競売の配当を受けるべき債権者の範囲

 配当にあずかることができる債権者の範囲について、民事執行法は差押えの効力について手続相対動をとることとし、併せて配当要求の終期を定めたことに伴い、売却代金の配当等を受けるべき債権者は旧法の個別相対効を認める考え方とは大きく変更されたのであって、その範囲については明文の規定を設けたのです。
 ここに差押債権者というのは、二重差押えをした債権者を含むことはいうまでもないが、この二重差押えの申立ては配当要求の終期までにした者でなければならない。配当要求の終期までに、二重差押えをした者ならば債務名義をもたないで一般先取特権の実行としての競売の申立てをした差押債権者でも配当にあずかれる。担保権の実行としての競売申立てをした者のうち、一般の先取特権者だけしか差押債権者といえないとしているのは、差押えの登記前に登記された担保権者は、担保権の実行としての競売の申立てをしていると否とにかかわらず法八七条一項四号により当然に配当にあずかれるが、差押えの登記後に設定登記された一般先取特権者以外の担保権者による担保権の実行や、差押えの登記後に登記を経ていない担保権者による担保権の実行は手続上無視される。債務名義を有しない者の配当要求は認めていないことと、差押えの効力に手続相対効を採り、差押え後に設定された抵当権は、その手続の中では効力を否定されることからこのように解されているのです。
 配当要求の終期前に二重差押えの申立てがあれば、配当要求の終期後に開始決定がされても配当にあずかれる。これは配当要求が申立てられたときに効力が生ずることとの均衡を考慮したことによるものです。
 配当要求の終期後の二重差押えの申立ては、先行の差押えの効力が存続する限り手続上は無視されることになるが、先行の差押えが取消されたり、取下げになったときは、後行の申立てのために手続が続行され、改めて配当要求の終期が定められることになるので、同債権者は配当にあずかれることになる。
 配当要求の終期後に二重差押えの申立てをした差押債権者も、その配当要求の終期が更新されたときには、更新前の申立てであれば配当にあずかれる。
 なお、担保権の設定登記を経ていない一般先取特権者以外の担保権者が、担保権の実行としての競売の申立てをし、その開始決定がされた後に強制競売の手続が開始され、先行の担保権の実行としての競売手続が停止されたことにより、後行の強制競売手続が続行された場合には、先行の競売申立てをした担保権者も配当を受けるべき差押債権者に含まれる。

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 差押えの登記前にされた担保目的の所有権に関する仮登記権判者は、配当要求の終期までにその被担保債権の届出をすれば、仮登記の順位において配当を受けられる。執行裁判所の催告があったのに、被担保債権の届出を催告期限までにしないと配当手続上失権することになる。抵当権と併用されていない仮登記賃借権も仮登記担保権となり得るが、賃借権を目的とする担保権であるから、所有権が換価されても配当等は受けられない。
 配当要求ができる者は、執行力のある債務名義を有する債権者、差押登記後に登記された仮差押債権者、一般の先取特権者に限られる。この者等は、配当要求の終期までに配当要求をした場合にのみ配当を受けられる。配当要求の終期後に配当要求をした債権者でも、その配当要求の終期が更新されたときは、更新前の申立てである以上法八七条一項二号二号の債権者に含まれ、配当を受けるべき債権者となる。
 差押えの登記後の仮差押えの執行については、執行裁判所は、その執行がされた旨の申出がない限り知ることができないので、この場合の仮差押債権者は、配当要求の終期までに配当要求をした場合に限り配当を受けられる。
 最初の強制競売の開始決定による差押えの登記前に登記された仮差押債権者は、配当要求をすることなく配当を受けることができる。
 最初の差押えの登記と、その後の差押えの登記との間に仮差押えの登記がある場合に、最初の差押えに係る強制競売の申立てが取下げられたり、その手続が取消されたときは、後の差押えの登記が最初の差押えの登記に該当することになるので、このような場合も仮差押債権者は、配当要求をすることなく配当を受けるべき地位を取得する。
 この場合、最初の差押えに係る強制競売の手続が停止され、後の差押えに係る開始決定に基づいて手続が続行されるときも同様です。
 これらの仮差押債権者には、配当要求の終期が定められたときに、裁判所書記官は債権の届出をすべき旨を催告し、その催告を受けた者は届出義務を負うとされているが、仮差押債権者が届出をしないときには、執行裁判所は、職権をもって仮差押裁判所に照会して被保全債権額を調査すべきです。仮差押債権者に対しては、仮差押えの登記が差押えの登記前にされていたとしても、直ちに配当を実施するわけにはいかず、仮差押債権者に対する配当額に相当する金銭は供託しておかなければならない。仮差押債権者が後に本案訴訟で勝訴し、その確定判決を提出したときに現実の配当をすることになる。
 債権の一部を被保全権利として仮差押えをした場合には、配当を受けることができるのは、その被保全権利の範囲内に限られる。
 仮差押債権者が主として保証金や、登録免許税を考慮する余り債権の一部によって仮差押えをした場合には、配当上このような不利益を受けることもやむを得ない。
 最初の強制競売の開始決定による差押えの登記前に登記された先取特権、質権、抵当権で、売却によって消滅するものを有する債権者は、担保権が消滅し、又は先取特権のようにその権利の取得が効力を失う関係で、配当要求をしないでも配当を受けることができる。抵当権について、抵当証券が発行されている場合には、その証券の所待人も同様配当にあずかれる。但し仮登記の状態では、即時の弁済を受けることはできず、本登記をすることができる状態にあることを証明した場合に限って、配当等の額を受領することができる。この証明がされるまでは、その債権者に分配されるべき領は供託しなければならない。
 仮登記抵当権者が提出する証明書類としては、本登記認容の確定判決、仮登記権判者に劣後する他の債権者の本登記をするについての同意書、債務者、所有者に対する抵当権存在の確認判決、債務者、所有者の本登記をするについての同意書、本登記を承諾する印鑑証明書付の書面、配当金交付請求権の確認判決等が考えられる。
 第一の差押えの登記と、第二の差押えの登記との間に存在する一般の先取特権を除く登記された先取特権、質権、抵当権及び担保仮登記で売却により消滅するものを有する債権者は、第一の差押えが存続する限り、配当にあずかることはできない。しかし、第一の差押えに係る競売手続が取り消され又は取り下げられ、第二の手続で続行することになったときは、第二の差押えの登記が、最初の差押えの登記にあたることになるので、担保権者は、優先弁済権者としての地位に立つから、配当要求を要せず配当を受けることができる。
 この場合第一の差押えに係る強制競売手続が停止されたときは、売却によって効力を失わないと認定された不動産上の権利関係に変更がない場合に限って第二の差押えによる開始決定に基づいて手続が続行されることになるが、この事例では、この場合とは事情を異にする。すなわち、第一の差押えに係る競売手続が、例えば債務者の請求異議の訴えとか、執行文付与に対する異議の訴え提起に伴い執行停止がされている場合に、債務者が停止に係る訴訟において勝訴の確定判決を得て第一の差押えが取消された場合は、担保権者等は第二の差押えの登記前に登記された担保権ということで、前同様優先弁済権者としての地位に立つことになるが、もし債務者がこの訴訟で敗訴し、その判決が確定したときは、一般先取特権を除く他の担保権は手続上無視されることになるので、中間にある抵当権者等は配当を受けることができない。このような場合には、執行停止に係る訴訟等が終結するまでは、担保権者が配当を受けるべき地位にあるかどうかが決定しないし、その担保権者に後れる差押債権者の配当額も定められないことになる。したがって、この場合には、配当額を定めることができない部分、すなわち、執行停止に係る最初の差押債権者、担保権者等、これに後れる差押債権者に対する配当分は供託されることになる。
 このことは、仮差押えの登記後で、差押えの登記前に一般先取特権を除く担保権設定の登記又は担保仮登記がされている場合にも同様の問題が生ずる。すなわち、仮差押債権者が本案訴訟で敗訴したり、仮差押えの執行が取り消されたりすれば、この担保権者は、処分制限の効力を受けることのない担保権としてその順位において配当を受けることができるが、仮差押債権者が本案で勝訴すれば、手続上担保権は無視されることになる。仮差押えによる処分制限の効力は、差押えによる処分制限の効力と同一と解されるからです。したがって、このような担保権者の地位は、仮差押えに係る本案訴訟の勝敗の結論に左右されることになる。そこでこれらの者は、現実に配当を受けることができないので、その配当額に相当する金銭は供託される。この場合は、仮差押えの本案の終結をまって配当等の実施をすることになる。
 用収益を伴う最先順位の不動産質権は、売却によっては消滅せず、買受人が引受けなければならないのが原則であるが、この質権者が質権の実行として競売の申立てをし、開始決定を受けたときは、法八七条一項四号の売却により消滅する質権を有する債権者として配当を受けることができる。

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