競売の配当意義の訴え

 配当期日において配当異議の申出をした債権者及び無名義債権者に対して配当異議の申出をした債務者、所有者は、配当異議の訴えを提起しなければならない。配当異議の訴えは、配当期日から一週間以内に提起する必要がある。もし一週間以内にこの訴えを提起したことを証明しないときは、先の配当異議の申出は取り下げたものとみなされ、配当表記載どおりに配当が実施される。
 配当異議の訴えの性質については、旧法下では次のような説が対立していたが、民事執行法においてもこの見解の対立は解消されないと思われる。この訴えの構造は旧法と変りはないことを考えると、旧法下の通説である形成訴訟説が維持されるでしょう。

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 原告勝訴の結果、従前の配当表における配当に比べて配当表の変更の結果受ける利益を基準とすべきであるから、債権者が異議の訴えを提起する場合は、配当表に計上されている原告への配当される金額と、更正を求める配当額との差額を基礎にすべきであり、債務者がこの訴えを提起する場合は、原告(債務者)が勝訴の結果被告(債権者)が受けることができず他の債権者又は債務者に交付されるべき配当額が、原告の受ける利益であるから、その額を基準とする。
 原告は、配当期日に配当表に異議を申し出た債権者又は債務者、所有者である。異議を申立てた債権者が数人あって共同訴訟の要件を備えていれば、共同して訴えの提起ができる。被告は異議申立どおりに配当表が変更されることによって不利益を受ける債権者です。数名の債権者を共同被告とするときは通常共同訴訟人となる。配当異議の申出をしなかった債務者は、債権者が提起した配当異議訴訟において、正当な配当受領権者と考えられる当事者側に補助参加をすることができる。
 原告は請求の趣旨として、被告の債権に対する配当額の全部又は一部を滅殺し、自己の利益に配当表の変更を求める申立の内容を明確に表示する。
 請求原因(異議事由)としては、本訴は配当表の変更を求めることを目的とするから、その変更をもたらす理由を主張することができる。例えば、被告の債権の全部又は一部が存在しないこと(不成立、消滅など)、担保権の不成立若しくは消滅、配当の額が不当であること、被告の差押え、又は配当要求が無効、取消事由のあることなど、およそ被告が配当表の記載どおりの配当を受ける理由のないことに関する一切の事由を主張できる。その挙証責任の分配は一般原則による。
 異議の事由は、異議申立の際に主張したものと同一であることを要しない。また、配当期日までに生じたものに限定する必要はなく、口頭弁論終結までに生じた事実を主張できる。
 既判力のある債務名義を有する債権者に対する配当異議の訴えの場合に、原告は既判力の標準時以前に生じた実体上の事由を主張して被告の債権の存否、額を争うことができるかどうかについて旧法下では、原告は債務者の承継人として既判力自体を受けるわけではないが、元来一般債権者は債務者の現在の財産状態から満足を受くべき以上、債務者と第三者間の関係には当然には干渉できず、債務者が既判力に拘束される状態にあることを承認してかからねばならない点で既判力の反射効を受けるものであるとする消極的な見解と、債務者が特定の債権者と相通じて馴れ合い訴訟を提起し、仮装の債権につき既判力のある債務名義を得させることは容易であるから、他の債権者が反射効に妨げられてその債権者を配当から排除できないというのでは、執行妨害者を不当に利する結果となるとして、原告は既判力の標準降以前に生じた事由を主張して被告の朧朧の存在を争い得るものとする積極的な見解があります。
 民事執行法下においても、同様の見解が考えられるが、債権者が原告のときには、既判力の効力を受けるわけではないので、後説を妥当と考える。
 被告は、原告の異議権者としての適格を争うために、原告の債権の不存在、その差押えや配当要求の無効であることを主張できるし、さらに債務者が原告である債権者に対して有する一切の抗弁を主張してよいと解されている。
 被告も、原告と同様配当期日後に生じた事由を主張することができる。
 原告が最初の口頭弁論期日に出頭しないときには、出頭できなかったことについて特別の事由がある場合を除いて、裁判所は訴えを却下しなければならない。
 配当手続における異議の完結を可及的すみやかにさせ、配当を迅速になさしめる趣旨です。
 この却下の判決に対しては、原告が出頭できなかったことについて正当な理由があるときには、控訴をし、これを主張立証すべきです。
 もし却下の判決が確定したときは、債権者は判決の確定証明書を提出して配当額の交付を受けることとなります。
 最初の口頭弁論期日に原告、被告とも出頭しないときは、裁判所は、民訴二三八条によることなく、法九〇条三項を適用して訴えを却下することになります。
 訴えが訴訟要件を欠いているときは訴却下の判決をし、原告の配当異議が理由がないときは請求棄却の判決がなされる。
 原告の配当異議の全部又は一部に理由がある場合には、その理由のある限度で配当表上の被告への配当額を取消すと同時に、係争配当額についてどの債権者にどれだけの額を支払うべきかを具体的に定めなければならない。もし具体的な配当表の変更を命ずるのが適当でないと認められる場合には、判決理由において配当異議を認容する範囲を明らかにした上、主文において旧配当表の被告への配当額を取り消すと同時に新たにその部分の配当表の調製を命ずることになる。この配当異議を認容する判決には仮執行宣言を付することはできない。
 配当異議訴訟の判決の効力については、債権者提起の場合と、債務者提起の場合とに分けて述べる。
 債権者が他の債権者に対して提起した配当異議の訴えは、実質は債権者間の配当額の争いに過ぎないから、勝訴判決による配当表の変更は原、被告となった債権者のみで配当額が変動するものです。すなわち、被告の債権が存在しない場合においても、原告の債権の全額の弁済が認められる限度で配当表を変更すれば足り、それによって剰余を生じても、他の債権者や債務者、所有者が配当異議の申出をしていない限り、剰余金を他の債権者や債務者、所有者に交付する必要はない。その意味で債権者が提起する配当異議の効果は相対的であり、訴訟当事者とならなかった債権者や債務者には影響を及ぼさないと解されます。
 債務者、所有者が配当異議の訴えを提起し勝訴したときは、実質は債務不存在(被担保債権不存在)確認の訴え、又は担保権不存在確認の訴えによる判決があったと同様であるから、その判決の効力は、全債権者のために生ずるので、裁判所は敗訴した債権者を除いて、配当異議の申出をしなかった債権者のためにも配当手続をやり直す旨の判決をすべきです。その意味で債務者、所有者の提起する配当異議の効果は絶対的であるということができる。
 同一優先抵当権者に対し、劣後する債権者と、債務者、所有者から配当異議の訴えが提起されて競合する場合には、相対効と絶対効をどう調整するかが問題となりますが、判決の効力は全員に及ぶとする絶対効によって処理するのが相当です。
 異議訴訟において、原告の請求について棄却の判決があり、その判決が確定したときは、配当表が確定するので、債権者は、判決正本と判決確定証明書を執行裁判所へ提出すれば、裁判所書記官は、供託した配当額の支払委託の手続をとることになります。
 原告が勝訴した場合には、判決主文に基づいて配当を実施し、あるいは配当表を変更し、配当表の作成を命ぜられたときは、判決の理由に従って配当表を作成して配当を実施することになります。
 配当異議の訴えは形成訴訟ですが、すべての債権者が配当期日において配当の順位、額について合意が成立すれば、執行裁判所は、その合意に従い配当を実施しなければならないとされているので、配当異議訴訟においても、訴訟上の和解ができると解される。また請求の放棄、認諾も許される。和解をする場合の対象となるのは、係争配当額に限られることに注意すべきである。和解成立の場合又は請求の放棄、認諾がなされたときは、債権者は、その調書の正本又は謄本を執行裁判所に提出して配当を受けるべき金額を請求することとなります。
 配当異議訴訟が取り下げられたとき、又は当事者双方が第二回以後の口頭弁論期日に出頭しないか、出頭しても弁論をしないで退廷して三月以内に期日指定の申立てをせず、訴訟が取り下げられたとみなされたときは、配当表は確定するから、債権者は裁判所から取下げ又は取下擬制を証する書面を得てこれを執行裁判所に提出して配当額の請求をする。

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