競売不動産の買受けの申出の保証

 買受けの申出をしようとする者は、旧法と同様保証の提供をしなければならない。この買受申出の保証の制度は、誠実な買受けの意思を有しない者の買受申出を排除することが目的です。この保証は、買受人が代金を納付しないときは、提供した保証の返還を請求することはできないとされていることから、売買における解約手付の性質を有すると解すべきです。
 保証の額及び提供方法は、最高裁判所規則で定めることとしているが、この委任を受けて民事執行規則では、買受けの申出の保証の額は、同規則五一条の入札又は競り売りの方法以外の特別売却の方法による場合を除き、最低売却価額の一〇分の二と定めている。旧法では、競買価額の一〇分の一とされていたために、買受申出の額によって保証の額が相違していたので、保証金を用意する買受申出人にとっても、これを処理する執行官にとっても、まことに繁雑で、不便な制度であったわけです。新法はこれを改め、買受申出の額の如何にかかわりなく、同一不動産に対する買受申出人は、同一の保証の額を納付することにしたものです。
 この保証の額は、買受けの申出の額が、最低売却価額の二倍以上にも達する場合を除き、旧法当時よりも増額されたことになるが、これは、買受けの申出の保証の没取によって代金の支払を担保させようとする趣旨によるものです。
 執行裁判所は、相当と認めるときは、最低売却価額の一〇分の二を超える保証の額を定めることができる。一〇分の二を超える上限については、別段の定めはないが、代金不払の場合に没取されることからすれば、おのずから限界はあろう。旧法時には競買価額の一〇分の五とする取扱い例があった。保証の増額には、特段の要件はなく、執行裁判所が相当と認めれば増額ができる。
 実際問題としては、買受人が代金を支払わないために、更に売却する場合等に増額が考えられる。
 買受け申出の保証の額は、期日入札の公告に明らかにしなければならない。

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 買受けの申出をしようとする者は、執行裁判所が定める方法による保証を提供しなければならない。
 買受けの申出の保証は、執行裁判所に提供するものですが、その提供の方法としては、売却の実施者である執行官に提出する方法により提供するものとされている。執行裁判所に直接提供する方法は認められていない。高価買受申出人又は次順位買受申出人となった者以外の買受申出人には保証を即日返還すべきであるから、執行官に提出しておけば、その場で返還するのが簡便であるからです。即日返還される保証以外のものは、執行官から執行裁判所に提出される。
 保証は、入札書を差出す際に同時に提供しなければならない。入札書の差出し前や、差出し後に提供することは許されない。
 執行官に提出すべき保証は、金銭、銀行等の振り出した自己宛小切手、銀行等の送金小切手、支払保証委託契約の締結を証する文書である。これらの保証のうちいずれか一つの提出で足りるが、これらを併用することも許されるとされている。
 金銭の提出による場合には、旧法下では金額をすべてに亘って確認することは、事務が繁雑となり、多数の人員を要することから、入札人に保証金を封筒に入れ封をして提出させ、封筒の表に番号を記載するとともに入札人にその番号を記した番号札を渡し執行官は中の金額を確認しないまま預かり、期日が終了したときに最高価の買受申出をした者の封筒のみを開封して金額を確認し、他の入礼者には封筒のまま返還する取扱いであった。
 但し、執行裁判所は、金銭を買受申出の保証としてはならない旨を定めることができる。
 買受け申出の保証の額が高額となる物件については、裁判所の整備上好ましくないし、また金銭を受領する執行官の計算上の手数ということもあるので、金銭の提出による方法を禁ずることができる旨の規定が設けられたのです。
 金銭を提出する方法による保証を禁止する裁判は、執行裁判所が相当と認めるときということが要件となっているだけで、裁量に委ねられている。売却物件の数が多いため、一期日の保証の額が大きくなる場合は、相当と認めるときに該当することになろう。
 この裁判がなされたときは、売却期日の公告にその旨を明記することになる。
 民事執行規則四〇条一項二号によると、銀行等が振出した自己宛小切手の要件は次のとおりです。
 銀行又は執行裁判所の定める金融機関が振出したものであること、銀行の中には、銀行法にいう銀行のほか、相互銀行その他法律の規定により銀行法上の銀行と同様に取り扱われるものを含む。執行裁判所の定める金融機関は、銀行と同等の信用を有するもの、例えば信用金庫、農林中央金庫、商工組合中央金庫などであるが、支払の確実性、当該金融機関の利用度等を考慮して指定することになる。
 執行裁判所が銀行以外の金融機関を定める場合は、買受申出人の申出により裁判所ごとに作成された金融機関のリストに基づいて指定する。この場合の決定の様式は次のとおりです。
 支払人が振出人である金融機関自身(自己宛)であること、銀行等が振出した自己宛小切手は、現金に代わる支払手段として一般の取引に広く利用されており、振出人兼支払人が信用力の高い者である場合には支払が確実です。
 持参人払式であること、取立ての便宜のため持参人払式の小切手であることを要する。
 一般線引小切手であること、一般線引小切手は、銀行等においてその取引先(預金者)に対してだけ支払うことができるもので、取引がない者には支払わないので、小切手の紛失や盗難等による損害の防止のために線引としなければならないのです。
 提示期間の満了までに五日以上の期間のあるものであること、小切手の提示期間は、振出日を含めて一一日間となっているが、裁判所が換価するのに要する手続上の時間を考慮し、提示期間の満了までに五日以上を残す小切手であることを要する。
 銀行等の自己宛小切手は、最高価又は次順位買受申出人が提出したものは、執行官から執行裁判所に提出されて、執行裁判所の預金口座のある銀行を通じて交換に付されるが、その際執行裁判所の預金口座のある銀行の加盟する手形交換所に加盟していない金融機関が振出した自己宛小切手は、振出人の加盟する手形交換所において交換決済をするため、その手形交換所に加盟している自行の支店又はその他の金融機関に交換委託をすることになるので、そのために所定の手数料を要することになるが、執行官は手数料を要する小切手か否かの判断を一々しなければならないとすると、執行手続上極めて煩項なことであるとして、この場合は、手数料の要否にかかわりなく、自己宛小切手にっいては、交換に要する手数料を控除した額が執行裁判所の預金口座に振込入金がされたものとし、保証を返還しなければならない場合には、手数料を控除した残額のみを返還することになる。買受人には、代金納付の際に、残代金プラス手数料分を納付させる。買受人が代金納付をしない場合には、保証は没取されるが、没取されるものは、小切手の額面額から手数料を差引いた額のみです。したがって、保証として提供されたのは、手数料分を控除した額のみであったとの考え方です。問題のあるところですが、実務の処理としてはやむを得ないでしょう。
 小切手(自己宛小切手、送金小切手とも)の額面金額は、買受けの申出の保証の額に相当する額であるのを原則とするが、これを上廻る額面のものが提出されたときは、その超える部分は買受申出人が提供義務のないものを提供したに過ぎないと解し、有効な保証の提供として処理すべきである。このような小切手を提供した買受申出にんが、最高価又は次順位買受申出人にならなかったときは、そのまま返還することになるが、最高価又は次順位買受申出人になったときには、その者は買受申出の保証の額を上廻る部分は返還を請求することができず、提供された全額が代金に充当され、買受人はその残金を支払えば足りることになる。次順位買受申出人が買受人にならないことが確定すれば、全額が返還される。買受人が残代金を支払わないときは、法三九条所定の保証の額に相当する部分は、返還を請求することができず売却代金に組入れられ、これを超える部分は買受人に返還される。
 送金小切手とは、振出人である金融機関が小切手に表示された金額を、支払人である金融機関に送金するとともに小切手を振り出すものであるから、送金が確実にされる限り、支払いは確実である。
 送金小切手の要件は、支払人が執行裁判所の預金口座のある銀行であるほかは、自己宛小切手と同様である。また、提示期間、所定の保証の額を超える額面のものが提出された場合にっいても自己宛小切手について述べたところと同じことがいえます。
 預金口座は、各裁判所において利用上最も適当な銀行を選んで設けることになる。執行裁判所の預金口座とは、官署としての裁判所歳入歳出外現金出納官吏の預金口座のことで、民事執行法施行と共に設けられたのです。
 送金小切手の換価は、執行裁判所の預金口座のある銀行自身が支払人であるので、小切手を提示しさえすれば、直ちに換金され、手数料も不要であるから、自己宛小切手よりは便利であるが、買受申出人にとっては、送金小切手振出しに手数料を要するので自己宛小切手よりは不便ということになる。
 入札人と、銀行又は保険会社との間において、執行裁判所の催告があった場合は、一定の額の金銭を納付する旨の期限の定めのない支払保証委託契約が締結されたことを証する文書を、入札人が入札書とともに執行官に提出する方法であって、旧法にはなかった新しい買受け申出の保証の提供方法です。
 この方法による場合には、保証提供者は、銀行等に手数料を支払うほかは、現実に金銭を提供することを要しない。執行裁判所は、保証の額を必要とするときに確実、且つ容易に支払いを受けられるならば、不都合はないし、金銭や有価証券を預かるより安全な方法です。
 保証委託者(買受けの申出をしょうとする者)が、銀行等と支払保証委託契約を締結する場合の文書(支払保証委託契約書)と、契約が締結されたことを証明するために、裁判所へ提出する銀行等の証明文書については、昭五五・一二・二三民三第一四九五、昭五六・一・一四民三第五六最高裁民事局長通知を参照されたい。
 この買い受け申出保証の支払保証委託契約は、法六三条二項、規則三二条のそれと性質を同じくする。
 保証はこの支払保証委託契約と金銭又は小切予を併用して提供することは差し支えない。
 この保証は、買受申出人が最高価買受申出人又は次順買受申出人になった場合でも、直ちに金銭に換えることはなく、証明文書は保管される。買受人になった者のこの保証は、代金に充当されるものではなく、買受人は執行裁判所の定めた代金納付期限までに売却代金全額を納付しなければならない。代金全額が納付されれば、執行裁判所は、証明文書を返還する方法で保証を返還する。もし買受人が代金を納付しなかったときは、保証は没取となり、売却代金に組入れられることになるので、買受人の提供した支払保証委託契約の証明文書を提出する方法で提供された保証は換価されることになる。換価の方法は、規則五八条の規定によって行われる。
 最高価又は次順買受申出人にならなかった者は、返還を受けたこの契約による証明文書を、別事件の保証に流用することが考えられる。この場合は、返還を受けた証明文書の保証の額が、別事件の保証の額を超えることかあっても、それは当然有効で、換価の際に提供義務のある額だけを納付すれば足りると解されている。
 支払保証委託契約締結の証明書を提出した者が最高価又は次順位買受申出人となったときは、文書は執行官から執行裁判所に提出され、民事保管物に準ずる物として記録とともに保管される。最高価又は次順位買受中出入とならなかった者には、前述のように売却場において執行官から文書を返還される。
 買受けの申出の保証は、変換は認められない。この保証は、最高価又は次順位買受申出人にならなかった者には、売却実施後直ちに返還されるし、最高価買受申出人等についても、売却決定期日には保証が返還されるか、代金に充当されるか等が明らかになるので、それまで僅か一週間位の期間しかないから保証の変換を考慮する必要はない。

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