差押不動産の入札の実施

 入札は、執行官が、執行裁判所の指定した入札期日に、指定した場所で実施します。入札期日の手続は、執行官の入札期日の開始の宣言により開始されます。
 執行官から当該期日において売却に付される物件が呼上げられる。物件の呼上げは、事件番号を明らかにしてすべきです。
 執行官は、入札について次の注意事項を告知する。入札場において、他の者の買受けの申出を妨げた者、不当に価額を引下げる目的をもって連合した者、暴言、暴行その他不穏当な行為をした者に対しては、直ちに退場を命じ、執行官の指示に従わない者に対しても退場を命ずることがあることを告げて注意を促す。
 入札についての詳細な注意事項は、売却場に掲示したり、入札書用紙に印刷してあるが、入札人に対する告知事項としては、入札書は所定の用紙に所要事項を、所定の場所(記入台)で記入すること、入札書に記載した事項を訂正するときは、新しい用紙に書替えること、一度差出した入札書の撤回や変更、引換えはできないこと、入札人が法人である場合には、代表者の資格証明書を、入札人の代理人は、代理権を証する文書を提出すること、共同して入札をしようとする者は、あらかじめ執行官の許可が必要であること、入札書を差出す際に、所定の保証を提供すること。保証は期日が終了するまで返還しないこと、買受け制限がされている物件については入札書と共に証明書を入札箱に入れること、入札は催告後○○分を経過すると締切り、締切り後直ちに開札すること、入札をした者は開札に立ち会うべきこと、開札終了後、最高価買受申出人を定める。次順位買受けの申出をすることができる者がいるときは、その者の氏名を告げるので、直ちに申出をするか否かを決め、期日終了の宣言がされるまでに申出ること、最高価買受申出人及び次順位買受申出人は、期日入札調書に署名押印すること、最高価買受申出人及び次順位買受申出人以外の入札人には、期日の終了後保証を返還すること。その際に返還を申し出なかった者は、後目執行裁判所に返還を申し出るべきことなどを告知する。
 以上の告知は、入札の催告後に行ってもよい。

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 執行官は、入札のために参集した者に対し、以上の注意事項を告知した後、当該期日において売却に付される物件を呼上げて、物件の呼上げは、事件番号、当事者、最低売却価額、保証の額を明らかにし、一括売却の定め、買受け申出者の制限がされている物件については、その旨を告知、入札の催告をする。
 事件が多い庁では、同一時刻に複数の事件の期日を指定し、入札の催告はまとめて行うのが一般的な取扱いである。入札の催告の際には、同時に入札締切り時刻も告げられる。
 期日入札において入札をしようとする者は、必ず入札期日に本人又は代理人が入札場所に出頭して、入札書を執行官に差し出す方法によって行わなければならない。したがって、期日入札においては、入札書を郵送したり、事前に執行官室に届ける方法によることはできない。入札書は、入札場所備え付けの所定の入札箱に投入する方法によることとなる。投入は執行官立会の上入札人が行う方法と、執行官が受取って投入する方法とがある。投入の前に、執行官は入札書の必要的記載事項が記載されているかを確認し、不備であれば補足を促すのが親切な取扱いです。しかし、その場合の審査は入札の内容に亘ることなく、全く形式的なものにとどめるべきである。
 入札書に記載すべき事項は、民事執行規則三八条二項に規定されているが、その様式については、規定がないので、適宜の方法で規則三八条二項の事項が記載されてあれば足りる。しかし、実務上は手続の適正、迅速を図るため、同一の様式であることが望ましいという趣旨で、最高裁判所は次の様式による入札書を定め、入札の際に執行官が入札をしようとする者に定型の用紙を交付することになっている。
 なお、入札をしようとする者は、入札書を差し出す際に、買受け申出の保証を執行官に提出する方法により提供しなければならない。
 入札人とは買受けを中し出る本人のことで、その氏名又は名称及び住所、法人については主たる事務所、本店の所在地を記載する。
 代理人によって入札をするときは、代理人の氏名、住所を記載する。代理人には法定代理人を含む。
 事件の表示は、期日入札の公告に記載されているところの事件番号を記載する。不動産を特定する事項は、当該事件について売却される不動産が一つしかないときは、事件番号だけで不動産が特定されるから、記載する必要はない。不動産が複数ある場合には、裁判所において、期日入札の公告に、あらかじめ各不動産に番号又は符号を付して特定できるように、売却場に掲示してあるので、その番号又は符号を様式の物件番号欄に記載するようにする。
 一括売却の場合は、一括された全不動産を表示すべきであるが、この場合には一括された全不動産につき一個の番号又は符号を付するようにしてあるから、入札者はその一括された番号又は符号を記載すればよい。
 入札価額は入札書の最も重要な事項です。したがってその記載は数字などまぎらわしくないよう明瞭に表示し、額の位取りに誤りのないよう注意すべきです。書き損じた場合又は入札前に額を変更する場合には、一たん記載した金額を書き替えることはせず、新たな用紙の交付を求め、書き直して提出すべきです。ちなみに、入札者が入札価額を書き損じたのに、書き替えに応じなかったときはその入札を無効として取り扱うことはできないので、この場合執行官は、入札者にその名下の印と同一の印をもって訂正個所に押印させて受理すべきです。
 入札書には、この事項のほか、運用上その他の事項をも記載させることは差支えない。様式に示されているように、入札人の氏名下に押印させるとか、買受け申出の保証の額、提供方法を記載させるがごときです。買受け申出の保証は、最高価買受申出人及び次順位買受申出人以外の入札人には、入札期日の終了後直ちに申出があったときは、執行官は、速やかに返還しなければならないが、その場合には、受取書を徴して期日入札調書に添付することになるので、保証の額及び提供方法を入札書に記載させておくのです。受取書は、様式に示すとおり入札書の末尾を利用し、保証の額の返還を受けた買受申出人に署名押印させて提出させます。
 これらの付加事項は、仮りに記載がされなくても入札書の効力には影響はない。
 なお、入札は無条件であるべきで、条件を付した入札の申出は無効です。
 入札人が法人である場合には、代表者の資格証明書を執行官に提出しなければならない。差押債権者である法人が、買受けの申出をする場合にも、代表者の資格証明書を提出すべきで、執行申立ての際に提出したそれを引用することはできない。
 代理人によって入札するときは、代理権を証する文書を執行官に提出しなければならない。この場合の代理人の資格には制限はない。ただし同一物件について、同一人が入札人であると同時に他の入札人の代理人となったり、同一人が複数の入札人の代理人となることは許されない。蓋し換価の適正化を図ろうとする民事執行法の趣旨と相容れないことだからです。
 民事執行規則三三条により、買受けの申出をすることができる者が制限されたときは、所定の資格を有することを証する文書を入札書と共に提出すべきです。
 数人で共同して入札をしようとする場合は、さきに述べたようにその者等はあらかじめ、共同入札をしようとする者の関係及び持分を明らかにして執行官の許可を受け、入札の際に入札書にその許可書を添付しなければならない。
 共同入札については売却価額の高額化を避けるために、競売業者が相談の上入札価額を決め、共同入札の形式を利用して落札し、後にそのうち一人の業者が他の者に対価を支払って単独所有とするというようなことが行われると、これはいわゆる談合の一形態で入札の適正を妨げる行為であるが、これらの行為はその外形だけからでは、正当な共同入札をする者と区別することは困難である。そのために、ここに述べたように共同入札をする者はあらかじめ、執行官の許可を得なければならないとされたのです。この許可を受けるには、執行官に共同入札許可申立書を提出してする。許可を受ける時期は、入札期日の開始前でも開始後でもよいが、入札をする前でなければならない。許可は物件ごとに受けるようにする。
 許可するか否かは、執行官の裁量に委ねられているが、その許可の基準は執行官の健全な裁量にまつほかない。共同入札人が夫婦とか、親子、兄弟というような親族関係にある者、売却の目的物が共同で使用している私道の場合の各利用者、一抹数戸建の各戸の賃借人、一筆の土地上に数棟建っている場合の借他人等である場合には許可が与えられる。
 許可をする場合には、執行官は許可の申立書の欄外に許可する旨を記載する。
 共同入札人については、一括して売却の許否がなされるのであって、そのうちの一人について売却不許可事由があれば、全員について不許可とされる。共同入札の場合、代金の支払にっいては共同入札人の連帯義務に属すと解されている。競売手続は利害関係人一同の利益のためになされるものであるから、手続は簡明にし、繁雑にわたることを避けるべきで、そのためには代金の支払については確実を期する必要から、共同人社人全員が代金支払義務を負担するのを相当とするとの考えからです。
 入札者は、その提出した入札書を変更し、又は取り消すことができないとされている。これを認めると、手続が混乱し、入札者間の紛争を生ずるおそれがあるからです。
 ここにいう変更とは、入札書の記載の訂正、追加のほか、入札書の引換えを含むと解されている。
 入札書の内容について単なる書き落しや、誤記についても変更が許されないのであって、書き落しや、誤記のために入札書の記載が不完全、又は判読ができないとか、物件の特定ができない場合には、無効な入札となる。執行官は、入札書に記載された事項だけに従って最高価及び次順位の買受申出人を定めるべきで、徒らにその記載内容について類推解釈すべきでない。入札人は、既に行った入札をそのままにして、同一人が同一物件について更に別の入札を行うことも許されない。もし同一人が重複して入札をした場合には、二つの異なる買受けの申出をしたことになり、第二の入札を有効なものとする趣旨なら、引換えは許されないのであるから本項に違反することになり、そうでないとすると二つの矛盾する意思表示をしたことになるから、第一、第二の入札共に無効として処理すべきであるとされている。変更、取消しが許されないのは、入札書を執行官に差し出した後であり、遅くとも入札箱に投入された後のことで、その前であれば、入札書の記載を訂正したり、入札をやめることが許されることはもちろんです。
 入札人は、以上のことについては売却場における注意事項の掲示や、入札書用紙に印刷してある注意事項を読んで、入札書の記入は慎重にすべきです。執行官はこのことを入札希望者に十分理解させるよう事前に口頭で注意事項として告知すべきです。
 期日入札における入札は、さきに述べたように入札書を執行官に差出す方法により行う。入札をしようとする者は、必ず本人又は代理人が入札期日に出頭して、入札書を執行官に差し出さなければならない。入札書を郵送したり、事前に執行宮室に届けることは許されない。入札書は、買受け申出の保証を提出させてから、所定の入札箱に投函させる。保証金等は、提出袋に封をして提出することになるが、執行官は、封をしたまま保管用ロツカーに保管する。執行官は入札人が入札書を投かんする前に入札書及び保証金等の提出袋について形式的な記載事項及び押印等の有無を調査する。入札価額の訂正してあるものは、新たに用紙を交付して書き直させる。
 入札の締切りは、入札の催告が終った時刻から二〇分以上経過した後でなければならないが、各庁の実情に応じて適宜定めることになる。競り売りと違い入札書を作成してこれを差し出すには、二〇分あれば最少限の必要が満たされると考えられたものである。規則四一条一項の時間を置かないことは法七一条一号の売却不許可事由となる。実務では執行官は、あらかじめ参集者に二〇分以上後の適当な時刻を決めて告知しておき、定刻が経過したときに機械的に締め切る取扱いが適当であろう。締め切る際にはその旨を宣言する。
 入札を締め切ると、直ちに開札をすることになるが、開札については、その公正を担保するため入札をした者を立ち会わせなければならない。入札をした者というのは、入札行為をした者のことで、代表者又は代理人によって入札がされたときは、その代表者又は代理人をいうのです。したがって執行官は、売却場にいる入礼者全員を立会わせるべきである。しかし入札をした者全員が売却場から退場してしまっているか、又は入札をした者が一人も立会わないときは、執行官は、「適当と認められる者」を立会わせなければならない。入札をした者とは、特定の物件について入札をした者をいうのであるから、複数の物件を同時に入札に付した場合に特定物件について入札をした者の全員が退場していたときは、その物件については「適当と認められる者」を立会わせる必要がある。この場合誰を立会人とするかは、執行官の裁量に委ねられているが、に特定の物件について入札をした者の全員が退場していたが、他の物件について入札をした者が立会っているときは、その者を「適当と認められる者」として立会わせて開札をすることができよう。もし当該期日に入札した者全員が退場したような場合には、売却場に臨場している監督官、監督補佐官、裁判所書記官等に立会いを求めるのが適当であるとされている。「適当と認められる者」を立会わせたときは、執行官は、期日入札調書にその者を表示しなければならない。
 開札は公正に行われなければならないことはもちろんで、立会人にそのことを確認できるようにしなければならない。

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