競売不動産の特別売却の実施

 執行裁判所は、不動産について入札又は競り売りの方法により売却を実施させても最低売却価額以上で買受けの申出がなかったときは、執行官に対し、それ以外の方法により不動産の売却を実施すべき旨を命ずることができるとしている。民事執行法において新たに認められたもので、国税徴収法の随意売却にならったものといわれています。
 したがって、売却の最初からこの特別売却をすることは認められず、入札又は競り売りの方法により少なくとも一回は売却を実施し、それでも適法な買受けの申出がなかった場合にのみ特別売却の実施命令が発令できる。また、入札又は競り売りの方法により売却したが、最低売却価額以上で買受けの申出が全くなかった場合はもちろん、買受けの申出はあったが、不適法として買受けの申出を認められなかったり、執行裁判所により不適法な買受申出であるとして、売却不許可決定がされた場合は、適法な買受けの申出がなかったことになるので、特別売却の実施ができることになります。

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 共同相続による持分に対する競売について、一般の入札に付したため不動産業者がこれを買受け、その結果他の相続人が業者のいうままに入札価額以上の価額で買受けさせられる事例がありますが、このような事案にっいては規則五一条一項の規定によらず、最初から他の相続人に特別売却による売却の方法を考慮さるべきではないでしょうか。
 実務では、入札を実施したが、買受けの申出がないものについて直ちに特別売却に付される例が漸次増加しつつあります。
 これ以外の理由で売却不許可となった場合とか、代金不納付により売却許可決定が効力を失った場合には、まだ入札又は競り売りの方法による売却の見込があり得るので、再度入札又は競り売りを実施すべきで、特別売却の実施命令はすべきではありません。
 特別売却は、入札や競り売りと同様に執行裁判所の執行官に対する売却実施命令に基づき執行官が実施するものであるから、動産執行で認められている委託売却のように執行官以外の者が売却を実施することは認められていません。
 特別売却に付することは、差押債権者の利害に影響を与えるおそれがあるので、執行裁判所は、特別売却の実施を命じようとするときには、あらかじめ差押債権者の意見を聴かなければならない。
 意見聴取の方法にっいては、特に規定されていない。出頭を求めて聴いてもよいし、書面で意見を提出するよう求めてもよい。
 特別売却の実施命令には、執行裁判所は条件を付することができる。規定上は条件の内容として売却の実施の方法及び期限が例示されているが、具体的な売却方法として、例えば特定又は不特定の者と個別折衝して売買契約を締結するとか、不動産に定価を付して公告した上、最初の申込者に売却する方法などが考えられる。随意売却の相手方としては、当該不動産に関連を有する不動産の共有者とか、賃借人、担保権者、借地上の建物であれば地主、私道などであればその利用者、隣地の所有者などが考えられる。これらの者は執行官から勧誘があれば、買受の申出をする可能性があると思われるからである。これらの氏名を記載する場合でも限定的条件とせず、例示的に記載するのが相当であろう。売却実施の期限は必ず定めるべきです。
 執行官は、特別売却の実施を命ぜられたときは、実施命令に付せられた実施の方法及び期限、その他の条件に従って売却を実施しなければならない。
 特別売却に適する不動産としては、前述のように農地とか、私道などが考えられるが、これに限らず一般の土地、建物の売却の場合でも差し支えない。
 特別売却の実施命令は、名宛人である執行官には告知されるが、その他の者には告知されない。しかし、入札又は競り売りという一般的な売却方法によらないで、特別売却に付するということは重要な裁判ということがいえるので、これを利害関係人に通知して、執行異議の申立の機会を与えるのが適当であるといえるから、裁判所書記官は、特別売却の実施命令がされた旨を各債権者及び債務者に通知しなければならない。
 特別売却の場合には、買受けの申出の保証の提供方法は、金銭又は執行裁判所が相当と認める有価証券を執行官に提出する方法に限られ、それ以外の支払保証委託契約締結証書や、振込送金による保証は認められない。有価証券は、特段の制限はないが、換価が確実で、価値の変動の少ないものであることが必要であり、具体的には、銀行等の自己あて小切手、送金小切手、国債、上場会社の株券等が適当です。
 買受け申出の保証の額は、特別売却という特質に鑑み、入札、競り売りの場合のように最低売却価額の一〇分の二に限られていないから、執行裁判所が物件の価額、買受けの意思、代金納付が確実か否等を考慮して適宜の額を定めることができる。この保証の額は、売却実施命令に記載される。代金不納付の場合は、保証の額の多寡にかかわらず売却代金に充てられる。
 特別売却実施命令が発せられた後でも、執行裁判所は、執行官の報告、その他により、特定又は不特定の者に随意売却するよりも、入札又は競り売りによって多数の者の競争により売却することが相当であると認められるときは、特別売却実施命令を取消して、入札又は競り売りの方法に変更することができる。
 執行官は、特別売却の実施命令に基づいて売却を実施した場合において、買受けの申出があったときは、速やかに、不動産の表示、買受けの申出をした者の表示、買受けの申出の額、買受けの申出の年月日を記載した調書を作成し、保証として提出された金銭又は有価証券と共に執行裁判所に提出しなければならない。調書には、買受申出入又はその代表者若しくは代理人に署名押印させなければならない。その者が署名押印しなかったときは、その事由を調書に記載しなければならない。売却を実施したが買受けの申出がなかったとき、例えば、執行裁判所の指定した者と個別交渉を行ったがその者が買受けの申出をしなかったときは、その旨を適宜の方法により執行裁判所に報告すれば足り、調書を作成する必要はない。
 特別売却調書が執行裁判所に提出されたときは、執行裁判所は、遅滞なく売却決定期日を定めなければならない。この場合執行裁判所は、手続の迅速処理の観点から、調書提出から売却決定期日まではできる限り短期間とすべきで、売却決定期日の通知が到達するのに要する期日を考慮して定める。
 売却決定期日が指定されたときは、裁判所書記官は、民事執行規則三七条各号に掲げる者及び買受けの申出をした者に対し、その日時及び場所を通知しなければならない。

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