競売不動産につき最高価買受申出人又は買受人のための保全処分

 差押え後、債務者、所有者が作為又は不作為によって目的不動産の価格を減少させ又はそのおそれのある行為をする場合には、執行裁判所は、差押債権者の申立により、買受人が代金を納付するまでの間、債務者、所有者に対しその行為の禁止を命ずるとか、目的不動産を執行官保管に付することができることは、さきに述べたとおりですが、民事執行法は、買受けの申出後に新たに所有権を取得しようとする者のためにも、同様の規定を設けて、これらの者の保護が図られています。
 すなわち、買受けの申出のあった後に、債務者、所有者が不動産の価格を減少させ、若しくは引渡しを困難にする行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあるときは、執行裁判所は、最高価買受申出人又は売却許可決定確定後は買受人の申立てにより、債務者、所有者に対し、これらの行為を禁止し、一定の行為を命じ又は不動産に対する債務者、所有者の占有を解いて執行官に保管させるべきことを命ずることができるとしています。
 法五五条による保全処分については、執行裁判所が命じた不動産の価格減耗行為又はそのおそれのある行為の禁止又は一定の行為に対して、債務者、所有者がその命令に違反したときは、申立によりその不動産に対する執行官保管の命令を発することができるのに対し、法七七条の場合は、債務者、所有者が不動産の価格減耗行為若しくは引渡しを困難にする行為をしたとき又はこれらの行為をするおそれのあるときは、執行裁判所は、その行為を禁止し又は一定の行為を命じることができるばかりでなく、債務者等の不動産に対する占有を解いて執行官保管の命令を発することができるのです。
 旧法下においてもこれに類する制度が設けられていたが、余り利用されていなかったので、新法は、引渡命令の執行保全のために、このような規定を設けたものです。
 この規定では債務者、所有者以外の占有者が、不動産の価格を減少させ、若しくは引渡しを困難にする行為をしても、この保全処分の制度は利用できない。これらの行為者に対しては、買受人であれば債権者代位権を行使して、また、代金を納付した後は所有権に基づいて、民事訴訟法の仮処分をもってその行為を排除することになります。

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 法七七条一項には、債務者、所有者が不動産の価格を減少させ、若しくは引渡しを困難にする行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあるときとして、その行為者は債務者、所有者に限定されているが、債務者、所有者の占有補助者、差押え後に債務者、所有者から所有権を譲り受けた者又は占有を承絶した者、仮差押が本執行に移行したときには仮差押後の債務者、所有者の占有継承人が不動産の価格を減少させ、若しくは引渡しを困難にする行為をし、又はこれらの行為をするおそれのある場合には、債務者、所有者が行った者と同視される。差押え及び仮差押え後の債務者、所有者の処分は、手続上無視されることになる関係で、差押え及び仮差押え後の占有承継人は、手続上は占有補助者と同視されるからです。
 買受けの申出後、引渡命令の執行ができるまでの間は、この命令の申立てができる。買受人は、代金納付後は引渡命令の申立てができるが(民執八三条一項・一ハ八条)、引渡命令は確定しなければ執行力を有しないので、確定の上引渡命令の執行ができるまでは、この保全処分命令の申立てができる。したがって、この命令の申立ては引渡命令の申立てがあった後でもできることになるのです。
 この保全処分命令の制度は、最高価買受申出人及び買受人の保護を図るためのものであるが、濫用されるおそれがあるので、執行裁判所は、保全処分の命令を発するには、買受人があらかじめ売却代金又はその額(保証金を提供しているときは差額)に相当する金銭を納付した場合でなければならないとし、その上、担保の提供を求めることができるとしている。もっとも担保の提供を求めないで命令を発することもできる。
 保全処分命令発令後事情の変更があれば、執行裁判所は、債務者、所有者の申立てにより、命令を取消したり、変更することができる。
 この禁止命令、作為命令、あるいは執行官の保管命令の申立てにっいての裁判、又はこれらの命令の取消し、変更の決定は、関係者に与える影響が大きいので、執行抗告ができる。また、これらの命令は、相手方に送達される前であっても執行ができるし、執行にあたり執行文の付与を要しないが、申立人に告知された日から二週間を経過したときは執行してはならない。
 これを要するに、法七七条一項の禁止命令、作為命令、執行官保管命令に対しては、法五五条三項、五項、六項、七項の規定が、また右の各命令及びこれらの命令に対しなされた事情変更による取消し又は変更する旨の決定には執行抗告をすることができる旨の同四項の規定が準用されるのです。
 この命令の申立てに要した費用又は命令の執行に要した費用は、執行費用とはならない。何となれば、この命令は買受人のためになされる保全処分であって、全債権者の利益のためになされるものではないからです。

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