競売不動産の売却不許可事由

 執行裁判所は、売却決定期日における利害関係人の意見の陳述、あるいは裁判所自らも職権で売却手続について調査した結果、不適正な手続で売却されたものと判断したときには、売却を不許可にして売却の実施をやり直すことにし、不適正な事由がないと認めれば売却許可の決定をする。この場合利害関係人の意見の陳述に対して応答する必要はありません。
 執行裁判所は、その陳述によって調査し不適正な手続で売却されたものと判断したときは、売却を不許可にすることになるからです。
 民事執行法は、旧法と同様売却不許可事由を規定している。この事由は、制限列挙であって、同法に規定されていない事由によっては、売却を不許可とすることはできないと解されている。担保権実行手続については、債務名義のない手続であるから、この規定の準用にあたっては債務名義の有無による差異の生ずることは当然です。

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 競売手続の開始又は続行を妨げる事由の存在に該当する事由としては、強制執行の要件や執行開始の要件が欠けていることであって、例えば、債務名義の不存在、執行文を付した正本の不存在、立保証の証明の不存在、債務名義の送達がなされていないこと、執行債権の履行期の来到来、法六三条の手続をしなかったというように手続が適正に行われなかった場合などであり、担保権実行の手続においては、担保権の不存在又は消滅、被担保債権の不存在、弁済期未到来、第三取得者に対する抵当権実行の通知の欠訣などです。これらの事由は、いずれも執行裁判所が職権で調査すべきで、そのような事情が存在する場合には売却不許可をしなければならない。債務者は、これらの事由をもって執行異議を申立て、開始決定の取消しを求めることができる。
 執行停止、取消文書が売却の実施までに提出されたときは、競売手続は続行すべきでないのに、これを看過して換価手続が続行されたときは、執行裁判所は、売却不許可の決定をしなければならない。
 但し二重開始決定がされている場合に、先の開始決定に係る競売手続が停止又は取消されても、後の開始決定に基づく競売手続が続行されて、換価になった場合には、他の売却不許可事由に該当しない限り不許可決定はできない。
 買受申出人の欠格事由の存在、最高価買受申出人が未成年者、禁治産者、準禁治産者などで独立して売買契約をする能力がない者、外国人で、土地を所有することができない者である場合、売却不動産が農地であるのに知事等所有権移転の許可を得ていない者である場合、山林について競売の申立てがあり、売却許可決定がなされたが、その土地は開始決定後畑(農地)に変換されていたことが判明した場合には、買受資格のないものに対してなされた売却としてその売却許可決定が取消された実務例がある。所有権移転の許可を得ていてもその許可書を提出しない場合、債務者である場合には、売却することができないので売却不許可決定をすることになる。
買受けの申出が無権代理人によってされたときは、本人に効力の生ずるいわれはないから売却不許可決定をする。ただし本人が売却決定期日の終了までに追認をすれば売却許可決定をすべきである。旧法下ではこれと同様の考え方が通説でした。本人の追認がないときには、旧法下では代理人を買受申出人とみなして、代理人について売却許可決定をするとの見解が有力でしたが、そのような事実が認められれば、売却不許可決定をすべきです。
 不動産を買受ける資格を有しない者が、実質的には金を出して、他人名義で買受けの申出をしていることが判明したときは、同様売却不許可決定をすべきです。
 悪質な行為者の競売手続への関与、悪質な行為者が売却手続に関与することができないようにするため、執行官に売却の場所における秩序維持のために特別の権限を付与していることは、さきに述べたとおりですが、もし悪質な行為者が、売却手続において執行官の眼から逃れて最高価買受申出人と定められても、売却決定期日の終結までの間にその事実が認定できるときは、換価の適正化のために、そのような者の買受けの申出に対しては売却不許可決定をして排除することとしている。この規定は、不正行為に対する一種の制裁規定の性格を有する。
 ところで、この悪質行為者の関与した買受けの申出というのは、民事執行法六五条一号に規定する行為をした者、その競売手続において買受人となりながら代金を支払わず売却許可決定を失効させた者、悪質行為者に自分の資金を出して買受けの申出をさせた者、民事執行法六五条二号、三号に該当する者等が買受けの申出をした場合、それのみならず、ここに該当する者を買受けの申出の代理人として買受けの申出をした場合や、該当する者が、実質的な資金を出して他人名義で買受けの申出をしたような場合をいうのですが、これらのいずれかに該当するときは、売却不許可決定をすることになる。しかし、依頼した代理人が悪質行為者であれば、その買受けの申出は売却不許可となり、当該買受申出人は、その手続からは排除されるが、他の手続では制約されることはない。この場合二年間売却の手続から排斥されるのは、代理人であるから、この場合には売却不許可決定の理由中にその旨を明らかにする必要がある。
 代理人が悪質な行為をしたからといって、その代理人を選任した者まで、全国の裁判所における売却手続から一定期間締め出すことは不合理であるとの考え方からです。
 買受申出後に、売却不動産が天災その他買受申出人の責めに帰することができない事由により著しく損傷した場合には、売却許可決定前においては、買受申出人は執行裁判所に対し、不許可決定をすべき旨の申立てができる。この申立てが認められれば、執行裁判所は売却不許可決定をする。
 一括売却の決定、物件明細書の作成又はこれらの手続に重大な誤りがある場合、評価や売却条件の誤りによって、最低売却価額が著しく高額、あるいは低額であったりした場合、一括売却の定めをすべきであるのに、しなかった場合、あるいはその逆の場合、換価によって消滅せず買受人が引受けることとなる権利関係を物件明細書に記載しなかったり、遂に換価によって消滅すべき権利を消滅しないものとして記載したりした場合、物件明細書に記載された不動産の表示が現況と著しく異なるような場合、現況が宅地であるのに田として表示し農地として取り扱った場合とか、現況が畑であるのに宅地として表示した場合などについては、売却の効果に影響を及ぼす重大な誤りといえるので、その買受けの申出については不許可決定をする。現況調査報告書又は評価書の作成に重大な誤りがあること自体は、売却不許可事由にならないが、現況調査等に誤りがあった結果最低売却価額の決定や、物件明細書の作成に重大な誤りを生じたときは売却不許可決定をする。目的土地の公簿面積と実測面積との間にかなりの差異があるのに、公簿面積が実測面積にほぼ一致することを前提に算定した評価人の評価に基づいて決定された最低売却価額には、その決定手続に重大な誤りがあるとして売却許可決定が取消された裁判例がある。この場合には、再評価の上最低売却価額を是正したり、物件明細書の記載を訂正した上再度売却の実施をすることになります。
 これら以外に民事執行法、同規則で定められた売却手続に著しく違反している場合、例えば現況調査報告書等の写しの備置きの手続に重大な誤りがあるときには、執行裁判所は、買受けの申出に対し不許可決定をした上で、適正な手続によってやり直すことになります。

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