差押不動産の強制管理の開始手続

 強制管理の開始手続は、執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てによって開始される。強制管理については、不動産所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
 強制管理の申立書には、規則二一条各号に掲げる事項のほか、規則六三条に規定する事項を記載しなければならない。
申立書に記載すべき規則二一条の事項とは、債権者及び債務者並びに代理人、債務名義を表示することとされている。申立書にはそのほかに収益の給付義務を負う第三者がある場合には、その第三者の表示及び給付義務の内容を記載しなければならない。収益の給付義務を負う第三者とは、例えば、ビルの賃借人のように賃料を支払う義務を負っている第三者をいうのです。その第三者を記載させるのは、執行裁判所が、強制管理開始決定をする際に収益を管理人に給付すべき者を命ずることとされているからで、収益の給付を命ずるには、給付の内容が特定されている必要があるからです。
 収益の給付義務を負う第三者が存在するか否かは、執行裁判所にはわからないのであるから、第三者が存在する場合であっても、申立書にその記載がない以上、執行裁判所は、第三者がいないものとして開始決定をするほかない。
 この場合には、もちろん、第三者に対する収益の給付命令は発せられず、開始決定も第三者には送達されない。
 申立時に、収益の給付義務を負う第三者が存在することは差押債権者に判明しているが、その第三者の氏名・住所が不明のときは、記載がない場合と同じ取扱いとなるでしょう。
 債権者が弁護士又は法令によって裁判上の行為をすることができる代理人以外の者を代理人として強制管理の申立てをするとぎは、執行裁判所の許可を受けなければならないことは、強制競売の申立ての際に述べたところと同じです。

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 申立の際の添付書類については、規則二三条の規定が準用されるので、同条に規定する書類を添付しなければならない。そうすると強制管理の申立書には、債務者の所有名義の登記簿謄本、表示の登記だけで債務者が所有者として表示されていないものについては、登記簿謄本と債務者の所有に属することを証する文書、未登記の不動産については、債務者の所有に属することを証する文書と所有権の登記を申請するに必要な図面を、それにいずれの場合にも不動産の公課証明書を添付することになる。この公課証明書は、管理人が不動産の収益又はその換価代金の中から支払うべき公課の額を明らかにするために添付するのです。
 申立人は、手続に必要な費用として執行裁判所の定める金額を予納しなければならない。
 申立てが適法であれば、執行裁判所は、強制管理の開始決定をする。開始決定においてに、債権者のために不動産を差し押える旨の宣言がされ、債務者に対し収益の処分を禁止し、収益を債務者に給付すべき義務を負う第三者があるときは、その第三者に対し収益を管理人に給付すべき旨を命じなければならない。
 収益の給付義務を負う第三者が存在しているが、その氏名、住所が不明であるときは、開始決定中で給付を命ずることはできないので、記載がないまま開始決定をする。この場合には、管理人は速やかに調査して執行裁判所に報告すべきです。開始決定後に第三者の存在が明らかになったときには、執行裁判所は、職権でその者に対し収益を給付すべき旨を命ずる裁判をし、その第三者に送達しなければならない。この裁判は、開始決定の内容を補充するものであるから、その裁判(更正決定)が第三者に送達されたときに、その第三者との関係では、効力が生ずることになる。したがって第三者は、裁判が送達された後の収益について給付義務が生ずるのです。
 ちなみに、第三者に対する収益の給付命令が発せられた後に、当該第三者に変動、例えば賃借人甲が強制管理の目的物件から退去して、新たに乙が賃借人となった場合のごときがあった場合には、管理人は速やかにその旨を執行裁判所に報告する。この場合執行裁判所は、職権で変動後の第三者に対し収益を給付すべき旨を命ずる裁判をし、同裁判を第三者に送達しなければならない。
 申立てが不適法であれば却下される。この却下決定に対しては、執行抗告をすることができる。
 ところで、強制管理開始決定に対しては、強制競売開始決定と異なり、執行抗告をすることができることになっている。強制管理は、債務者から使用収益権を奪い、必要があるときはその占有をも奪うこともあり得る制度であること、開始決定の段階で抗告をさせないと、他の手続段階では不服申立てができないことから、特に認められているものであると解されている。
 強制管理開始決定は、債権者に告知し、債務者には送達しなければならない。
 収益の給付義務を負う第三者があるときは、その第三者にも送達される。
 強制管理開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに差押登記の嘱託をする。その手続は強制競売の場合と同様です。
 強制管理の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、租税その他の公課を所管する官庁又は公署に対しその旨を通知しなければならない。
 強制競売においては、公課所管官庁に対し、債権の届出の催告をすることとしているが、その趣旨が、交付要求の読会を与えるべきものと考えたところにあるなら、強制管理においても、同様に租税債権に交付要求の機会を与えるべきであるとの考えからこのような通知の規定が設けられたとされている。通知をすべき公課所管官庁は、強制競売における債権届出の催告をすべき場合と同様で、税務署、市区町村役場、都道府県税事務所などです。
 通知を受けた公課所管官庁は、執行裁判所に対し交付要求をすることができる。
 差押えの効力は、原則として強制管理開始決定が債務者に送達された時に生ずる。開始決定の送達前に差押えの登記がされたときは、その登記の時に差押えの効力が生ずることになる。
収益の給付義務を負う第三者に対しては、開始決定がモの第三者に送達された時に差押えの効力が生ずる。
 差押えの登記がされると、債務者は不動産競売の場合と同様不動産について処分制限を受けることになるし、管理権も有していないので、債務者が目的不動産を譲渡するとか、用益権の設定をしても手続上は無視される。しかし、債務者の処分も強制管理手続に影響のない限度では処分制限に反しないので、強制競売の場合の差押えの効力とは若干内容を異にする場合がある。例えば、強制管理開始決定による差押え登記後に抵当権設定がされても、当該不動産からの果実の収取には影響を及ぼさないから有効なものとみなされる。ただし、差押え登記後の抵当権に基づいて競売をしても売却することはできないので、結局強制管理には対抗できない結果になる。
 強制管理開始決定後に目的不動産を譲渡した場合でも、強制管理はそのまま続行されることになる。もし新所有者に対し強制競売の申立てがされ、売却手続が終了しても、強制管理手続はそれを無視して引き続いて行われる。したがって、新所有者に対する強制競売手続は、事実上停止しておく取扱いが相当です。
 目的不動産が譲渡された場合旧所有者に対する債権者は、もはや強制競売の申立てをすることができないので、強制管理手続に配当要求をして債権の回収をはかるよりほかないことになる。
 強制管理開始決定がなされると、債務者は収益についての譲渡、放棄、質権等の権利の設定や、収穫や、取立てはできなくなり、また、不動産の占有も奪われることもあり、その後の収穫、換価、取立て等は、すべて管理人が行うことになる。また、収益の給付義務を負う第三者は、債務者に支払をしても弁済の効力はなく、管理人に二重支払をしなければならなくなる。

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