競売の配当手続

 執行裁判所は、売却代金の納付があった場合、弁済金の交付手続によって終了し得る場合を除き配当表に基づいて配当を実施しなければならない。配当を実施するときは、配当期日において配当表を作成しなければならない。
 売却代金を配当すべきときは、執行裁判所は、配当期日を定めなければならない。
 配当期日は、買受人が代金納付期限に代金を納付した後に定めることにしていますが、それは買受人が代金を納付する前に指定し、同期日を各債権者に通知したところ、買受人が代金を納付しない場合には、手続は無駄なことになるからです。もし、買受人からの代金納付が確実になされるとすれば、代金納付期限を定めると同時に、あらかじめ同期限終了後の適当な日を配当期日に指定しておくことも考えられる。
 買受人が配当を受けるべき債権者であるときは、売却決定期日に出頭して、期日の終了までに執行裁判所に、配当を受けるべき額を差引いた代金を納付する旨の申出をしてこれが認められたときは、その代金は配当期日に納付することができる。したがって、この申出があったときは、執行裁判所は、売却許可決定が確定したときは、代金納付期限を定めないで、配当期日を定めなければならない。
 配当期日は、代金が納付された日から一か月以内、差引納付が認められたときは、売却許可決定が確定した日から一か月以内の日に定めるべきことは弁済金交付の場合と同じです。そのために売却許可決定が抗告審において確定したときは、抗告審の裁判所書記官は、速やかに執行事件記録を原審に返送すべきです。
 一ヵ月の期間については、執行裁判所の事情によりその期間に配当期日を間くことが不可能か、そうでなくても困難であるという特別の事情があるときは、その制限はなく指定できる。

スポンサーリンク

 配当表には、売却代金の額、各債権者について、債権の元本、利息その他の附帯の債権、執行費用の額並びに配当の順位及び配当の額を記載しなければならず、配当表は、配当期日において出頭した債権者及び債務者、所有者を審尋し、即時に取調べることができる書証の取調べをしたりして作成するものであるが、期日におけるこのような作成を容易ならしめるため事前に配当表の案を準備しておくのが実務の実際である。そのための資料としては、競売申立書や配当要求書、債権の届出書、登記簿謄本等がありますが、これらの書面が提出された後に弁済等による債権額の変動を生ずることがあるし、殊に根抵当権によって担保される債権のごときは登記簿の記載では現存額を知ることは不可能なこともあり、また、利息等の計算をすることも必要となります。更に執行記録に現われていない執行費用については、債権者の申出をまつほかないので、配当期日が定められたときは、裁判所書記官は、各債権者に対し債権計算書を提出するよう催告をすることとしている。
 この催告は、配当期日呼出状と共に、又は同呼出状に記載して送達される。
 催告の方法については、弁済金交付の債権計算書提出の催告についての説明と同様です。
 催告を受けた債権者は、執行裁判所から催告書と共に送付を受けた債権計算書に所要事項を記載して、一週間以内に執行裁判所に提出しなければならない。申立債権者は、債権計算書によって申立ての際の請求債権の拡張は許されない。
 仮差押債権者の場合には、債権届出の際に仮差押決定の正本又は謄本を提出していなければ、債権計算書に被保全債権額の疎明資料として決定正本を添えて提出する。仮登記担保権者については、被担保債権の疎明書類として債権証書を提出させることが望ましい。登記簿の記載によっては被担保債権の額は判らないからです。もし、仮登記担保権者が債権証書の提出を拒んだ場合は、執行裁判所は、提出された債権計算書の記載によって配当表を作成するほかない。その配当額に不服のある者は配当異議をもって争うことができる。執行記録によっては判明しない執行費用の額については疎明資料を提出すべきです。
 一週間を過ぎて提出された計算書が無効でないことにっいては、弁済金交付の個所で述べたとおりです。
 催告を受けた債権者が計算書を提出しないときは、執行裁判所は、競売申立書、執行記録に存する登記簿謄本、配当要求書、債権届出書に基づいて計算する。根抵当権の場合は、登記簿に表示の極度額全額が存在するものとして取扱う。
 仮差押債権者が計算書を提出しないときは、記録上(登記簿謄本)も債権額を明らかにし得ないので、仮差押債権者に仮差押決定正本又は謄本を提出させるか、それも提出しない場合は、執行裁判所は職権をもって仮差押発令裁判所に照会するか、記録取寄せなどして被保全債権額を確定すべきです。
 仮差押事件記録が廃棄処分のため、結局仮差押えの被保全債権額が判らない場合には、債権の届出もしていないであろうから、執行裁判所としては、その仮差押えはすべての関係で存在しないものとして取扱うことになる。これに対して不服があれば執行異議で争うことができる。
 国税等に交付すべき金額は、租税公課所管官庁が提出した交付要求書によって知ることができるが、交付要求書が提出された後に滞納税金が納入され、交付要求額に変更があることが考えられるので、実務では配当期日前に交付要求官署に連絡して債権計算書の提出を求めるのが通例です。
 配当期日には、法八七条一項各号に掲げる債権者及び債務者を呼出し、その意見を聞いて配当表を作成し、配当に関し異議ある場合には、異議を述べさせることになる。したがって、配当期日には配当を受けるべき債権者全員と債務者、所有者を呼び出さなければならない。呼出状は特別送達の方法による。
 配当期日に出頭して異議を述べないと、配当表は異議を述べなかった者にも絶対的な効力を及ぼすので、期日の呼出しは厳格に行われなければならず、関係者への呼出しが一人でも欠けることがあったり、呼出状の送達ができなかったときは配当期日を開くことができない。
 そのために配当期日の呼出しには法一六条の送達の特例が適用され、いったん執行裁判所に競売の申立てや、配当要求の申立て、債権の届出をし、または文書の送達を受けた者は、住所、居所、営業所、事務所を変更したときは、その旨を執行裁判所に届出なければならないとされ、届出をしない者に対しては、執行記録に現われたその者の住所等にあてて書留郵便に付して発送すれば足り、この場合は発送したときに送達の効力が生ずる。抵当権者等で届出義務を負わない者に対する呼出しは、公示送達又は外ロ送達によるほかない。
 代金納付後配当期日終了までに執行取消文書が提出された場合の当該債権者は配当を受けるべき地位を失うこと、差押債権者について執行取消文書又は執行停止文書が提出されても、配当手続は行われなければならないことについては、弁済金交付手続において述べたところと同様です。
 執行裁判所は、配当期日において、あらかじめ債権計算書等に基づいて作成した配当表の原案を出頭した各債権者、債務者、所有者に示し、その意見を聴いて決定する。配当表に記載された債権者の権利関係や、債権の順、執行費用の順について争いがあるときには、出頭している債権者や債務者、所有者を審尋したり、即時に取調べることのできる書証の取調べをすることができる。これは配当期日においては、弁済により被担保債権不存在確認の訴えにおいて敗訴した債権者や、請求異議の訴えによって敗訴したことが明らかである場合とか、その他債権者の債権が存在しないとか、執行が認められない事実が即時に取調べのできる書証によって明白な場合には、他の債権者は配当異議の訴えによるまでもなくこれを主張してもよいとする趣旨であるとされている。この意味で配当表は裁判的な要素があるといえる。しかし、実体権の存否の確定は、本来訴えによって判断すべきことであるから、例えば債権の消滅の主張に対しいずれとも判断できない場合は、消滅しないものとして処理し、後は配当異議の方法で解決するのが相当です。
 全債権者が配当期日に出頭し、全債権者間で配当の順位及び額について合意が成立すれば、執行裁判所は、その合意に従って配当表を作成する。執行裁判所があらかじめ作成した配当表の案と異なる合意が成立した場合は、その合意に従って配当表を改める。蓋し配当は債権者のためのものであるから、強いてその意思に反する配当をする必要がないからです。
 しかし、ある債権者と債権者の間で個別に配当順位及び順についての合意はできない。その後の配当手続が複雑になるからで、それは配当手続外で個別的に交換をして金銭の授受をすればよい。
 配当の順位及び順の変更について債務者の同意は必要でない。その理由は、民法では担保権の順位の譲渡は、債務者の同意を要せず、自由に認められることであり、また、各債務の弁済責任を負う債務者には、どの債務について売却代金を充当するかという指定権はないと解されるからです。
 配当の順位及び順の変更について合意が成立する事例は、旧法下ではほとんどなかったが、もし合意が成立した場合には、裁判所書記官はその旨を配当期日調書に記載して明確にすべきです。
 配当期日を指定して各債権者に債権計算書の提出を催告し、提出された計算書を検討した結果、売却代金で全債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合は、各債権者及び債務者に対し配当期日の呼出しをしていたときは、その配当期日において弁済金の交付手続を行うことができる。このような手続をしたとしても、債務者は配当異議の申立の機会を与えられているのであるから、特段の不利益を受けることはない。
 配当表は、債権者が一人しかいない場合、又は二人以上いても売却代金で各債権者の債権及び勤行費用の全部を弁済できるときを除いては、必ず作成しなければならない。別々に競売の申立のあった数個の不動産を併合して一括売却に付した場合に、各不動産上の権利関係が異なるとか、債権者、債務者、所有者を異にするようなときには、各事件ごとに各別に配当表を作成すべきです。配当表は、配当期日において作成されるのが法の建前ですが、実際には執行裁判所は、各債権者提出の債権計算書等に基づいて配当期日前にあらかじめ配当表の原案を作成し、配当期日において出頭した各債権者、債務者、所有者に示して、意見を聴きそれによって異議の申出がなければ配当表は確定することになる。もし、すべての債権者が配当期日に出頭し、すべての債権責問で配当の順位、順について合意が成立すれば、その合意に従って配当表を作成し直して配当を実施することになるのです。
 このように配当表は配当期日において作成され、その期日に異議申出がないことにより確定するのであるから、配当期日において配当表を変更するという概念はない。この配当表は、確定することにより配当期日に異議を述べなかった者にっいても絶対的に効力を及ぼすのです。
 配当は競売による売得金を配当財団とし、これを各債権者に分配する手続であるから、配当にあたっては、まず配当に供すべき不動産の売却代金を確定しなければならない。売却代金とは次の金額をいう。
 不動産の代金、不動産の代金とは、買受人が納付した代金です。売却代金から配当を受けるべき債権者が買受人であるときは、その申出により代金から自己の受けるべき配当額を差引いた額を納付する。
 不動産の一括売却が許された場合でも、各不動産ごとに売却代金を定める。一括売却の手続は、二つ以上の手続が平行して進められるのであり、また、それぞれの物件について利害関悟入が異なる場合があるからです。この場合には、売却代金の総額を各不動産の最低売却価額に応じて案分した額を各不動産の売却代金の額とする。
 無剰余となる場合に、差押債権者が買受人の資格をもたない場合に提供した保証のうち、買受申出額から代金の額を差引いた残額に相当する金額。
 買受人が代金を納付しないために返還を請求することのできなくなった買受けの保証。
 強制執行(競売)手続費用、強制執行費用は、強制執行の実施のために要した費用はもちろん、執行中立準備のために要した費用も含む。執行申立準備のために要した費用としては、執行文付与に関する費用、確定証明書付与に要した費用、債務名義及び付属書類の送達申請費用並びに送達費用、資格証明書、登記簿謄本、交付請求のための費用、公課証明書の交付を受けるための費用、債務者(所有者)に代位して相続登記をした費用、相続人不分明の不動産につき選任した相続財産管理人又は特別代理人の選任費用及び報酬、抵当権実行としての競売の場合には、このほかに第三取得者に対する抵当権実行の通知、増価競売通知に要した費用などが考えられる。
 執行(競売)手続の費用には、競売申立から、その終了までの一切の費用を含む。これらの費用は競売手続に必要と認められるものに限るのであって、強制競売(競売)の申立費用、差押えの登記に要する費用、換価に要する費用、手続のための通知費用、差押債権者のための保全処分に要した費用、地代の代払の費用等ですが、費用の範囲については最高裁、民事執行手続書式集の費用計算書を参照されたい。
 強制執行(競売)費用は、当該強制執行(競売)を実施するに当って全体のために必要な費用であり、償還を受けるべき債権者は共益費用として優先的に弁済を受けることができるのであって、これらの費用は裁判所が職権で計算して債権者に支払うのです。この計算は、裁判所書記官が執行記録に基づいて民事訴訟費用等に関する法律、同規則、執行官の手数料及び費用に関する規則などの規定に従って額を確定するのであるが、もし記録上明らかでないもの、例えば債権者代位権の行使による登記手続費用、仮差押執行費用、執行手続上の保全処分に関する費用、地代の代払の費用などについて支払を求めるのであれば、当該債権者は疎明書類を添付して債権計算書により明らかにすべきです。
 ところで先行事件が取消し又は取下げのため、後行事件により手続が進行し売却された場合には、先行事件の手続によって支出された費用のうち、後行の手続に受け継がれている執行全体のために役立っている手続の費用、例えば現況調査や評価その他総債権者の共同の利益のために支出された費用は、先行事件の債権者から届出があれば、その債権者に対し最優先的に配当を認めるべきである。この執行費用については、一般の請求債権と異なり、配当要求の終期までにその手続をとらなければならないという制約は受けず、法四二条二項により債務名義を要しないで取立てることができるので、裁判所書記官は、配当期日が定められたときは、先行事件の債権者に対し一週間以内に執行費用の計算書を提出するよう催告すべきです。これに対してはこれらの費用については、一般先取特権としての共益費用と解し配当要求の終期までに配当要求をしなければ配当を認めるべきでないとする見解がありますが、この見解によると配当要求の終期後に先行事件が取消し又は取下げになった場合には、配当要求の機会を失するので、総債権者の共同の利益のために支出された費用でありながら結局、償還は受けられないことになる。
 先行事件が取消し又は取下げになって、後行の事件で手続が続行されるときは、後行の二重開始決定の費用は共益費用になることは当然である。
 先行事件が執行停止になったがために、後行事件により手続が進行した場合には、執行停止までの先行事件の手続費用は共益費用として優先権を有しながら費用額の現実の交付手続が停止されることになるので、この場合は配当表にはその額を記載して先行事件の申立債権者に対する配当額とともに供託することになる。
 なお、二重開始決定により競売手続に参加したものは、競売の申立に要した費用、差押えの登記に要した費用等は、当該債権者が配当を受ける権利行使のために孤要な費用であるから、共益費用ではないが、当該債権者が配当を受ける順位に応じて執行費用として償還を受けられる。
 債務名義による配当要求債権者が配当要求をするに要した費用もこれと同様に解すべきです。
 散策の不動産の競売申立てがあり、一括売却が許された場合又はそのうちの一部が売却されて配当が行われる際には、当該物件に固有の手続費用は物件ごとに分割して控除し、例えば競売申立に要した費用、差押えの登記に要した費用、評価料などの共通の費用は最低売却価額により案分して算出すべきです。旧法下の実務では配当手続が煩雑になるという理由から必ずしもそのような分割をせずその段階までに生じたすべての手続費用を控除している取扱例があったようです。
 執行の費用はその手続において直接生じたものであることを必要とするので、競売開始決定に対する異議事件とか、売却許可決定に対する執行抗告事件のために要した費用はこれに含まれず、それらは競売手続とは別個に訴訟費用に開する民事訴訟法の規定により負担の裁判を求めることになるのです。また、売却による所有権移転登記や売却により消滅した権利等の抹消登記の登録免許税は買受人が負担すべきものであるから、執行費用とはならない

お金を借りる!

不動産に対する強制執行/ 不動産執行の方法/ 強制競売の申立/ 債務名義に係る請求債権の一部について執行を求めるとき/ 競売目的不動産上の権利/ 仮登記権利者の民事執行上の取扱/ 強制競売の申立てに対する審理/ 強制競売開始決定に対する異議/ 差押えの効力/ 仮差押えの処分禁止の効力/ 競売開始決定後の差押えの登記/ 競売開始決定後の債務者の競合/ 競売開始決定後の配当要求/ 競売不動産の売却の準備手続き/ 競売不動産の売却の現況調査/ 競売開始決定後の不動産の評価/ 差押不動産の売却に伴う権利の消滅と引受/ 差押不動産の法定地上権/ 差押不動産の最低売却価格の決定/ 差押不動産の余剰を生ずる見込みのない場合の措置/ 差押不動産の売却のための保全処分/ 差押不動産の地代等の代払の許可/ 不動産の滅失等による競売手続の取消し/ 差押不動産の売却手続き/ 差押不動産の一括売却/ 差押不動産の売却手続き/ 差押不動産の入札/ 差押不動産の入札の実施/ 差押不動産の開札後の手続き/ 期日入札調書の記載事項/ 競売不動産の買受けの申出の保証/ 競売不動産の期間入札/ 競売不動産の特別売却の実施/ 競売申立ての取下げ/ 競売不動産の売却決定の手続き/ 競売不動産の売却不許可事由/ 競売不動産の売却の終了後に執行停止の処分があった場合/ 競売不動産の超過売却となる場合の措置/ 競売不動産の売却許可決定/ 競売不動産の売却許否の決定に対する執行抗告/ 競売不動産の売却許可決定後の手続き/ 競売不動産の代金納付による登記の嘱託/ 競売不動産の買受申出人又は買受人保護の手続き/ 競売不動産につき最高価買受申出人又は買受人のための保全処分/ 競売不動産の引渡命令/ 競売の配当と弁済金の交付/ 競売の配当を受けるべき債権者の範囲/ 競売の弁済金の交付/ 競売の配当手続/ 競売の配当意義の訴え/