競売不動産の売却許可決定

 執行裁判所は、買受けの申出に対し、職権をもってこれまでの手続が適正なものであったかどうかを調査し、売却決定期日における利害関係人等の意見の陳述、あるいは利害関係人その他参考人等の審尋の結果、また、一件記録から判断して、売却不許可事由がないと認めたときは、これを認容して売却許可決定を言渡す。
 農地又は採草放校地等の売却については、最高価買受申出人又は次順位買受申出人から都道府県知事等の農地法三条一項の規定による許可書又は届出の受理通知書が提出された後に売却許可決定をする。

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 数人共同で買受けの申出をした場合は、売却許可決定に全員の氏名と、各自の持分を明記する。
 共同買受人は代金の支払について連帯義務を負う関係にあるので、記載してこれを明確にするのです。
 競売は、国家が差押えによって取得した債務者の処分権を行使して目的物を売却する一種の売買です。すなわち、買受けの申出が売買契約の申込みであり、売却許可決定は執行裁判所の裁判ではあるが、実質的には売買契約の承諾にあたるものです。したがって、買主である最高価買受申出人は売却許可決定後買受代金の納付義務を負い、代金を納付した時に不動産の所有権を取得する権利を有することになる。このような最高価買受申出人の地位は、一身専属的なものではないから、相続、又は法人の合併によって一般承継人に承継される。そこで売却期日後売却許可決定前に相続の開始、法人の合併等による一般承継があった場合に、承継人から承継の事実を証明する資料を添付して届出があれば、執行裁判所は、承継人を買受人として売却許可決定を言渡すのが相当である。この場合、決定には「何某(最高価買受申出人)承継何某」と表示すべきです。
 問題は最高価買受申出人の地位を譲渡することができるかということであるが、旧法下においては、譲受人において競落人としての義務を引受ければ、最高価競買人の地位を譲渡することができるとする見解と、最高価競買人の地位の譲渡は許されないとする見解とが対立していましたが、東京地裁と大阪地裁の実務の処理は、あくまでも形式的に処理することが手続の迅速を図ることになるのであって、実体法上の審査(譲渡契約の有効、無効の審査)は、執行裁判所の権限外のものと考え、執行手続においては、譲渡の効力を認めない取扱いでした。
 民事執行法施行前の事件について、この点につき競売手続における最高価競買人たる地位を、競落期日前に第三者に譲渡することは、その旨の明文の規定を欠くわが法の解釈としては許されないものとする見解が出されたが、民事執行法下でもこの見解が適用されるでしょう。
 売却許可決定は、売却決定期日において言渡される。そもそも決定は、相当と認める方法によって告知すれば足りるとされていますが、言渡しは相当と認める方法に該る。
 売却許可決定は、通常の決定と異なり特定の対立する当事者を対象とする裁判ではなく、債権者、債務者、不動産の真実の所有者、買受申出人その他の利害関係人を対象とするものですが、これらのすべての者に対し言渡しをもって告知されたことになるので、決定正本は利害関係人等に送達する必要はない。したがって、売却決定期日に出頭した者はもちろん、不出顕者に対しても言渡しの時にすべての利害関係人に対し告知の効力が生ずる。売却許可決定に対しては、利害関係人はその決定により自己の権利が害されることを主張するときに限り執行抗告をすることができるが、執行抗告の提起期間は決定言渡しの時から進行することになる。売却決定期日は、差押債権者、債務者、配当要求債権者、差押えの登記前の登記上の権利者、知れている抵当証券の所持人及び裏書人等にはあらかじめ通知がされ、買受申出人は、入札又は競り売りの場合には、あらかじめ公告がされるので当然知悉しており、また、特別売却の場合には通知がされるから、いずれも売却決定期日に出頭して売却許可決定の言渡しを聴くことができる立場にある。したがって、定めても利害関係人に対し特に不利益を及ぼすことにはならない。
 売却許可決定が言渡されたときは、裁判所書記官は、売却許可決定の内容を公告しなければならない。この決定の内容を公告をするのは、不動産執行においては、売却の公告がされているので、その公告された当該不動産の売却が許可されたことを一般に局知せしめる趣旨と、売却決定期日に出頭しなかった利害関係人等に決定の内容を知らしめ、不服申立の機会を与えるためです。
 公告は、売却許可決定の正本を裁判所の掲示場その他裁判所内の公衆の見やすい場所に掲示する方法によって行う。
 公告をしたときは、裁判所書記官は、公告をしたこと及び公告の年月日を記録上明らかにすべきです。売却許可決定の場合は、決定書の下欄に記載するようにする。
 売却許可決定に対しては、前述のように同決定により自己の権利が害されることを主張する者に限り、執行抗告ができる。したがって、抗告されることなく抗告期間を経過したときか、抗告がされた場合でも抗告審の抗告棄却の判断が示されたときに売却許可決定は確定する。
 執行裁判所は、法七一条各号に該当する事由があると判断したとき又は事由以外の事由、民事執行法及び民事執行規則に定められている売却の手続に著しく違反し、そのため適正な手続が行われたとは認められない場合には、売却不許可決定をしてこれを言渡す。
 これは実体法上は売買契約における買受けの申込に対する拒絶の意思表示としての性質を有する。
 売却不許可事由は、執行裁判所が職権をもって調査すべきです。
 言渡しは、売却決定期日においてしなければならない。決定は、言渡しの時に告知の効力が生ずることは、売却許可決定の告知について述べたところと同様です。
 売却不許可決定に対しては、決定により自己の権利が害されることを主張する者に限り、執行抗告ができる。

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