競売申立ての取下げ

 競売申立人は、売却期日において最高価買受申出人が決定されるまでは、任意に競売申立てを取り下げることができる。法七六条には「買受けの申出があった後」と規定しているが、期間入札において既に入札が始まった場合は、その入札者の同意がないと取下げができないとすることは不都合であるので、具体的に買受申出人が決定されないうちは法七六条の適用の余地はないと解すべきであるから、それまでは競売申立人は任意に取下げができる。競売申立の取下げは、裁判所に対してしなければならないが、売却期日が執行官によって聞かれた後に取下げがされれば、裁判所は直ちに執行官に連絡する必要が生ずるから、できるだけ早く、要すれば売却期日の前日までにする。取下書は二通提出する。

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 売却が実施され、買受申出人が決定された後に競売の申立てを取り下げるには、原則として最高価買受申出人及び次順位買受申出人の同意を得なければならない。債務者の同意は不要です。
 買受申出人が決定した後に、債務者等が強制執行をしない旨又は競売の申立てを取り下げる旨の記載のある裁判上の和解調書又は調停調書の正本及び強制執行免脱のための立担保証明文書(民執三丸染一項五号)を提出する場合も、買受申出入の同意が必要です。これらの書面を提出した者と最高価買受申出人等との利害の均衡を考慮する必要からです。
 二重開始決定がされている場合には、先の競売申立てが取り下げられても、後にされた開始決定に基づいて手続が続行されることになるから、買受申出人が決定された後の取下げでも買受申出人等の保護は図られているので、この場合は買受申出人等の同意がなくても先の競売申立の取下げができる。ただし後にされた開始決定に基づいて手続が続行される場合であっても、取下げをしようとする競売開始決定と、二重開始決定との間に賃借権などの用益権が設定されている場合のように、続行によって売却条件に変更が生ずる場合には、最高価買受申出人等の利害に大きな影響を及ぼす結果になるから、この場合の取下げは、買受申出人等の同意を必要とする。
 買受人が代金を納付した後は、競売の申立の取下げはできない。このことは法八四条三項に代金納付後の取下げのことを規定していないことからも明らかです。なお、旧法下では、競落許可決定後代金納付までの間は、もはや取下げを許さないとか、この場合でも競落人及び全利害関係人の同意が得られれば取下げを許すというような見解があったが、民事執行法は、いずれの見解も採っていない。
 抵当権全部についての実行の申立てがあったところ、その後一部代位が行われた場合には、代偉者も抵当権者とともに申立人の地位を有しているものと考えられるので、抵当権者が競売の申立てを取下げるには代位者の同意を要するものと解する。もっとも一部代位の場合でも抵当権者は単独で権利を行使しうるとする説に立てば、抵当権者は単独で取下げることができる。
 競売申立てが取り下げられたときは、裁判所書記官は、その旨を債務者、所有者に通知しなければならない。旧法下においては、取下げの旨を相手方に通知する旨の規定がなかったため実務の取扱いも分かれていたが、債務者等は申立てが取り下げられたことを必ずしも知っていないこともあるので、申立ての取下げによる処分権の回復を知らないことは不都合であるとする見解から、このような規定が設けられたのである。競売開始決定の送達がされていない間に申立てが取り下げられたときは、取下げの通知をする必要はない。
 滞納処分による差押え後に競売開始決定をした不動産又は競売開始決定後に滞納処分による差押えをした不動産について、競売の申立てが取り下げられたときは、裁判所書記官は、次の様式によりモの旨を徴収職員等に通知しなければならない。
 適法な競売申立の取下げがあった場合は、競売手続は当然に終了し差押えの効力は消滅するから、裁判所書記官は、差押えの登記の抹消登記を嘱託しなければならない。
 抹消登記の嘱託用として、競売申立人から取下書の副本を提出させて、これを登記原因を証する書面として嘱託書に添付する。
 この場合取下書副本に目的不動産が記載されていないと登記原因証書にならないので、注意を要する。取下書副本がないときは、嘱託言副本を添付する。抹消登記嘱託に要する登録免許税、嘱託書郵送料等の費用は、申立債権者が負担することになる。
 なお、競売申立債権者が、同一債権につき当該不動産に対し仮差押えの登記をしている場合でも、差押えの登記の抹消と同時にその仮差押えの登記の抹消嘱託はすべきではない。なんとなれば、本差押えが取下げによってその効力が消滅しても、仮差押えの効力はそのまま維持していると解すべきだからです。
 不適法な取下げ、例えば買受申出人の同意を要する場合に同意を欠く取下書が提出されたようなときがなされた場合には、なんらの効力が生じないから、競売手続はそのまま進めるべきで、取下書を却下する必要はない。

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