差押不動産の入札

 民事執行法は、入札期日及び売却決定期日が定められたときは、裁判所書記官は、利害関係人にそれらの期日を開く日時及び場所を通知しなければならないとしています。
 入札期日を通知する趣旨は、配当を受けることのできる債権者には、これらの者は目的不動産がより高額で売却されることを願っているであろうから、自ら買受ける機会を与え、またこれらの者を通じて広く買受希望者を募ることができるという理由であり、不動産の用益権者も、売却後の不動産を利用するため、自ら又は自己に有利な者が買受けることを希望するであろうから、その機会を与えるのが適当であるからです。
 売却決定期日を通知する趣旨は、売却の許可又は不許可に関し利害関係を有する者に、売却決定期日において意見を陳述する機会を与え、また、売却許可決定に対し抗告権を行使するか否かを考慮し、そのために売却許否決定害の閲覧等をする機会を与える必要があるからです。
 入札期日等を通知すべき者は、次のとおりです。
 差押債権者、債務者及び所有者、配当要求をしている債権者、これに該当する者は、債務名義を有する配当要求債権者と、配当要求をした差押えの登記後の仮差押債権者及び一般先取特権者です。当該不動産について差押えの登記前に登記がされた権利を有する者、登記を有する用益権者、担保権者、仮登記権利者、仮差押債権者、買戻権者等がこれに該当する。
 不動産の共有持分が競売の目的物である場合の他の共有者、地上権、永小作権が強制競売の目的物である場合の所有権者等はここにいう権利者にあたらないから、通知する必要はない。もっとも、共有者等は買受けの希望を有することが予想されるので、民事執行規則三七条五号、一七三条により通知がされることになります。
 差押えの登記前にされた処分禁止の仮処分債権者に対しては入札期日等を通知することはあり得ない。処分禁止の仮処分がされている場合は、実務では差押えはするが、以後の手続は停止する取扱いであるからです。なお差押えの登記前でも売却によって消滅する抵当権に劣後する処分禁止の仮処分債権者には通知する必要はない。
 知れている抵当証券の所持人及び裏書人、抵当証券の所待人は、配当等を受けるべき債権者であり、裏書人は所持人から不足分につき償還請求を受ける者であるから、入札期日等を通知すべきです。
 執行裁判所が相当と認める者、差押えの登記前に登記のされていない用益権者、建物又は立木が競売の目的物である場合の敷地所有者、土地を売却するときの地上建物所有者、未登記又は差押後に登記をした第三取得者、不動産の共有持分が目的物の場合の他の共有者、地上権、永小作権が目的物の場合の地主等のように、不動産の売却について自ら買受けの申出をし、又は他人に買受けの申出をするよう勧めることが予想される者に対しては入札期日の通知を、また、これらの者は不動産の売却について利害関係を有すると思われる者であるから売却決定期日の通知をすることが考えられる。これらの者に通知するか否かは、執行裁判所の裁量に委ねられています。

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 入札期日等の通知は、なるべく早くするのが妥当です。
 通知は、適宜の方法によることができる。通常は、通知書を普通郵便に付する方法により行われる。
 銀行に対して通知する場合には、通知書に取扱支店名をも記載する。
 入札期日等の通知は、これを受けるべき者の所在が明らかでないとき、又はその者が外国にあるときは、することを要しない。この場合においては、裁判所書記官は、その事由を記録上明らかにしなければならない。
 入札期日等の通知が何らかの理由により返送され、入札期日までに通知をすることができなかった場合、通知が到達できなかった理由が、通知を受けるべ屠者の転店先が不明であるとか、外国にあるときは通知を要しないことはここに述べたとおりです。通知を受けるべき者が差押債権者、債務者、所有者、配当要求をしている債権者であるときは、これらの者は住所の届出義務があるのであるから、裁判所が記録に表われた住所にあてて通知書を発した以上、その後の住所の変更についてはその届出義務を怠った者が不利益を負うべきで、したがって、入札期日等の通知が入札期日までに到達しなかったとしても入札期日を取消す必要はなく、この場合の通知の不到達は売却許可決定の抗告理由にはならないものと解される。
 入札期日等の通知をすべき者に対し、通知をしないまま売却手続が進められたときは、売却不許可決定の理由となり、又は執行抗告により売却不許可決定がされることがある。売却許可決定が確定したときは、入札期日等の通知がなかったことを理由に売却許可決定の効力を争うことはできない。
 旧法では、執行裁判所が、民事訴訟法旧六六二条ノニ、旧競売法三〇条の規定により、一定の資格を有する者に限り競買の申出を許す旨のいわゆる特別売却条件を定めることができるとされていました。民事執行法においては、旧法上特別売却条件とされていたものを、執行裁判所が裁量により売却の方法として定めることとしたのです。そこで民事執行規則三三条において、法令の規定により不動産の取得が制限されているときは、執行裁判所が、売却の方法の一つとして、買受けの申出をすることができる者をあらかじめ制限することができると規定されたのです。
 買受申出人の資格には、行為能力、不動産取得能力を必要とするほか、法令の取得制限がされている不動産を除いては特に制限がないので、差押債権者も買受人となることができる。法人である差押債権者が当該事件について入札する際には、改めて資格証明書を提出すべきです。
 配当又は弁済を受けるべき債権者が、最高価買受申出人となった場合には、売却代金は、配当又は弁済を受ける額を差引いて配当期日又は弁済金の交付の日に納付することができるが、この場合には売却決定期日の終了までに執行裁判所にその旨を申出なければならないので注意を要する。
 旧法においては、強制競売において債務者が買受人となれるかどうかについて明文の規定はなく、一般的には消極に解されていた。
 債務者が買受人になると、満足を受けなかった債権者は、更に強制競売の申立てができることになり、無益なことをくり返す結果になるので、債務者が買受け代金を所持しているなら、それをもって任意弁済すべきであるとの考え方によるものです。民事執行法は、この通説に立ち、債務者は買受けの申出をすることができないとされている。債務者と担保権設定者とが同一人でない場合も、債務者には同様買受けの申出は認められない。債務者が実質的に金を出して第三者に買受けの申出をさせた場合には、売却不許可事由になる。したがって、この事実が判明したときは、執行官としては買い受け申出を拒否することはできないから、債務者が出損していると認める根拠となる事実を期日調査に記載して、執行裁判所の判断に委ねることになる。
 債務者以外の第三者が自己所有の不動産を担保権の目的としていた場合は、担保提供者である所有者については、担保物の価額に相当する金銭を提供することにより不動産上の負担を洗い流すという利益を認めてもよいと考えられるから買受けの申出ができると解すべきです。
 債務者でない所有者が買受けることができることは、民法三九〇条からも類推されるところである。
 債務者の保証人は、連帯保証人であると否とに拘らず、買受けの申出ができるとする見解と、債務者と同様の理由でこれを認めないとする見解があります。第三取得者も買受人となることができる。
 未成年者、禁治産者が買受けの申出をしようとする場合は、法定代理人によってのみすることができる。法人もまた買受人になり得る。この場合は、法人であることを証するため登記簿謄本又は抄本を提出することを要する。
 農地又は採草放校地が売却の対象となる場合には、執行裁判所は、民事執行規則三三条、同一七三条の規定により、買受けの申出をすることができる者を、当該許可又は届出の受理の権限を有する行政庁の交付した買受適格証明書を有する者に制限できる。
 抵当権設定後差押え前に、賃借権が設定された農地の売却においては、当該賃借人は農地法三条二項一号にいう小作農に該当するので、当該賃借人のみが買受適格を有する。その者が買受けの申出をせず、かつ、他の者の買受けにつき同意しないときは、差押債権者が農地法三三条一項により農林水産大臣に対し、国が買い取るべき旨を申出ることができる。
 外国人については、買受人となり得る場合と、そうでない場合がある。すなわち土地所有権の取得については、その国において日本国民又は日本法人に対し同じ権利を認めている場合にのみ、日本においてその外国人に同じ権利を認めているのです。そして外国人が我が国において土地、建物等に関する権利を取得しようとするときは、外国人の財産取得に関する政令三条により主務大臣の認可を受けなければならないこととなっており、同令四条で認可のない取得は効力を生じないとされている。しかし同合二三条の二に基づく同令の規定を適用しない外国人を指定する告示一号によれば、現在一四四か国の外国人がその適用を除外されているので、実質的には同合の制限を考慮する必要はないといってよい。
 数人が共同して入札をしようとするときは、その者はあらかじめ、入札をするまでに書面により共同入札をしようとする者の関係及び持分を明らかにして執行官の許可を受け、その許可書を入札書に添付しなければならない。このように共同入札を執行官の許可にかからしめたのは、共同入札を無制限に認めると、公正な競争を害するおそれがあるからである。親族関係にある者が共同して買受けるような場合は、許可が与えられるでしょう。
 複数の不動産について、執行裁判所により一括売却の定めがされたときは、執行官は一括して買受けの申出をさせなければならず、個々の不動産についての買受けの申出を許してはならない。
 売却場の秩序を乱した者、その競売手続において代金を納付しなかった者は買受けの申出をする資格はない。
 執行裁判所が、民事執行規則三三条により買受けの申出をすることができる者の資格制限の裁判がされると、裁判所書記官は、売却の公告中にこれを明示しなければならない。執行官は、制限がされた場合、例えば、農地の売却の場合のごときは、競買適格証明書を提示した者に対してだけ買受けの中出を許し、資格を有する者以外の者に買受けの申出をさせてはならない。
 執行裁判所は、売却の日時、場所を定めたときは、執行官に対し売却の実施を命ずる。執行官には、入札期日を公告した時点で同一の期日ごとにまとめて、事件番号、物件番号、売却方法及び債務者の氏名又は名称並びに法六一条又は規則三三条、三九条二項もしくは四〇条二項の決定がされているときは、その旨を記載した書面で伝達する。

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