競売不動産の売却許可決定後の手続き

 売却許可決定は換価手続の最終段階であって、その確定によって換価手続は終了する。買受人は売却許可決定によって売却代金の支払義務を負い、競売不動産の所有権を取得し、その引渡しを受けることができ、裁判所の嘱託により競売不動産に対し所有権移転登記を受けることができる。
 売却許可決定が確定すると、執行裁判所は、代金納付期限を定め、買受人に対し代金を納付することを命ずる。売却許可決定が確定した後に請求異議の訴えの提起等に伴う執行停止決定の正本の提出があった場合でも、執行裁判所は、代金納付期限を定めて代金を受領すべきです。買受人の代金支払義務は売却許可決定の確定の効果として生じ、買受人による代金の支払いはその義務を履行する行為にすぎないので、執行停止により何ら影響を受けないと解されるからです。
 代金納付期限は、売却許可決定が確定した日から一月以内の日としなければならない。手続の迅速化を図るため、代金納付期限は売却許可決定の確定後なるべく早い期間に定めるべきですが、売却代金が高額の場合には金策のため相当の日時を要することのあることを考慮して一月以内の日とするのが適当であるとされたものです。買受人に代金支払の準備の期間を与える規定の趣旨からすると、買受人が納付期限の通知を受けてから代金支払期限まで相当の準備期間があるようにすべきで、実務上は原則として三週間後か四週間後とするのが相当でしょう。
 しかし、買受人が転売先を見つける等のために期間をかせぐ方法として、執行抗告をしたような場合には、納付期限を短縮することも考えられる。
 買受人が売却代金から配当又は弁済を受けるべき債権者であるときは、売却決定期日の終了までに執行裁判所に申し出れば、配当又は弁済を受けるべき額を差し引いた差額分の代金を配当期日に納付することができる(民執七八条四項・一ハ八条)とされているので、この場合には、代金納付期限を定める必要はありません。

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 売却許可決定が抗告審において確定した場合にも、その確定した日から一月以内の日に代金納付期限を定めなければならないので、執行事件記録が抗告審に送付されている場合には、抗告裁判所の裁判所書記官は、速やかに執行事件記録を執行裁判所の裁判所書記官に返送すべきです。
 代金納付期限が定められたときは、裁判所書記官は、これを買受人に通知しなければならない。
 旧法は、代金の支払及び配当は裁判所の定むる期日において之をなすとして、代金支払と配当とは同一期日に行うかのように規定されていたため、利害関係人、無名義配当要求債権者及び競落人を同時に代金支払期日に呼び出さなければならないかのようでしたが、実務の運用は代金支払期日をまず指定し、配当期日は代金支払後に指定されていたので、代金支払期日には競落人のみを呼び出すこととされていました。民事執行法は、旧法当時の実務の運用のように規定されたわけです。共同買受人の場合には、代金支払の確実性を確保するため、共同買受人の内部関係はともかくとして、代金の支払にっいては前述のように連帯債務であると解されているので、代金納付期限の通知はその全員に対してしなければならない。
 売却許可決定が確定した後、代金納付期限までに、買受人について相続その他の一般承継があった場合には、売却許可決定の効力はその一般承継人に及び、代金支払義務を承継するので、その届出があれば、裁判所書記官は、一般承継人に代金納付期限の通知をする。
 通知については、原則としてこれを受けるべき者の所在が明らかでないとき、又はその者が外国にあるときは、することを要しないとされていますが、代金納付期限の通知は、買受人にとっては重要な通知であるから、法一六条による送達の特例を活用することになる。すなわち、買受人が住所、居所、営業所又は事務所を変更したときは、その旨を執行裁判所に届け出なければならないとされ、住所等の変更をしていながら、その旨を届出ない者に対する送達は、事件記録に表われた住所等にあてて書留郵便に付して発送すれば、その発送の時に送達されたものとみなされることになる。
 代金の納付について、旧法下では、前述のように代金は裁判所が定める代金支払期日において之をなすとしていたため、代金支払期日前に代金を支払うことができるか否かについて争いがあったが、民事執行法は七八条一項において、執行裁判所の定める代金納付期限までに代金を納付しなければならないと規定し、期限までの納付ができる旨を明らかにしている。
 代金の納付にあたっては、買受人が買受け申出の保証として提供した金銭又は買受申出人若しくは買受人のための保全処分に際し納付した金銭は代金に充てられるから、買受人は、保証が金銭による場合には、差額だけを納付すれば足りるし、法七七条一項の保全処分の際に代金相当分を納付しているときには、それは売却許可決定の確定時に自動的に納付したものとみなされる。
 差押債権者が、法六三条二項一号の保証として有価証券をもって提供している場合において、差押債権者の申出願以上の買受けの申出がなかったために差押債権者が買受人となったときは、この保証は買受代金に充てられないので、差押債権者は買受申出願を納付しなければならない。差押債権者がその願を納付しないときは、執行裁判所は、執行官に対し提供されている有価証券を売却すべき旨を命ずる。
 有価証券の売却を命じられた執行官は、動産執行の手続により、すなわち、有価証券を競り売り、入札、特別売却又は委託売却のいずれかの方法で売却する。通常は業者に委託して売却することになろう。取引所の相場のある有価証券は、その日の相場以上の価額で売却しなければならない。
 執行官は、換価代金を速やかに執行裁判所に提出しなければならない。
 執行裁判所はこの換価代金から換価に要した費用を控除したものを代金に充てる。剰余金が生じたときは買受人に返還される。
 換価に要した費用は、買受人が負担することになり、執行費用とはならない。
 特別売却の方法により売却した場合に、有価証券をもって提供された保証については、規則五七条を適用して同様の手続により換価される。
 保証が銀行等との支払保証委託契約の締結を証する文書の提出という方法で提供されているときには、この保証は買受代金に充てられないので、買受人は、買受申出の額の全額を執行裁判所に納付しなければならない。買受人が代金を納付しないときは執行裁判所は、支払保証委託契約により金銭支払義務を負担した銀行又は保険会社に対し納付の催告をし、銀行等に所定の額を納付させる。
 納付の催告は、通常は支払保証委託契約において支払うものと定められている金銭の額の全額についてなさるべきです。支払保証委託契約が、事件を特定しないで締結されている場合には、提供すべき順についてのみ催告をすることとなる。
 ところで法六三条二項二号の保証は、さきに述べたように(剰余を生ずる見込みのない場合の措置)差押債権者が自らは買受人となることができない場合で、差押債権者の申出額(前例では五〇一万円)に達する買受けの申出がないときに、差押債権者がその差額のみを負担する旨を申出た場合の保証です。それ故に提供の際の保証は、差押債権者の申出額(五〇一万円)と最低売却価額(前例では四〇〇万円)の差額(一〇一万円)に相当するものであったのであるが、換価して売却代金に組入れられるのは、差押債権者の申出額(五〇一万円)と買受申出額(前例では四五〇万円)との差額(五一万円)であるから、執行裁判所は、後者の差額五一万円について納付の催告をすることとなる。
 この場合支払保証委託契約の内容が、申出額と最低売却価額の差額を支払うとするものであっても、法六三条二項二号の保証として有効と解されている。
 支払保証委託契約締結証明書は、買受人が代金を納付したときに、その証明書の返還請求があったときは、裁判所は民事保管物受払簿に所要の事項を記入の上証明書の交付を受けて提出者に返還する。提出者から返還請求がされないときは、記録と共に廃棄してよい。
 買受人が売却代金から配当等を受けられる債権者である場合は、買受人が売却決定期日の終了までに、執行裁判所に対し配当期日又は弁済金の交付の日に、配当又は弁済を受けるべき額を差し引いた代金を支払う旨の次のような様式による申出をした場合に限り、差額を納付することができる。
 旧法では、差引計算の申出の期限の定めはなかったが、実務の取扱いは、執行裁判所が代金の支払期日を指定するまでの間は申出をすることができるとしていた。民事執行法は手続の簡明化のために、売却決定期日の終了までに申出をするように限定したものです。適法な差額納付の申出があった場合は、執行裁判所は、売却許可決定が確定後一月以内に配当等の実施の期日が指定され呼び出し又は通知がされる。
 これによって買受人は、配当等の期日に配当額等を差し引いた代金を納付することができるが、同期日において、買受人の受けるべき配当等の額について他の債権者又は債務者から異議の陳述又は申出があったときは、他の債権者等の保護を図るため、買受人は、配当期日において直ちに異議に係る部分に相当する金銭を納付しなければならない。
 金銭の納付がないときは、代金不納付となり、売却許可決定は失効し、保証金の返還が受けられなくなるので、買受人としては、異議申出が予想されるときは、現金を用意して配当期日に出頭する必要がある。
 買受人が代金を納付期限までに納付したとき、又は買受人が債権者であって、差額納付を申出た場合には、配当期日にその差額を納付したときには、その代金納付時に競売不動産の所有権は債務者から買受人に移転し、果実収取権を取得し危険負担もその時に移転する。
 旧法時における買受人が代金を納付した後に仮執行官言付判決が取り消されたとか、執行債権が消滅したとしても、買受人の所有権取得には影響はないが、第三者所有の不動産や、債務名義を騙取した場合や、無効な債務名義の場合には、買受人は競売による売却により所有権を取得することができないとの解釈は、民事執行法における解釈と同じです。
 目的不動産が農地であるのに、農地に非ずとして一般人に売却し、売却許可決定が確定し、代金を支払ったとしても買受人は不動産の所有権を取得することはない。この場合は、売却許可決定を取り消し、更に売却を実施することになる。
 競売により売却された不動産に存する賃借権について、差押登記前に登記されたものや、建物保護法一条、借家法一条等の規定により債権者(抵当権者)に対抗し得るものは、その不動産の所有権を取得した買受人にも対抗できるので、買受人は賃貸人の地位を承継することになる。賃貸借の有無は物件明細書や売却期日の公告に記載すべき事項であるから、買受人にとっては事前に判明しているはずである。仮りに売却期日の公告や物件明細書等に掲げられていなかった賃貸借でも、それが有効であり、しかも差押債権者らに対抗できるものは買受人によって承継されるので、競売による売却後において借家法一条により対抗力を有する建物の賃借権を主張されて買受人が迷惑をこうむることなどがある。このような場合は担保責任の問題になろう。
 売却の結果消滅する抵当権に対抗できない賃貸借は、たとえ差押登記前に設定されたものであっても、買受人は承継しない。もっとも賃貸借が抵当権設定登記後で差押登記前に設定された民法六〇二条の期間を超えない短期賃貸借で、かつ対抗要件を具備したものは、抵当権者ひいて買受人に対抗できるから、買受人によって承継される。期間の定めのない賃貸借については、いつでも賃貸人から解約の申入をして終了させることができるところから、短期賃貸借とみて抵当権者に対抗することができ、したがって買受人により承継される。債務者と賃借人との間の賃料の前払及び敷金の返還義務の関係については、強制競売の場合は、差押えの効力の生ずる前の授受、担保権実行による競売の場合は、抵当権者に対抗しうるものであればいずれも買受人はこれを承継しなければならない。
 抵当権者に対抗し得る建物の短期賃貸借の期間が、抵当権実行による差押えの効力が生じた後に満了した場合には、賃借人は借家法二条による法定更新をもって抵当権者及び買受人に対抗できない。
 借地上の建物の買受人は敷地の賃借権を譲受けたことになるので、通常の建物の譲渡等と同様に、それに伴う借地権の譲渡について賃貸人たる敷地の所有者の承諾を得ることが必要である。もし敷地の賃貸人が借地権の譲渡を承諾しないときには、買受人は買受けた建物を収去するほかない。ただし買受人は賃貸人たる土地所有者に対し建物等を時価により買収を請求できる。この請求権は形成権で承諾の有無にかかわらず一方的に売買成立と同一の効果を生ずる。買受人はこの方法をとらないで借地法九条ノ三の規定により地主の承諾に代る許可を求めることができる。この場合申立人の請求により執行裁判所の裁判所書記官は申立書に添付するため競売に関する証明書を交付する。裁判所は、特に賃貸人の不利になるおそれがない場合で、当事者間の利益の衡平をはかる必要があるときは、借地条件の変更や、承諾料の給付を命じた上、許可の裁判をするでしょう。
 土地賃借人が、その地上の建物に設定した抵当権の効力は、原則としてその土地の賃借権に及び、建物の買受人と賃借人との関係においては、土地の賃貸人の承諾の有無にかかわらず、建物の所有権とともに土地の賃借権も買受人に移転するとされている。
 敷地について何ら使用の権原を有しなかった建物所有者に対する競売の場合には、もちろん買受人は敷地の使用権を有せず、建物は収去するほかなかろう。敷地の賃貸人と、賃借人たる債務者との間に敷地の賃借権について賃料不払等の理由で建物の買受け前に賃貸借契約が解除されていた場合も同様です。この場合敷地の賃貸人が債務者に対する建物収去、土地明渡の債務名義を得ていれば、買受人は土地明渡義務の承継人として建物を収去しなければならないので、結局買受人は木材のみを買受けたという結果にならざるを得ない。建物に対する強制競売開始決定の効力はその目的たる建物に限り、かつ、建物の所有者たる債務者及び債務者からじ後建物の所有権を取得する第三者に対して生ずるにとどまり、特段の事情のない限り敷地ないし敷地の所有者には及ばないと解されるからです。
 建物所有者と敷地の賃貸人とが敷地についての賃貸借を合意解除した場合には、その合意解除は差押えによる処分制限に反し効力を生じないと解されているので、この場合は買受人は賃借人の地位を承継することになる。
 民法五三四条一項は、特定物に関する物権の設定又は移転をもって双務契約の目的とした場合において、その目的物が債務者の責めに帰すべからざる事由(例えば風水害とか類焼)によって滅失又は毀損したときは、その滅失又は毀損は債権者の負担に帰すと規定するのであるが、この危険負担の原則が、特定の不動産の所有権の移転を目的とする一種の売買である競売の場合についても適用のあることは、争いのないところです。
 買受人は目的不動産に毀損あるいは坪敷不足等の瑕疵、又はこれに付随する権利に瑕疵のあった場合には、執行手続外で債務者に対し民法五六一条ないし五六七条の規定により競売による売買契約を解除し又は代金の減額を請求することができる。配当手続完了前であれば、債務者に対し契約を解除した上、既に裁判所に提出してある買受申出の保証又は支払った売却代金の返還を求めることができるし、事案によって代金の減額で足りるのであれば、裁判所に申出て代金の減額をしてもらうことができる。民法五六八条は代金の交付、配当の手続が終了した場合の規定であるが、代金の配当前でも権利の瑕疵による救済の途が認められないということは不合理であるからです。なお、民法五六八条一項は抵当権実行による競売の場合にも適用がある。代金の全部又は一部の返還請求は、まず債務者(売主であるから)に対してなし、もし債務者が無資力で返還できないときは、代金の配当を受けた債権者に対して請求すべきです。債権者は買受人の損失において利得したといえるからです。配当を受けた債権者が数名あるときは、各債権者は自己が受けた金額の限度において担保責任を負う。民法五六四条、五六五条、五六六条三項の規定する一年の除斥期間は、債務者に対してその期間内に解除又は代金減額の請求をすれば期間遵守となるから、債権者に対する代金の返還請求は一年の期間経過後にしても差し支えない。
 買受人が執行裁判所の定める代金納付期限までに代金を納付しないときには、納付期限到来の時に確定的に売却許可決定は効力を失うことになる。この結果、代金を納付しなかった買受人は、提供した保証の返還を請求することができなくなる。この保証は、売却代金の一部を組成する。
 再度行われる売却の実施においては、買受けの申出をしても不許可となる。
 買受人が代金を納付しなかった場合でも、その後の競売手続中に、競売の申立てが取り下げられたり、競売手続を取り消す決定がなされ、その決定が確定したときには、ここ挙げた各規定の適用の余地はないから、買受人は提供していた保証の返還を請求することができる。
 買受人が代金を納付せず、そのために買受人が提供した保証の返還を請求することができなくなった場合において、次順位買受けの申出があるときには、執行裁判所は、その申出について売却の許可又は不許可の決定がされる。この場合には、法六九条以下の規定により売却決定手続が行われることになる。

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