窮することとなるときは、執行裁判所は、管理人に対し、収益又はその換価代金の分与を命ずることができるとしている。債権執行においては、債権者、債務者の生活の状況等を比較して差押命令の全部又は一部を取り消すことができるとしているが、強制管理においても、それとの均街上債務者保護の見地から、このような規定が設けられたのです。
 強制管理は、不動産の収益を目的とする執行であるから、債務者が家賃収入だけで生計を維持しているような場合には、当該建物に対する強制管理の結果、生活を継続して行くことが困難となることがあり得るから、債務者の申立により執行裁判所は、管理人に対し収益又はその換価代金からその困窮の程度に応じて必要な金銭又は収益を債務者に分与すべきことを命ずることができる。
 分与すべきものは金銭以外の現物の場合もあろうが、通常は、金銭を分与することになろう。また、分与の方法は一時金の場合もあるが、通常は、定期的に一定金額の分与を命ずることとなるものと思われる。この申立には手数料を要しない。
 この決定に対しては、執行抗告をすることができる。
 管理人は、分与を命ぜられた金銭等は、最優先順位で収益等の中から支給しなければならない。
 管理人は、決定により分与した金銭又は収益の明細を執行裁判所に報告しなければならない。
 収益等の分与命令について、事情変更等により変更、取消しができること、その変更、取消決定に対して執行抗告のできることは、建物使用許可の場合と同様です。

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