差押不動産の管理人

 執行裁判所は、強制管理手続の実施に当たらせるため、強制管理の開始決定と同時に管理人を選任しなければならない。管理人の資格には、特に制限はないが、管理人として適切な能力を有する者であれば、裁判所は自由に人選することができる。実務上は執行官や弁護士が選任されることが多いが、債権者も管理人とすることができる。債務者を管理人とすることができるかについては見解が分れていますが、債務者を管理人とすることは相当でない。
 旧法下では、法人が管理人となれるかどうか争われていましが、新法は信託会社、銀行その他の法人も管理人となれることを明らかにしている。貸ビル、貸マンション等その管理に専門的知識経験を必要とするものも少なくないことから、適切な立法といえます。一つの強制管理事件について、必要があれば散人の管理人を選任してよいことになっています。
 管理人に選任するに当たっては、管理人の承認が必要です。
 管理人の選任決定は、執行裁判所が職権で行う。この決定は、開始決定とは別個の裁判です。

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 管理人が職務を執行する場合には、その資格を証する文書を携帯し、利害関係を有する者の請求があったときは、これを提示する義務があるので、執行裁判所は、選任証書を発行して、これを管理人に交付することにしています。
 管理人の選任は執行裁判所が職権で行うものであるから、その裁判は、管理人に告知されるほかは、規則二条二項により誰にも告知されない。そこで規則六五条一項では、裁判所書記官は管理人の氏名又は名称を、差押債権者、債務者及び収益の給付義務を負う第三者に対し通知しなければならない旨を規定している。
 開始決定と同時に管理人選任決定をする原則的場合には、これら二つの決定は一つの決定書によってされるのが通例であるから、開始決定が送達され又は告知される際に、この通知がされることになる。
 管理人が解任され又は辞任した場合には、当然、後任者を補充するため選任決定がされることがあり、また、管理人は数人あることもあるので、後日追加的に選任されることもあるが、この場合には裁判所書記官は規則六五条一項により管理人の氏名又は名称を、差押債権者、債務者及び第三者に通知しなければならない。
 強制管理は、国家が債務者の有する収益権能を奪うのですが、この場合、国家自らその権能を行使せずに、管理人を任命してこれにあたらせるのであるから、管理人は、あたかも強制競売における執行官と同様に執行機関ではなく、強制執行法上の執行補助機関です。その意味で、管理人は債権者や債務者の代理人ではなく、管理及び収益のために必要な行為は、管理人自身の独立の意思決定に基づいて、自己の名において職務としてこれらの行為を行うことができる。
 管理人により収取された収益は、債務者の所有に属する。また、管理人の設定した賃貸借契約の効果は、債務者に及ぶことになります。けだし、管理人は債務者の財産を管理するにすぎないからです。
 管理人は正当な理由があるときは、執行裁判所の許可を得て辞任することができる。正当な理由としては、病気、公職への就任などその例である。執行裁判所は、正当な理由があると判断したときには許可をしなければならない。
 管理人が辞任したときは、裁判所書記官は、差押債権者、債務者及び収益の給付を命じられた第三者に対し、その旨を通知しなければならない。もっとも、管理人が辞任後直ちに新たな管理人が選任されるときは、その選任の通知をする際に、通知書に前任者が辞任したことを明らかにすれば足りる。
 辞任した管理人は、法一〇三条により、遅滞なく執行裁判所に計算の報告をしなければならない。
 管理人は、強制管理のため必要な費用の前払と、執行裁判所の定める報酬を受けることができる。管理人は、不動産の管理、収益の収受、配当手続をするものであるから、これに対しては相当の報酬を支払うことを要する。報酬額を決定するには、裁判所は債権者、債務者を審尋することもできる。これらの費用等は、収益又はその換価代金から支払うことができるが、債権者の提供した予納金からも支出することができる。この費用等は、執行費用の一部として優先的に支払われる。この報酬額等の決定は、利害関係者に影響があるので、これに不服があるものは執行抗告をすることができる。
 既に債務者の設定した賃貸借がある時には、管理人としては当該賃貸借の賃料を取り立てればよいから、目的不動産の直接占有を取得しなくてもよいが、債務者が目的不動産を直接占有している場合は、管理人は、管理及び収益のため、債務者の占有を解いて自らこれを占有した上でこれを賃貸する等の方法で収益を挙げる必要がある。債務者の占有を取り上げる場合、管理人が抵抗を受けるときは、執行官の立会いを求めてこれを排除することができる。また、占有のため閉ざされた戸を開く必要があるときには、管理人としては自ら戸を壊して開く権限を持たないので、執行官に援助を求めることができる。援助を求められた執行官は、閉ざされた戸を開くため必要な処分をすることができる。
 管理人が執行官の援助を受ける場合は、執行官に対する手数料は管理人から執行裁判所に予納し、執行裁判所から執行官に支払うことになる。
この費用は、管理費用として後に収益から償還される。
 第三者の占有する不動産については、その者に対する明渡し又は引渡しを命ずる債務名義があるときか、本人の同意がなければ目的不動産の引渡しを受けることはできない。
 管理人は、強制管理の目的を達するために、不動産の管理、収益の取取に必要な一切の行為をすることができる。例えば、他人を使用して管理の目的たる耕地を耕作させて収益を挙げ、土地や建物を賃貸して賃料を取り立てるがごとき行為をなし得る。建物の価値保存のため相当の修理もすることができる。収益は、不動産の性質によって定まる通常の用法に従ってすることを要する。例えば、耕地を宅地に変じたりして収益すべきではない。また、管理人は、管理収益の権限を超え、目的不動産を譲渡したりすることはできない。賃貸目的のマンションであれば、通常の賃貸借の設定は可能です。
 管理人は収取した天然果実は、これを任意な手続で換価してその金銭を配当等に充てることができる。
 以上の行為をするために必要があるときは、訴えを提起したり、強制執行をすることができる。
 管理人が不動産を民法六〇二条の期間を超えて賃貸するについては、債務者の同意を得なければならない。長期の賃貸借契約を締結することは、債務者の利害に大きな影響を及ぼすからです。
 管理人が数人ある場合には、共同してモの職務を行う。ただし執行裁判所の許可を受けて職務を分掌することができる。管理人が数人あるときの第三者のする意思表示の相手方は、管理人の一人にすれば足りる。これは破産法一六三条、会社更生法九七条と同旨の規定です。
 管理人は、執行裁判所の補助機関として、その管理行為について執行裁判所の指揮監督を受ける。
 管理人は、善良な管理者の注意をもってその職務を行わなければならない。この注意義務に違反したことにより利害関係者に損害を与えたときは、管理人はその損害の賠償をする責任がある。管理人が数人あるときは、連帯して賠償責任を負担する。この注意義務違反により損害が発生している場合には、裁判所の指揮監督により管理人に対し不当費消金の返還の求めにより、その提出が得られたような例を除き、利害関係者は執行手続外で訴え等により請求をすることになる。
 管理人の任務が終了した場合には、管理人又はその承継人は、執行裁判所に対し収益等の計算の報告をしなければならない。計算報告書には、配当計算書を添付して提出する。これ以外に執行裁判所が監督権の行使として、各期の配当等の実施に関する計算の報告書の提出を求められたときは、これを提出しなければならない。
 執行裁判所は、重要な事由があるときは、利害関係を有する者の申立て又は職権で、管理人を審尋した上で、管理人を解任することができる。重要な事由とは、執行裁判所の具体的な指揮や行動基準に従わなかった場合とか、あるいは不適任であることが判明したことなどがこれに該当する。
 管理人が解任されたときは、裁判所書記官は、差押債権者、債務者及び収益の給付を命じられた第三者に対し、その旨を通知しなければならない。管理人が解任されて後任者が直ちに選任されたときは、後任者の選任の通知書に、前任者が解任された旨を明らかにすれば、解任の通知を兼ねたことになる。

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